人材育成

部下を自発的人材に導く問題解決方法の考え方とは

仕事や経営とはある意味問題解決の連続です。
目標と現状とのギャップを埋めていくことが目標へ到達する道です。

しかし、不確実性の高い現代においては、ギャップを埋める方法は何が正解か簡単にはわかりません。100%正しい問題解決方法はわからなくても正解の確率が高い仮説が求められます。

また、誰もが思いつく仮説であればその考え方には付加価値はありません。
その事象に適したその人ならではのアウトプットが求められます。

このような多様な考え方を発想させ業務に活用させることができるかが、人材育成のカギを握っています。
そこで、問題解決方法の考え方として、代表的な帰納法的考え方と演繹法的考え方の2つを例示し、若手人材の自発的人材育成にどのように活用するかご説明します。

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事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント

(1)自主的に業務に取り組める職場環境が問題を解決できる社員の育成につながる

「若い社員に問題解決方法をアドバイスをしたいのですが、どのようなものがよいでしょうか?」

これは先日飲食店の経営者の方から伺った言葉です。
この方は、コロナ禍の前から自発的人材の育成に力を入れてきました。

自分の店を持つ前に、近隣の飲食店や名前の知れたレストランなど数店で業務を経験した際、そのどの店においても社員の育成に取り組んでいたとのことです。
ある店では、若手社員に一通り業務を教えた後、積極的に業務を任せていました。

また別の店では自分の希望する仕事を担当することができたり、興味を持った業務に自主的に取り組める仕組みがありました。
そして今ではこのような環境で多様な業務を経験したことが自発的に業務を進めることができた要因であると思うようになりました。
問題点の原因を追究したり、日常業務に疑問を持つことが問題解決につながりました。

(2)部下を自発的人材に導く問題解決方法の考え方とは

試行錯誤の経験により問題解決手法を会得したこの経営者ですが、体系的に整理したいとも考えています。
なぜなら、仕事や経営とはある意味問題解決の連続だとまで思うようになったからです。

特に自らの経験から若いうちからそういった知識や経験を得ることがその後の成長に大きく影響することを実感しました。
「問題解決のビジネス書はたくさんあるが、若手社員の人材育成にはどのような方法がよりよいだろうか?」というのが、この方のご相談でした。

そこで、基本的な問題解決方法の考え方のうち2つをご紹介しました。

帰納法的考え方

古典的な考え方で日頃から多くの方に馴染みがあり、よく使用されています。
ある事象からすべてに当てはまる経験則を導き、一般化したり他のことに展開、応用したりする考え方です。

簡単な例では、2, 4, □, 8,□, 12, 14・・・と数字が続いているときに□に入る数字について、多くの方は偶数(2の倍数)であることに気づき、6と10が入るだろうと想像できます。

また、A店やB店、C店がポイントカードを導入して来店客が増えた場合に自社でもポイントカードを導入すれば来店客が増えるだろうと考えることは帰納法的考え方です。
業務において望ましい結果が出ている経験則を発見して展開や応用することに役立ちます。

業務で使用する際に留意したい点は、その経験則の背景に何があるかということです。
機能している経験則でも実はコストがかかっているかもしれません。

ポイントカードの例では、どの店でも来店客は増えたとしても、ポイント還元する分に見合う売上げが増えなければ、逆にマイナスになってしまいます。
自社に展開するためには、経営方針や現状の課題に合っているかを検証し、自社にふさわしい方法で導入する工夫が必要です。

また、過去の事象から発見した経験則は必ずしも将来に当てはまるとは限りません。
この場合の代表例は株価です。

基本的に市場の平均株価は長期で見れば少しずつ上昇しますが、個別の銘柄や2~3年の短期の間に平均株価が過去のトレンドのように必ず上昇するかはわかりません。
このように、帰納法的考え方はとてもわかりやすく応用もしやすいですが、一方で経験や過去だけにとらわれずに現状にあった最適な解決策を立案することが大切です。

演繹法的考え方

演繹法的考え方とは、ある事象に対して一般論や法則をあてはめ、結果を想定することです。
このことを仮説を立てるとも言います。

ある事象が起こった時に、一般論や法則を活用して将来を想定するところが、帰納法と根本的に異なります。

例えば、月曜日は他の曜日より売上げが低い店があったとします。
この店の連休明けの火曜日の売上げは、いつもの火曜日のような売上げ、もしくは週末明けの月曜のどちらに近いのでしょうか?

このときに、一般論を持ち出し別の要因を考慮しながら結果を推定し検証をします。
このように、演繹法を活用するためには、経験と法則、そして頭の中でのプロセシング(解釈、着想、検証など)が必要になります。

これは経験の少ない若い社員にとっては多少難しいかもしれません。
しかし、誰もが同じ知識や経験を持っているわけではありませんし、同じロジックを使用するわけではありません。

複数人がある1つの事象を見ても仮説の想定が同じになるとは限りません。
これは自発的人材の育成にとても必要な考え方です。

不確実性の高い現代においては、何が正解かわからないが正解の確率が高い仮説が求められます。
また、誰もが思いつく仮説であればその考え方には付加価値はありません。

その事象に適したその人ならではのアウトプットが求められます。
そのために、社員に仕事を任せ自主的に業務に取り組めるようにする工夫をします。

部下の話に耳を傾け試行錯誤する企業風土や部下との信頼関係が必要です。
多様な考え方を発想させ業務に活用させることができるかが、人材育成のカギを握っています。

留意したい点は、あくまでも結果の想定は仮説ということです。
帰納法的考え方のように必ずその結果になるとは限りませんので、仮説の検証が欠かせません。

なぜその結論を導きだせるのかを部下と対話することが重要であり、そうすることでもし仮説が正しくなかったとしても、その要因を両者で共有し振り返ることができます。

問題解決のための考え方は1つや2つではありません。
今回ご紹介した帰納法や演繹法は代表的なものですが、これ以外にもたくさんあります。

経営者の皆様は、それらを複数活用したり、組み合わせたりして柔軟に発想していることと思います。
このように業務に活用できる考え方は複数あり、また演繹法的考え方のように自発的に考えることに適した考え方もあります。

これらを日頃から活用できるように整理しておき、経験豊富な経営者の方が部下に伝えることで、部下の発想が豊かになり、自発的に考え行動できるようになります。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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