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求職者が「その会社で働きたい」と感じる情報発信

(1)求人情報発信はマーケティング

厚生労働省が2018年6月29日に公表した5月の有効求人倍率は1.60倍で、前月比0.01ポイント上昇し、高水準のままでした。また、正社員の有効求人倍率は1.10倍と前月比0.01ポイント上昇し、調査開始(2004年11月)以来過去最高だった前月を更新するなど、人手不足問題は落ち着く兆しを見せません。
企業間で人材確保競争が激化している状況では、自社の商品・サービスを顧客に売り込むことと同様に、求人情報発信は、自社の魅力を知ってもらうマーケティングと位置付けて活動することが重要になります。そこで、求人情報の発信について、ご紹介します。

(2)求職者が求めている情報

求職者は仕事を探すにあたり、どのような情報を求めているでしょうか?初めに給与・賞与、勤務時間、休日、勤務地、福利厚生などの勤務条件や仕事内容などの基本条件を確認します。基本条件を満たすと、売り手市場と言われる現在の労働市場では、求職者は「働きやすさ」や「働きがい」のある職場であるかどうかを確認しようとするそうです。
複数の人材サービス会社が求職者に対して行った調査では、確認する点として「展開する事業・サービス概要」、「経営理念・ビジョン」、「社風」などが上位にきているそうです。昨今政府による働き方改革の実現に向けた動きや、マスコミによるブラック企業などの報道もあり、職場環境への関心が一層高まっていることが背景にあると考えられ、仕事内容に加え、会社の将来性・安定性や職場の雰囲気を積極的に確認するようになっているようです。

(3)中小企業の情報発信

経営資源が限られる中小企業は、自社の商品・サービスに関する宣伝・広告を多く投下することはできないため、経営理念や社長のメッセージを積極的に発信することが有効です。ブランドで訴求することができる大手企業に比べて、どうしても知名度で劣る中小企業は、自社についてよく知ってもらう必要があります。中小企業は経営者と現場の距離が近いことが特徴でありメリットですので、社長の考え方を伝えることは会社の積極的なアピールになります。商品・サービスは営業が訴求しますが、会社の魅力は社長しか伝えられません。
情報発信する際には、情報の正確性も重要です。経営理念や社風、職場の雰囲気など、ありのままの姿をお伝えしましょう。社員のメッセージなどを添えることも職場環境を理解してもらうために効果的です。情報の伝え方で、企業の姿勢が求職者に伝わります。
ところで、より良い人を採用したいからと考えて、決して事実と異なる情報を発信してはいけません。情報は伝える方ではなく受け取った方が解釈をしますので、間違った情報や誤解を与える情報は、会社の評判を大きく落とすことになります。求職者は、事前に会社情報が正しいかどうか確認するでしょうし、口コミもよくチェックします。また、面接を受けたり働いたりして感じた状況が、求人情報と大きく異なる印象を持った場合は、退職後ネット上などに書き込みをするかもしれません。書き込みや口コミはとめることができませんので注意が必要です。

(4)情報発信の具体例

紙やWebによる媒体活用やハローワーク、自社のHPを通じた求人情報発信など求人方法はさまざまあり、方法によってはスペースや予算が限られている場合があるかもしれません。それでも自社の特徴をアピールするため、求人情報発信をマーケティングと考え、基本条件は必要な内容に留め、会社の魅力を伝える情報発信を心がけましょう。基本条件をアピールするのではなく、「働きたい」と感じてもらう情報発信が必要です。具体的には、自社の自慢の一品など提供する商品やサービスの写真、社長や社員などの会社や職場の雰囲気がわかる写真、経営理念や商品・サービスの特徴、社長メッセージなど、他社との違いをアピールしましょう。これらを強調した求人情報のイメージ図をご紹介します(図1)。

図1.求人情報発信のイメージ図

(5)従業員定着率向上の施策が、求職者が「働きたい」と感じる情報発信につながる

求職者に「働きたい」と感じてもらう情報を発信するためには、従業員満足度を高め、従業員定着率を高める人事施策を行っていることが大切です。経営計画を策定の上、日頃より社内に経営理念や経営方針を発信、浸透させ、会社の進む方向を従業員と共有したり、従業員の努力や能力を適正に評価する仕組みを構築するなどして、従業員が夢と希望を持って働くことができると感じる取組みを行いましょう。人事施策の取組みの成果は、一朝一夕ででるものではありませんので、社長自らが率先して行動することが、人手不足の状況に対応した人材確保を実現し、経営の改善につながります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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