フランチャイズ契約書をつくり終えたところで、ようやく加盟者を受け入れるための最低限の体制が整ったことになります。これで「フランチャイズシステムの構築」が一区切りついたことになります。
とはいえ、フランチャイズ展開は「フランチャイズシステムの構築」が終わったところが本当のスタートとなります。フランチャイズ契約書までつくったのに“加盟店が一社も集まらない”なんてことになれば、笑い話にもなりません。
第6回目は、加盟店開発戦略の考え方についてご紹介していきます。
<目次>
<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
第7回:フランチャイズ本部のスタッフを育成する
第8回:フランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイント
なお、FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルをご覧ください。
(1)加盟ターゲットの明確化
ターゲットを明確に設定することは、マーケティングの基本です。
事実、フランチャイズ展開を検討しているビジネスモデルでは、対象とする顧客像を明確化しているかと思います。加盟開発においても、まずはじめに行うべきことは、加盟対象とするターゲットを明らかにすることです。
とはいえ、これからフランチャイズ展開を開始する本部が加盟ターゲットを考えるのは難しいことも事実です。そこで、最低限、以下の内容程度は、事前に明らかにしておくとよいでしょう。
① 個人or法人
加盟対象は個人事業主なのか、法人なのかを明らかにします。
個人事業主を対象とする場合、初期投資に必要となる資金の大小が非常に重要な要素となります。
一般的に、個人加盟者は法人加盟者よりも資金的な余力が少ないため、初期投資資金は1,000万円以下に抑制したいところです。当社の経験則で申し上げると、業種業態にもよりますが、初期投資が1,000万円を超えたあたりから加盟店開発の難易度が急速に上がりだし、2,000万円を超えてくると、個人加盟主体では加盟店を開拓するのがとても難しくなります。
一方、法人加盟を対象とする場合、対象とする法人の規模、本業の経営状態や取り巻く経営環境、従業員数等により、フランチャイズに期待するものが変わってきます。
ターゲット法人の業種まで特定する必要はありませんが、会社規模(売上高、資本金、従業員数等)や本業の経営状態(本業の収益状況、市場環境の動向等)、フランチャイズ加盟の目的、フランチャイズ加盟経験の有無などを明らかにしておくと、具体的な開発手法を検討しやすくなります。
②開拓するエリア
初期段階において、どのエリアで加盟開発を進めていくのかを明らかにします。これは、フランチャイズ本部の経営方針にも大きくかかわる内容です。
将来的に全国展開を目指すにしても、初期段階においては、できる限り展開するエリアを一定範囲内に特定しておきたいところです。展開エリアが広がれば広がるほど、本部の業務の効率性が低下していくからです。
加盟店開発の難易度が高いフランチャイズ展開の初期段階においては、加盟希望者が現れれば、遠方であろうとも何とか加盟を実現させたいと思うことが自然ですが、そのことには少なからずリスクがあることも事実です。メリット、デメリットを踏まえて、初期の段階で展開するエリアを定めておくとよいでしょう。
(2)加盟店開発業務の実施主体
続いて、加盟店開発業務の実施主体を検討します。具体的には、自社で実施するのか、開発代行会社に委託するのか、の大きく分けて2択となります。それぞれメリット、デメリットがありますので、フランチャイズ本部の経営方針や店舗展開計画に基づいて、ふさわしい選択肢を選ぶことになります。
①自社で加盟開発を実施する
加盟店開発業務を自力で実施していきます。
フランチャイズ本部自らが開発業務全体をコントロールすることができますので、本部担当者に対する教育次第とも言えますが、フランチャイズ本部が加盟させたい加盟希望者だけを加盟対象とすることができる、過剰な営業トークを防止しやすい等のメリットがあります。
