社会環境の変化が速くなっている要因の1つにIT技術の進展があります。
IT技術の進展は、人々の情報のやり取りを画期的に便利にしました。
従来は、企業が情報を発信することがほとんどで一方通行でしたが、昨今では、個人から企業、また、個人から個人というように、情報のルートが多様化しました。
同時に、扱う情報の量が増え、細かさ、新しさ、頻度など情報の質が劇的に変化しました。
この変化が、社会や市場の変化をとても速くしています。
これからの企業は、この社会の変化の速さに対応する必要があります。
変化に対応できなければ、顧客ニーズに対応できず、新規参入者や代替品にとって代えられ、あっと言う間に、敗者になってしまいます。
イギリスの自然科学者であり、進化論で有名なダーウィンは、「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるのではない。唯一生き残ることができるものは、変化に対応できるものである」という言葉を残しています。
今回のコロナウィルスによる影響も、その変化の1つであり、変化という視点でとらえれば、変化にいち早く対応することが必要でした。
企業が変化に対応するためには、多様な意見と迅速な行動が必要であり、経営者1人で対応するのは、至難の業です。
そこで、社員一人ひとりが自発的に行動できれば、変化にすぐに対応できる企業体質となります。
そこで今回は、変化の速い時代に求められる自発的人材を育成するためのポイントについて考察します。
なお、多店舗展開を加速する人材育成システムを詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
自発的人材育成のために工夫したい人事制度のポイント
このような環境のもと、社員を自発的人材に育成しようとする会社が増えています。
先日何人かの経営者の方にお会いする機会がありましたが、多くの方が自発的人材育成に取り組んでいるか、取り組もうとしていました。
すでに取り組んでいる経営者の方に状況を聞いてみると、社員との対話を増やしたり、考えさせたり、動機づけしたり、仕事を任せたり、必要な取り組みは行っているものの、今後どのように進めてよいのか、悩んでいる方もいらっしゃいました。
そこで、ヒントになればと思い、人事制度で考慮したい自発的人材育成のための工夫について、いくつかお話ししました。
その内容を以下の通りご紹介します。
この会社で働きたいと思わせる経営方針、ビジョンを示す
経営方針やビジョンは、会社を経営する上で、とても大切なものです。
自発的人材を育成するためには、社員を引きつけ、会社が魅力的であると思わせることがこれまで以上に必要です。
自社の商品やサービスを提供することによって、「どのような社会的な課題を解決したいのか」、「どのように顧客を満足させたいのか」、「どのような会社になりたいのか」、「社会をどのようにしたいのか」などの経営者の強い気持ちを、経営方針やビジョンに表現します。
そしてこの実現のために、会社をひとつにまとめ経営するのです。
社員が会社を誇りに思い、この会社で働きたいと強く思うことが、社員の自発的で前向きな行動を引き出します。
人事制度や仕組みを見える化する
できるだけ多くの人事制度を見える化して、周知します。
人事制度をオープンにして、社員全員に正しい理解を促し、公正・公平な評価や適正な報酬などの仕組みを示します。
社員が頑張っても評価されなかったり、成果が報酬に適切に反映されなければ、やる気を失わせてしまいかねません。
納得して働けること、頑張ったことが認められることが人を動機づけしますので、人事制度や仕組みを見える化して、社員に安心感と会社に対する信頼感を醸成します。
将来のキャリアプランを示す
以前は年功序列や終身雇用が日本の雇用形態を代表するものでしたが、すでに過去のものとなりつつあります。
不確実性の時代では、多くの若い社員は、会社での仕事を通じて、どのように自分自身を高め、成長させることができるのか、また、会社に頼るのではなく、他の会社でも通用するように自立したいと考えています。
このような社員の働く意欲を高めるためには、会社で築いていけるキャリアプランを明確に示すことです。
例えば、営業系、製造・サービス系、総務・経理系など職種別に、スタッフから主任・チーフ、店長、エリアマネージャーなど役職のステップを明記します。
また、役職に応じたモデル年収などを示し、将来設計しやすい情報を与えます。
これらにより、社員は長期的な視点で仕事に向かうことができるようになります。
自発的に行動できる仕組みを取り入れる
人事制度全体に自発的な行動を評価したり、自発的な行動を促したりする仕組みを導入します。
また、自発的な行動が起こるような企業風土を醸成します。
例えば、自発的な行動を社員に任せっきりにするのではなく、業務改善の提案制度や表彰制度、社長に対して直接提言できる制度などを導入し、自発的に行動しやすい環境を整えます。
問題点に気づいてはいても行動まで至っていないような社員がいるかもしれません。
そのような場合に、提案制度等の機会があれば、気づいた問題点をアウトプットしやすくなります。
また、評価制度においても、チャレンジングな目標設定を促したり、マイナス評価はせず、成果を加点のみによって評価すること等、評価指標の見直しが必要です。
これらにより、失敗を恐れることなく、自ら高い目標にチャレンジできるようになります。
会社のためから社員のための人事制度へ転換する
会社を経営し社員を雇用するためには、人事制度の整備は不可欠です。
従来は、人事制度が形式的に整っていれば、それで済ませることができました。
人事制度には、会社として法規制を守ったり、社員をルールに従って公正に扱ったりするために整備されている面も確かにあります。
しかし、これからの時代はそれだけでは不十分です。
人事制度自体を、会社のための人事制度ではなく、社員のための人事制度へと変えていくことが必要になります。
そのために、勤務時間や休日数、報酬体系などを規定し、社員を決まりに従わせるだけの制度から、今回ご紹介したような社員に自発的行動を促すような仕組みを考慮した人事制度へと変化させます。
そして、このような取り組みをオープンにして周知し、会社と社員が一体であることを明示し、社員が自発的人材へと成長することを支援するのです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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