先日、変化する外部環境へ対応できる組織を作るために、まずは「企業のビジョンを自社に浸透させる」ことに取り組んだ経営者のお話を聞く機会がありました。
今回はその話を元に、ビジョンを組織に浸透させる取り組みについてまとめていきます。
企業にとってビジョンとは
そもそも企業にとってビジョンとはどんな役割を果たすものでしょう。
「ミッション・ビジョン・バリュー」は著名な経営学者ドラッガーが提唱したものです。
企業が社会的正当性を示すために、この3つが必要であり、ミッション・ビジョン・バリューは企業の存在意義や社会的なポジション、方向づけのもととなるというものです。
ミッションとは、使命や目的という意味であり、ビジョンとはそのミッションが実現した姿、つまり「企業としてのありたい姿」ということです。
そしてバリューとは価値、価値基準であり、組織に属するメンバーにとっては、行動基準になります。
ビジョンを社内に浸透させることの難しさ
経営者であればこの「企業としてのありたい姿」は、常に思い描いているのではないでしょうか。
いうなれば「企業という船がどこを目指して旅をしているのか」、行き先を指し示すイメージです。
なので、ビジョンを持たない経営者の方はほとんどいらっしゃらないと思います。
しかしこの経営者の持つビジョンが、「社内へ浸透できているか」となると、また違った難しさがあるようです。
弊社も常々ビジョンを社員へ伝えることの重要性をブログやメルマガでお伝えしています。
また実際のコンサルティングにおいて、企業ホームページで社外へ発信するためのアドバイス等も行っています。
なぜなら、企業のビジョンに共鳴したお客様こそが、その企業が積極的にお付き合いするべき顧客であり、さらに長期的に良好な関係を構築できると考えるからです。
しかし企業の現場、特に店舗ビジネスにおける現場では、経営者が思い描いているビジョンを浸透させることは、残念ながらそう簡単ではないのです。
経営者がビジョンを再定義する
とはいえ、難しいからと諦めるか、もしくはあの手この手で継続的に働きかけ、徐々に浸透させていくか、選択肢は二つに一つしかありません。
今回お話を聞いた経営者の方は、当然ながら「継続的に働きかける」ことを選んだ方でした。
まずビジョンを策定したきっかけですが、中堅社員を見て「毎年同じことを繰り返して新しいことに挑戦していないのでは?」、若手社員を見て「一体いつになったら一人前になるのだろう」と思ったことからだそうです。
つまり社内に「時代の変化に対応できない社員が増えた」と感じ、危機感を持ったのです。
そしてその原因は、やりがいが低下している、さらに原因を深堀すると「何のために自分たちは働くのか」その意義や目的が明確ではないのではないか…。
そこで経営者自身が「ビジョンの再定義」をまず行い、その新しいビジョンを社員に伝えたそうです。
ビジョンを浸透させた方法とは
それからは機会があるたびにビジョンを伝え続けたそうです。
まさに経営者による「前向きなしつこさ」力の発揮です。
さらに経営者の示すビジョンを、社員に「それは自分の仕事ではどういうことなのか」という具体的な行動へ落とし込ませました。
その結果、少しずつ社内にビジョンが浸透していったそうです。
そして「企業ビジョンを浸透させるのは、小さなことの積み重ねである。それは日々、経営者がどんな言葉を使って、どんな立ち居振る舞いをするか、それが企業ビジョンの浸透につながる」とのことでした。
抽象的な概念を聞き、具体的な行動へ翻訳する力をつける
私も新入社員研修を実施する際に、「経営理念や経営方針の職場での行動への落とし込み」を研修のまとめとして考えさせ、それぞれ「行動宣言」を書かせることがあります。
そして書いたことを周囲とシェアし、とるべき行動のアイディアをお互い情報交換することで、経営理念や経営方針に対する理解を深め、より具体的な自身の行動を考えさせるのです。
この研修の目的は、研修講師としてのこれまでの経験上、抽象的な概念を具体的行動へ翻訳する力は、個人差がとても大きいことがわかったからです。
そこで、より具体的に考える機会を社会人の最初に与えることで、「ビジョンに沿った行動の第一歩目」を配属先の職場で踏み出せるようにするのです。
踏み出して経験を積めば、「自身の行動がビジョンに合っているのか」「ビジョンを実現するために、何をすればよいか」といった、抽象⇔具体の思考の行き来がスムーズになります。
そしてそれは店舗ビジネスにおいては、お客様との最前線である店舗の現場で、一人一人の社員がビジョンに合致した行動をとっさに取れることにつながっていくことでしょう。
もしビジョンの浸透が思うようにいかないとお悩みの経営者の方は、「会社の掲げるビジョンとは、自分のどんな行動なのか」といった「ビジョンと行動のつながりを考える」時間をとり、さらに社員同士で情報交換するといったワークショップを実施してみてはいかがでしょうか。
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