初期段階では開発に苦労することが多く、開発代行会社を活用する場合と比較して加盟店開発に必要となる時間・金銭的コストが多くなる傾向にありますが、その結果として徐々にフランチャイズ本部に加盟開発のノウハウが蓄積されていく点は、フランチャイズ本部の競争力という観点では見逃せないポイントです。
②開発代行会社に委託する
加盟店の開発を専門に扱う開発代行会社に加盟開発業務の全部または一部を委託する方式です。
選定する開発代行会社によってサービス内容はまちまちですが、基本的には、自社で実施する場合と比較してスピーディーにフランチャイズ展開を進めていくことができる点がメリットとなります。
また、開発代行会社は、他のフランチャイズチェーンに加盟している企業等とのネットワークを有しているはずですので、フランチャイズ加盟経験のある企業と接点が持てる点もフランチャイズ展開の初期段階にあるフランチャイズ本部としてはうれしいポイントでしょう。
一方、デメリットとしては、比較的高額な業務委託料が発生すること、営業トークが過剰になりがち(開発代行会社への報酬は成功報酬の割合が高いため、ビジネスモデル上、営業トークは過剰にならざるを得ない)であること、自社で行う場合と比較して加盟者の適正を見極めにくいこと、などが挙げられます。
また、開発代行会社に委託する場合、フランチャイズ本部に開発業務のノウハウが蓄積されていかない点にも注意が必要です。信頼できる開発代行会社を選定し、パートナーシップを持って取り組んでいく覚悟があればOKですが、そうでない場合には、どこかのタイミングで、開発業務の内製化に着手していく必要があるでしょう。
③自社で行うべきか、開発代行会社に委託するべきか
上記のメリット、デメリットを踏まえて、加盟店開発業務を自社で行うか、開発代行会社に委託するかを検討していくわけですが、弊社としては、原則、自社で開発業務をおこなう(もしくはフランチャイズ本部の経営理念や方針を心の底から共有できる開発代行会社に委託する)ことを推奨しています。
やはり、苦労してでも自力で開発した加盟店に対する想いは、開発代行会社に委託して連れてきてもらったときとは異なる格別なものがあります。本部の社員視点で考えても、自分が苦労して加盟してもらった加盟店には、何としても成功してもらいたいと考えますし、そのための努力を行うことでしょう。
フランチャイズシステムといっても、結局は会社の中にいる社員の働きがすべてですから、本部社員が働きがいを持って仕事に取り組めるよう、原則は自社で実施する(または、同じ想いを共感できる代行会社を選ぶ)ことが望ましいでしょう。
楽をして加盟開発を進めるために、開発代行会社に開発業務を丸投げするなどは絶対に避けるべきです。
(3)加盟店開拓の流れ
加盟店開拓の具体的な手段や必要なツールを検討する前に、加盟店開拓までの流れを確認しておきます。一般的には以下のような流れになります。以下をベースとして、自社における加盟開拓の流れを想定しておきましょう。
①見込み加盟希望者の発掘
まずはじめに、見込み加盟希望者を発掘する必要があります。
具体的な手段は後述しますが、加盟者募集専門サイトへの掲載、フランチャイズ展示会への出展、インターネット広告、店舗での情報発信など、様々な方法がありますので、自社のターゲットを踏まえて適切な手法を組み合わせ、見込み加盟希望者を発掘していきます。
②問い合わせ対応
見込み加盟希望者から問い合わせがきたら、加盟案内など、加盟検討に必要な加盟案内資料をお渡しします。
その際、ただ資料をお渡しして終了するのではなく、一定期間経過後、電話フォローを行って興味の有無やわからない点を確認する等、フランチャイズ本部から積極的に行動していく姿勢が必要です。少しでも興味をお持ちの方には、より詳しいお話をする事業説明会へ参加するよう促していきます。
③事業説明会
一定程度、自社のフランチャイズ事業に興味をお持ちの方々を招いて、事業説明会を実施します。
事業説明会といっても、初期段階ではそれほど加盟希望者が参加することはないと思います。場合によっては1対1になることもありえますが、個別相談よりも説明会形式としておいた方が、加盟者視点では気楽に参加申し込みすることができます。
