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フランチャイズ本部が知っておくべきFC成功モデルの変化

昨年より、フランチャイズビジネスの雄であるコンビニ事業において、「24時間営業」「人手不足」「無断発注」「加盟店収益低下」等の問題が、ニュースなどで取り上げられています。

これらの問題は、今にはじまったことではありません。
従来はフランチャイズ本部の力が強く、世間で目立たなかった問題が、外部環境の変化により顕在化し始めたとみることができます。

今回のコンビニトラブル騒動は、
スマホに代表されるデバイスの進化と、
インフルエンサーとも言える情報発信力や行動力のある加盟店によりもたらされた、
フランチャイズビジネスにおける“加盟店による民主化運動”ともいえるでしょう。

これからのフランチャイズ本部は、この環境変化の違いを踏まえた展開方法を模索していく必要があります。
そこで、今回はフランチャイズ本部を取り巻く環境変化の内容と、それを踏まえたフランチャイズ本部のあり方について考えてみたいと思います。

なお、フランチャイズ本部構築の進め方や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

フランチャイズ本部の立ち上げ方。7つの手順と成功の3つのポイント



 

(1)環境変化とともに顕在化した問題

「24時間営業」「人手不足」「加盟店収益の低下」「無断発注」など、今になってコンビニフランチャイズの抱える問題が噴出していますが、これらは全て、加盟店も本部も昔から認識していた問題です。

これらの問題に対して、これまでフランチャイズ本部は本質的な要因には目を向けず、店舗数を増やし、マーケットシェアを拡大することで解決しようと取り組んできました。
その背景には、豊富な資金や情報量を持つフランチャイズ本部が、その格差から加盟店の声を抑えることができたことがあります。

今までのフランチャイズ本部にとっては、考案したビジネスモデルフランチャイズC契約の内容を死守すること、例えば、24時間営業のビジネスモデルを堅持すること、が最も重要とされることだったのです。

なぜならば、これらの問題を抜本的に解決するためには、コンビニのビジネスモデルを根本から変える必要があり、そこには莫大なコストと労力が必要となるからです。
そのコストや労力をはらって問題の根本原因を解決するよりも、店舗数拡大・売上拡大を優先し、問題が顕在化するのを防いできたのです。

たしかに、フランチャイズチェーンが大きくなればなるほど、舵を切り直すのは難しくなることでしょう。
しかし、労働人口の減少や食品ロスの社会問題、毎年上がる最低賃金アップ等から加盟店の収益性悪化が進み、加盟店の不満は対処療法では解決できないレベルにまで膨らんでいたのです。

 

(2)問題を顕在化させた4つの要素

問題が浮き彫りになってきた要因としては、以下の4点が考えられます。
①加盟店の収益性の低下
②情報格差の縮小
③情報拡散速度アップ
④多様性の広がり
です。

それぞれ、具体的に見ていきたいと思います。

①加盟店収益の低下

先にも触れた最低時給アップや、自社・他社店舗・他業態との競争激化、ネットビジネスの台頭によりコンビニの収益性は悪化の一途です。

売上が下がり続ける一方、経費が上昇するのですから、ビジネスモデルとしても厳しい戦いを強いられています。

成功するビジネスモデルを提供する見返りとして加盟金やロイヤリティといった対価を得るのがフランチャイズシステムの根幹ですから、このビジネスモデルの優位性の喪失は、フランチャイズ本部にとって致命的な事態です。

②情報格差の縮小

パソコンやスマホ等の情報端末の進化と普及、インターネット環境の整備等により、誰でも最新の情報を迅速かつ容易に入手することが可能となりました。
結果、加盟店と本部の間にあった情報格差も無くなってきています。

加盟店も常に多くを学ぶことができるようになってきました。
たとえば、S Vの加盟店指導内容が陳腐化し、目新しさがなく、本部から新しい情報がもたらされないと感じる加盟店が増えていることも背景の一つです。

③情報拡散速度アップ

情報拡散スピードが加速度的にアップしていることも見逃せません。

ある地域や業界における1つの問題が、インターネットを通じて社会問題化し、一気に多数の意見が投稿され、議論が高まります。
昨年発生した24時間営業の是非についても、元をたどれば1人の加盟店オーナーの情報発信から始まっているのです。

