多店舗展開

事例から学ぶ 事業発展を導く経営計画策定のポイント

(1)マクドナルドの復活劇

近年、事業環境が急速に変化しているため、環境変化に対して自社を適応させていけるよう、自ら変化を起こす行動をすることが必要です。これは中小企業や大企業など会社の規模に関係はありません。知名度がある大企業と言えども、環境変化に取り残されれば、衰退の一途をたどります。
前回までのコラムで経営計画の概要と策定の仕方、PDCAサイクルを回すコツをご説明しました。 今回は、業績悪化から事業を復活させたマクドナルドの例を使って、計画策定とPDCAサイクルについて考えてみます。あなた自身が経営者になったつもりで、どう考えて何を実行したらよいか想像してみてください。
マクドナルドは世界中で知られており、知らない人がほとんどいないと言っていいくらいメジャーなファーストフードです。国内で約2,900店舗を展開するなど、1971年のオープン以来事業を国内で成長させてきました。しかし、2014年に品質問題を起こして業績が悪化し、赤字になりました。そこで、社長兼CEO(Chief Executive Officer)だったサラL・カサノバ氏は、お客様との関係を再構築する計画を策定、PDCA管理して、見事事業を復活させました。マクドナルドは大企業ですが、大企業でも社会環境の変化に対して、自ら変化をしないと生き残れなくなっています。中小企業経営の視点で、マクドナルドの取り組みを振り返ってみます。(出典:日経ビジネス 2019.5.13)

(2)マクドナルドの方針と具体的施策

カサノバ氏がまず行ったのは、マクドナルドの創業者が大切にしていた憲法と言われる「QSC」に立ち返ることでした。QはQuality(品質)、SはService(サービス)、CはCleanliness(清潔さ)を表し、自ら全国47都道府県を回り350人から意見を聞きました。そこで、お客様の声をもとにして、以下の経営方針と具体的改善策を策定しました。

経営方針

・お客様との関係を再構築する。

具体的改善策(一部を抜粋)

・全従業員への研修
・店舗改装
・値ごろ感のあるメニュー再開

研修は当時全国で約12万人いた全従業員に行ったそうです。研修を行い「憲法」を再度全従業員に浸透させ、さらに、それまで多くの権限が東京本社に集中していましたが、これを地域の本部や店長に権限委譲しました。例えば、これまでお客様からの意見は本社で一括して電話やメールで受け付けていたものを、アンケートアプリを導入して、要望や意見を直接店長に届けられるようにし、対応のスピードアップを図りました。
また、店舗も積極的に改装しました。くたびれた感じがする雰囲気の店舗を改装し、現在では92%の店舗の改装をしました。その際、「憲法」に立ち返る意味で、マクドナルドのアピールポイントであった「スマイル0円」表示も、店舗によって表示がバラバラだったものを全店のメニューに掲示しました。メニューについては、お得感のあるメニューが乏しかったことから、200円のお手頃バーガーやセットメニューのバリューランチを復活して、来店客を増加させました。

(3)大企業も中小企業も戦略作成プロセスは同じ

経営計画策定は、経営理念策定⇒内部・外部環境分析⇒経営方針⇒具体策という戦略策定プロセスです。カサノバ氏が行った戦略策定プロセスも全く同じであることがわかると思います。
経営計画を策定するには、まず経営理念が現状のままでよいのか直視し、もし経営理念が現在の社外・社内の事業環境に合っていないようであれば、経営者の思いや価値観、企業の存在意義などを言葉で再定義します。次に、経営方針や具体的改善策を正しい方向性で立案するために、外部・内部環境分析を行います。マクドナルドの例では、お客様の声を聞くことで外部環境、従業員の意見を聞くことで内部環境を確認しました。中小企業の場合もお客様にアンケートやヒアリングを実施したり、業界紙や日経MJなど専門誌を定期的に購読するなど外部環境の情報を積極的に入手することが必要です。
マクドナルドは次に、経営方針と具体的改善策を策定しました。全従業員への研修や店舗改装には、多くの時間とコストの負担があったはずです。資本力のある大企業だからできた改善策と言えないこともないですが、中小企業であっても、環境分析の結果、改善のための必要な施策であれば、実行せざるを得ません。その際、研修では、内容や時間、対象者などを工夫することで、日常業務に影響しないようにできますし、店舗改装でも、主要店舗から行ったり、内装や備品などをリニューアルしたり、優先順位をつけることで、できるところか着手します。

(4)中小企業の利点を活かした行動をする

大企業だから、「中小企業とは違う」とお思いの方もいるかもしれませんが、大企業も中小企業も企業経営における考え方やプロセスは全く同じで、異なるのは経営資源だけです。自社の経営資源にあった改善策を優先順位をつけて実施することが大切です。逆に、中小企業は規模が小さいという特徴がありますので、経営者の理念や方針、具体的改善策は、早期に全従業員に浸透しやすいですし、意思決定は素早く行うことができると言うこともできます。回りの利く中小企業であることの利点を活用して、急速に変化する事業環境の中で、競合他社と差別化して、少しでも早い行動をとることで、事業を成長の軌道に乗せることができるでしょう。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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