事業説明会では、資料では伝えきれないフランチャイズシステムやビジネスモデルの魅力についてプレゼンテーションするとよいでしょう。
④個別面談
事業説明会に参加していただいた加盟希望者を個別面談に誘導していきます。
事業説明会後にその場で実施する方法もありますが、後日実施する場合には、問い合わせ対応と同様、フランチャイズ本部から積極的にフォローアップをしていきます。
個別面談までたどりついた方は、有力な見込み顧客となります。開示する資料も、事業説明会のものよりもより具体的なもの(例えば、既存店の収益実績など)にすると、加盟に対する意欲がより増していくことが期待できます。そのような資料を渡す際には、秘密保持誓約書も用意しておくとよいでしょう。
⑤加盟審査
加盟希望者の加盟意思が固まり、加盟審査に必要な書類一式を提出してもらったら、加盟審査を行います。
初期段階においては、申し込みのあった全ての加盟希望者を加盟させたいと考えるかもしれませんが、加盟審査は厳正に行うべきです。
この点は後述しますが、加盟審査をきっちりとおこなうことが、フランチャイズ展開でトラブルを生じさせない最大のポイントとなります。
⑥フランチャイズ契約締結
加盟審査を通過した加盟希望者と加盟契約を締結します。
詳細は、「第5回 フランチャイズ契約書類を整備する」をご参照ください。
(4)開拓手法
加盟店開拓の流れのイメージが固まったら、見込み加盟希望者を開拓するための具体的な手法(見込み加盟希望者を発掘し、事業説明会へ誘導する)を検討します。見込み加盟希望者を開拓するための方法は様々ありますので、自社のターゲットを踏まえて、適切な手法を組み合わせ、見込み加盟希望者を発掘していきます。
複数の手法を組み合わせる、という点がポイントです。すべてのビジネスに通じることかもしれませんが、顧客が自社フランチャイズシステムの存在を知ってから、実際に加盟の意思決定をするまでの心の動きを想像し、そのために必要な手法を漏れなく組み合わせていくことが大切です。
ここでは代表的な手法をご紹介します。
①加盟者募集専門サイトへの掲載
加盟者を募集するフランチャイズ本部情報を多く取り扱う専門サイトへ情報を掲載してもらう方法です。インターネットが普及した現代において、多くのフランチャイズ本部が採用しています。
加盟者を募集するフランチャイズ本部の情報が多く掲載されており、かつ業種業態や投資資金、加盟者の属性等によって該当するフランチャイズ本部を検索することができるため、加盟希望者視点でも使い勝手がよく、専門会社が検索エンジン対策を施していることもあって、加盟希望者が加盟候補とするフランチャイズ本部を探す際に最も活用されている媒体といえるでしょう。早期に加盟希望者を発掘したいのであれば、何らかの媒体への掲載を検討したいところです。
掲載するには費用がかかりますが、課金形態は、資料請求される毎に一定金額が課金される形態、一定期間の掲載に対して固定金額が発生する形態の2パターンに分けられます。
課金形態はもちろんのこと、媒体の特徴によってメリット・デメリットがありますので、自社の経営方針やターゲットを踏まえて、最適な媒体を選定する必要があります。
②フランチャイズ関連フェア・展示会への出展
フランチャイズ加盟希望者を対象としたフェアや展示会に出展する方法です。
インターネットを通じた加盟者募集が発展する中、フランチャイズ加盟を希望する多くの方々と直接接点を持つことができる点は、他の方法にはないメリットといえます。
フランチャイズ市場が拡大を続ける中、フランチャイズ関連フェアや展示会も増加しており、盛況なものと閑散としているものとで優劣が明確化している印象があります。出展費用もばかにならないため、事前調査をした上で参加するフェア・展示会を決定するとよいでしょう。
③パブリシティの活用
各種メディアに対してプレスリリースを行い、自社のフランチャイズシステムの内容についてメディアの報道として取り上げもらう方法です。費用はそれほどかかりませんが、上手くメディアに取り上げてもらうことができれば、多大なる効果が生れる可能性があります。
