多店舗展開

人材育成が上手く進まない企業の共通点

ここ数年、ありとあらゆる業種で人手不足問題が深刻化しています。労働集約型産業(サービスを提供するのに多くの人材が必要な事業)である店舗ビジネスの現場では、人手不足問題は事業の存続を左右しかねない重要な問題となっています。有効求人倍率が1倍を大きく超え、仕事を探す人(求職者)よりも、求められる働き手の数(求人数)の方が多い時代ですから、中小規模企業が人材確保で苦戦することは当然のことで、ましてや自社が求める資質やスキル、マインドを備えた人材を採用できたとしたら、それは幸運だったと捉えることが自然でしょう。人材を確保することが困難な環境ですから、苦労して採用した人材を戦力化できるかどうかが従来にも増して重要な時代となっています。
重要性を増している人材育成ですが、当社に相談に訪れる方のお話を聞いていますと、人材育成が上手く進んでいない企業の多くが、実はほぼ同じポイントで躓いてしまっていることがわかります。そこで、多くの企業が躓く人材育成の落とし穴を紹介します。

(1)経営計画が社員に共有されていない

まずあげられるのが、会社の経営計画が存在しないケースです。本コラムでも経営計画の必要性は繰り返し申し上げていますが、経営計画が存在しなければ人材育成が円滑に進むことはほぼ不可能でしょう。経営計画は会社が進む方向性であり、社員にとって指針となるものです。指針がなければどこに進めばよいかわかりませんし、そもそも進もうというモチベーションさえわきません。仮にこれからどこかの企業に就職しようとする場合、数年後にどうなっているかわからない会社で働きたいと思う人はいないはずです。人材育成を進めていくためには経営計画が存在することが前提となるのです。
また、経営計画は作っただけでは何の意味もありません。全社員に共有されてはじめて意味を持ちます。そのためには、半期または1年ごと等の頻度で定期的に経営計画発表会を開催し、書面と経営者からの言葉で明確に示すことが望まれます。経営計画の作成までしながらも共有・浸透が上手く進まないケースとしては以下のような内容が挙げられます。
・日々のコミュニケーションの中で簡易的に説明されている
・経営者以外の人から共有されている
・1回共有されただけで終わっている

(2)キャリアパスが見えない

次に挙げられるのが、その会社で働いていった結果社員のキャリアはどのように進んでいくのか=キャリアパスが見えないケースです。自分の人生よりも会社のことが大切な人は経営者以外には存在しません。したがって、社員に会社が求める働きをしてもらうためには、社員が努力をした結果、社員自身が幸せになることができることを明確に示す必要があります。少なくとも、自らが努力して会社に貢献した結果、どのようなステップでキャリアアップしていくのかを明確に示すことが求められます。店舗ビジネスの場合では、マネージャーなどに出世できる人材は限られる傾向にありますから、のれん分けFCシステム(社員独立制度)の導入等により、社員の自己実現をサポートする、ということも有効です(詳細は「のれん分け制度を導入する際に検討すべきキャリアパスの選択肢」を参照)。

(3)目標達成に向けたプロセスが社員まかせになっている

最後に、社員に対して売上や利益といった定量的な目標は設定しているものの、その達成手段に目を向けていないケースが挙げられます。
当社がこれまで様々な経営者の相談を受けてきた経験で申し上げると、大半の経営者が求める人材は「自ら問題を発見し、解決策を考え、遂行できる人材」といったイメージです。このような人材を育成するためには、「結果」と「行動」を分けて考えるよう指導していくことがポイントとなります。少しわかりにくいと思いますので、具体的な事例で考えてみたいと思います。例えば、社員Aさんの売上目標として1000万円を課すとします。ここで意識したいのが、その1000万円という目標があるだけでは、その目標には何の意味もない、ということです。それは、Aさんが1000万円を達成したいと思っていたとしても、達成するための具体的な行動が伴わなければ、結果など出るはずがないからです。仮に行動が伴わずに目標を達成したとしたら、それは単なるラッキーです。それよりもむしろ、行動したけど売上目標は達成できなかった、という方がよっぽど評価されるべきと言えるでしょう。大切なことは、設定した目標を達成するためにAさんが何をするのか、という点です。これには、売上目標を達成させるうえでの問題点は何か、その問題点を克服するためには何をすべきか、といったように具体的に落とし込んでいく必要があり、非常に高いレベルでの思考が求められることとなります。このような思考はすぐに身につくものではありません。考えて、実行してみて、結果を振り返って、また考えて…と、繰り返し繰り返し、結果と行動を切り分けて考え、行動することで、徐々に身についていくものです。ですから、社員の成長を願うのであれば、ただ目標を設定するだけではなく、その目標を達成させるための行動にこそ焦点を当て、社員に考えさせるアプローチをしていくことが大切です。その意味では、目標が達成できたかどうかなどはおまけみたいなものとも言えます。


もし、現状で人材育成に躓いているのだとしたら、上記の落とし穴にはまっていないかを点検してみることを推奨します。この落とし穴を回避するだけでも、人材育成が加速度的に進んでいくことが期待できます。

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