立場の弱かった加盟店の声が瞬時に世間に広がり、フランチャイズ本部の経営方針などに影響を与える時代となっているのです。

④多様性の広がり

加盟店の生い立ちや、生活環境はそれぞれ異なります。
地域性も異なりますし、加盟者の年齢により、店舗ビジネスを継続できる年数も違ってきます。
経済が成熟化していく中で、人の嗜好も多様化しており、加盟店の多様性も広がっています。

フランチャイズシステムは、全加盟店で契約内容を統一するシステムとして発展してきた歴史がありますが、この時代背景を考えると、軸となる部分は統一するとしても、加盟店によって微妙に異なるフランチャイズ契約書があってもいいはずです。
「個人を尊重する」いわゆる多様性が、フランチャイズビジネスにも求められるようになってきているのでしょう。

しかしながら、今のフランチャイズ業界を見渡してみると、多くの場合、いまだフランチャイズ契約やオペレーション、取り扱い商品・サービスは、全加盟店で画一的なものとなっており、時代の流れに対応しきれていない印象です。

この違和感は、これからフランチャイズ展開を開始する本部にとっては、ビジネスチャンスと捉えることもできます。

実際、チェーンでありつつも加盟店の主体的な取り組みを尊重する“ステルスフランチャイズモデル”(提供商品・サービスの一部をチェーン内で統一しつつも、ブランドは統一せず、加盟店の自主的な活動を認めるモデル)と呼ばれる形態で店舗拡大を加速し、上場まで果たしたチェーンもあらわれてきています。

 

(3)フランチャイズ本部には大きなビジネスチャンスが出現している

店舗ビジネスにおいて健在化してきたこれらの問題は、これからも避けては通れません。
本部の論理や資本力だけでは、現在発生している問題を抑えられなくなってきているのです。
ルールが替わろうとしているのです。

今後は、以下のような特徴を備えたフランチャイズシステムが世の中に受け入れられるのではないでしょうか。

①加盟者毎にカスタマイズされたフランチャイズ契約

フランチャイズ契約は加盟者毎に結ばれるものであり、必ずしも他の加盟者と全てが同じである必要はありません。
事業者間の個別の契約ですので、契約する加盟者と本部が互いに合意できればいいのです。

これまでは、加盟者間の平等性の観点から、フランチャイズ本部はフランチャイズ契約書のカスタマイズをかたくなに避けてきた印象がありますが、これだけ加盟店や顧客の多様性が広がっている現代ですから、そろそろ平等性思考の呪縛を取り除くべきではないでしょうか。

②加盟店主体に重きを置いたフランチャイズモデル

本部の考案するジネスモデルは、ブランド価値を維持する上で一定の統一性は必要です。
しかしながら、商材やノウハウの提供を本部の役割とするのであれば、それ以外は加盟店の主体性を尊重したビジネスモデルがあってもよいでしょう。


経済が成長している時代には、チェーンには効率性が求められていました。
その中では、チェーンオペレーションにより全店が統一した取り組みを行うことで効率を高めることが、企業の成長には欠かせないポイントであったことも事実です。

しかしながら、経済が成熟し、顧客の嗜好が多様化する現代では、効率性を追求した結果、かえって非効率な状況が生まれる事態となっています。
例えば、飲食業界でいえば、効率性を重視した総合居酒屋が衰退し、特定ニーズに特化した専門店居酒屋が成長しています。

現代に求められていることは、多様化した顧客ニーズへの対応であり、そのためには、個々の加盟店に一定程度の主体性を発揮してもらうことも有効な選択肢の一つといえるでしょう。

 

(4)まとめ

加盟店の立場に立って、加盟店収益を第一義に考えると、本部の論理では見えない問題や新しいアイデアが生まれてきます。
この立ち位置に立って、必要な改革を行っていくことがこれからのフランチャイズ本部の役割と言えます。

コンビニフランチャイズの問題が噴出してきた現代は、フランチャイズ本部にとっては、ゲームチェンジの幕開けともいえます。

既存の大手チェーンでは、これまで築き上げてきた仕組みやルールを変えることは、そう簡単にはできません。
すなわち、これからフランチャイズ展開を開始する本部にとっては、大きなビジネスチャンスともいえます。

このフランチャイズビジネスの大転換期をチャンスと捉え、時代に合わせたビジネスモデルとフランチャイズシステムを築き上げていくことが大切です。

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