もちろん、プレスリリースを行ったからといっても、何も取り上げてもらえない可能性の方が高いため、メインの手段として考えるものではありません。
プレスリリースをおこなうこと自体にはそれほどリスクはありませんので、フランチャイズ展開開始時にはダメもとでもプレスリリースを行っておくべきでしょう。
④直営店舗でのPR
展開している直営店舗に加盟者募集のチラシやポスターを設置するなどして、PRする方法です。 弊社の経験則では、フランチャイズ展開の初期段階においては、最も簡単に実施でき、かつ、高い効果を生む手法です。
考えれば当たり前のことですが、実際に自分が行って気に入ったお店が加盟店を募集しているのですから、これからフランチャイズ加盟しようと考えている人であれば、高い確率で興味を持つことになります。
これもそれほどコストを掛けずに実施できる手法ですので、立ち上げ段階においては必ず実施したいところです。
⑤ホームページの整備
ホームページに加盟希望者向けのページを設けて、自社のフランチャイズシステムやビジネスモデル等についての情報を掲載します。これは、フランチャイズ展開を目指すのであれば必ず実施するべきでしょう。
なお、ホームページ上に情報を掲載する際の注意点は「できる限り具体的な情報を発信する」ことです。例えば、「短期間で投資回収できます」といわれても、短期間という言葉の捉え方は人によってまちまちであり、言葉に力がありません。その点、「基本的な収支は●●、投資は●●ですので、投資回収は3年間でできます。」と言われると、言葉に力があり、信頼性も感じられます。このような観点で、発信する情報を具体的に記していきます。
これには労力がかかりますし、ホームページの情報量も増えていきますが、そのようなサイトを構築している本部は、何もせずとも定期的に加盟希望者からホームページで問い合わせを受けている傾向にあります。
ホームページは一度構築してしまえばあとはメンテナンス程度でいいわけですから、こんなに楽な方法はありません。ホームページは立ち上げの段階で力を入れて整備をしたいところです。
⑥その他
上記以外の方法としては、保有する見込み加盟者に対してダイレクトメールを送る方法、インターネット広告を活用する方法、メディア広告を実施する方法など千差万別です。
積極的に情報を収集し、自社に適した方法があれば、前述の方法と組み合わせて展開していくとよいでしょう。
(5)ツール整備
加盟開発を進めていくためには、加盟希望者に提示するツールが必要です。具体的には、加盟案内書、パンフレット、ホームページ、名刺等様々なものがありますが、その中核となるのは加盟案内書です。実務では、はじめに加盟案内書をつくり、その情報を踏まえてその他のツールを作成していきます。
加盟案内書に掲載する情報としては、以下に紹介する情報をベースに、自社の特徴的な点やアピールしたい点を追加してまとめればよいでしょう。
なお、加盟希望者に提示する資料は、加盟希望者の意思決定を左右する重要な情報です。この情報が不正確だとフランチャイズ本部の信頼性に関わりますし、仮にトラブルが発生した場合、本部の立場を悪くします。したがって、加盟希望者に開示する情報は細部にまでこだわって作り込む必要があります。
①会社概要
- フランチャイズ本部の売上、従業員数、資本金、設立年度、事業内容、関連会社、沿革など、会社の基本的な情報。
②フランチャイズ展開の目的や理念
- フランチャイズ事業を通じて実現したいこと、フランチャイズ展開を進める目的など。
③市場環境
- 当該業種業態の市場規模推移、競争環境、他業種業態と比較した際の優位性など。
④事業の特徴、強み
- 加盟希望者にアピールできる事業の特徴や強み、お客様の声など。
⑤フランチャイズパッケージの内容
- 本部が提供するサービス(商標、開業準備支援、提供するマニュアル、教育研修システム、SVシステム、商材提供、物流システム、情報システムなど)の内容。
⑥加盟条件概要
- 加盟金、保証金、研修費などのイニシャルコストやロイヤリティ、システム使用料等のランニングコスト、契約期間など
⑦収益モデル(初期投資含む)
- 標準店舗の収益モデル、初期投資金額、投資回収期間など。
⑧契約から開店までの流れ
- 契約締結までの流れや期間、契約から開業まで(物件選定、立地診断、店舗設計・施工など)の流れや期間など。
⑨研修内容
- 研修カリキュラム、標準スケジュール、参加人数、費用など。
⑩既存加盟者の声
- 加盟時の心境や加盟後の状況、今後の目標などといった既存加盟者の声。
⑪店舗イメージがわかるもの
- 店舗内外装やメニュー、メニュー表、チラシなどの画像。
⑫メディア取り扱い実績等紹介
- メディア取り扱い、書籍出版など、特筆すべき実績。
(6)加盟審査基準
①加盟審査の重要性
加盟希望者より正式な加盟申込を受けた後は本部による審査を行います。
初期段階においては、申し込みのあった全ての加盟希望者を加盟させたいと考えるかもしれませんが、加盟審査は厳正に行うべきです。
弊社によくある要望で「トラブルになっても絶対に裁判で負けないフランチャイズシステムや契約書をつくってください」というものがあります。
当然、フランチャイズチェーンが発展していくためには、本部が一定の力を有している必要がありますので、これを目指すこと自体に問題はありません。しかしながら、そのような仕組みが構築されているからといってトラブルがなくなるかというと、そういうわけではありません。
この代表例は、2019年に発生したコンビニフランチャイズの24時間営業問題です。フランチャイズシステムや契約書を根拠として、加盟店に対して24時間営業を求めるフランチャイズ本部の姿勢は、フランチャイズを専門とする弊社からみても至極まっとうな対応です。
24時間営業について弊社がとやかくいう立場にはありませんが、少なくとも、コンビニが24時間営業を廃止するということは、従来のビジネスモデルを抜本的に見直すということです。その影響がどうなるかはやってみなければわかりません。仮に24時間営業を廃止したことで、コンビニの競争力が失われた場合、そこに関わる多くの方々に影響を及ぼします。何万店舗も展開し、多くの経営者とそこで働くスタッフ、関係者の人生を預かっている本部として、24時間営業モデルはそうやすやすと変更できるものではないのです。
実際、コンビニ加盟店をメインにコンサルティングをされている仲間のお話では、24時間営業廃止に反対しているオーナーの方が多数派ということです。
24時間営業問題でコンビニが窮地に立たされた理由にはいくつかのポイントがありますが、その大きな要因の一つに、本部の理念や経営方針を十分に理解されていない人を加盟させてしまったことがあるといえるでしょう。
コンビニフランチャイズ本部が主張していることは正しいことですし、フランチャイズシステムや契約書も万全です。にもかかわらず24時間営業のことがあのような問題に発展してしまったのは、本部と加盟者の関係性に最大の問題があるのです。逆に言えば、本部と加盟者間に信頼関係が構築されていれば、どんな困難も力をあわせて乗り越えていくことができるはずです。
以上のように考えると、加盟審査をきっちりと行い、信頼関係を構築できる加盟者だけを加盟させていくことが、フランチャイズ展開でトラブルを生じさせない最大のポイントとなるのです。
②加盟審査の着眼点
加盟審査を行うにあたっては、審査視点の偏り、抜け漏れなどが生じぬよう、あらかじめ加盟審査の着眼点を整理しておくとよいでしょう。
加盟審査の着眼点は、フランチャイズ本部によって千差万別です。自社が望む加盟店の姿を想定し、期待するポイントをまとめていきます。初期段階においては、以下の切り口で整理をしていくとよいでしょう。
ア)経営者としての資質
加盟者は本部に雇用される、もしくは本部の子会社になるのではなく、本部と対等な独立事業体として事業に取り組んでいくことになります。ですから、他責思考や依存思考があるなど、経営者としての資質に欠けているようであれば、成功することはありえません。特に、個人や小規模企業を加盟ターゲットとする場合には、重点的にチェックする必要があるでしょう。
イ)本部の経営理念やビジョンに対する理解・共感
本部の経営理念やビジョンを共有できていれば、事業を進めていく中で多少の問題が生じようとも、信頼関係をベースに乗り切ることができます。逆に、経営理念やビジョンを共有できていないと、フランチャイズ事業が儲かるか、儲からないかだけの関係となりますから、儲かっていればよいのですが、儲からなかった場合にほぼ確実にトラブルが生じます。加盟審査において最も重要なポイントです。
ウ)本部事業に対する理解
加盟者に対しては、本部が展開するフランチャイズ事業のビジネスモデルについて十分な説明を行うとともに、その理解度を確認しておく必要があるでしょう。
例えば、コンビニでいえば、24時間営業やロスを恐れない品ぞろえ等はビジネスモデルの核というべきものです。
このようなビジネスモデルの核について、加盟者が正しい理解を持っているのか、厳正に見極める必要があります。
エ)フランチャイズシステムについての理解
一般的なフランチャイズシステムについての理解はもちろんのこと、自社のフランチャイズシステムについても適正な理解がなされているかを確認しておく必要があります。
特に、本部と加盟者の役割は重要なポイントです。加盟店によっては、本部がすべてやってくれると勘違いしている人もいますが、そのような方は絶対に加盟させるべきではありません。
オ)加盟の実現可能性
前述の内容とは多少切り口が異なりますが、実際に加盟し、店舗を運営できるのかどうかを審査する必要があります。
具体的な項目としては、資金調達可能性、人材確保可能性、重要な関係者(法人であれば代表を含めた役員、個人であれば家族等)の同意などが挙げられます。
カ)事業や経営の経験
事業や経営についての経験は必須ではありませんが、事業や経営の経験があれば、フランチャイズ本部の立場も一定程度理解できるはずですから、経験がある場合にはプラス要素となるでしょう。
ただし、自分の価値観ややり方を貫きたい、という方もいらっしゃいます。そのような方は、統一性が求められるフランチャイズ加盟には向いていませんので、避けた方がよいでしょう。
まとめ
第6回では、加盟店開発の考え方や具体的な方法、加盟審査のポイントを解説しました。
フランチャイズ展開は「フランチャイズシステムの構築」が終わり、加盟開発を開始するところが本当のスタートとなります。これまで取り組んできた仕組み作りが無駄にならないよう、実現性のある戦略や計画を策定するとともに、1つ1つ着実に遂行していく必要があるでしょう。
第7回目は、フランチャイズ本部スタッフに求められる役割や育成方法を解説します。
執筆者プロフィール
株式会社 常進パートナーズ 代表取締役 高木 悠
千葉県生まれ。立教大学経済学部卒。大手外食フランチャイズチェーンに入社後、店長、マネージャー、フランチャイズ担当等を歴任。15年以上にわたり外食・フランチャイズ業界に関わっており、店舗ビジネスや大手チェーン・フランチャイズ本部の実態を熟知している。
独立後は「店舗ビジネスを営む企業とそこで働く社員の社会的地位の向上」を実現すべく100社以上の企業支援に携わっており、支援先の中には2年間で売上274.6%UPを達成した企業や、創業後5年以内に30店舗展開を達成した企業があるなど、その実践的なコンサルティングには定評がある。
著書として「フランチャイズマニュアル作成ガイド(同友館 共著)」「飲食店「のれん分け・フランチャイズ化」ハンドブック(アニモ出版 共著)」がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。
<シリーズ>
第1回:フランチャイズ展開をはじめる前に準備すべきことを知る
第2回:フランチャイズ展開する標準店舗モデルを確立する
第3回:加盟店に提供するフランチャイズパッケージを作り込む
第4回:本部が受け取る加盟金やロイヤリティを設定する
第5回:フランチャイズ契約書類を整備する
第6回:加盟店開発戦略を策定する
第7回:フランチャイズ本部のスタッフを育成する
第8回:フランチャイズ本部立ち上げを成功させるためのポイント
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