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のれん分け制度において独立者を複数店舗経営者に育てなければならない理由

「うちの社員には、複数店舗を経営しようと考えている人材はいないですよ」

これは、弊社がのれん分け制度構築をサポートさせていただいている美容サロンチェーンを営む経営者の言葉です。

のれん分け制度を設計するにあたり、弊社では、独立者が将来的に「複数店舗の経営者になること」を想定して制度設計をすることを推奨しています。
ところが、そのようなご提案をさせていただくと、しばしば経営者から上記のような反応が返ってきます。

もちろん、弊社でも多くの企業ののれん分け制度構築・運営に携わっていますので、独立者を複数店経営者にすることが簡単ではないことは認識しています。
それでも、このようなご提案をさせていただく背景には、明確な理由があるのです。

そこで、今回は、のれん分け制度において独立者を複数店舗経営者に育てなければならない理由について考えてみたいと思います。

(1)店舗ビジネスにおいて1店舗経営は極めてリスクが高い

独立者が1店舗だけを経営する場合、基本的には独立者が店舗で現場業務に従事することが前提となります。
大型店であれば1店舗でも現場業務を離れることができるかもしれませんが、のれん分けの場合、たいていは小型店からのスタートになるはずです。
そして、経営者が店舗で現場業務に従事することが前提であれば、のれん分け前後で、独立者の仕事に変化はありません。

もちろん、経営者である以上、利益が上がればその分収入は増えます。
しかし、そのこと以外は労働者と実質的に変わらず、独立後も、日々現場業務に従事しなければなりません。ここに大きなリスクが存在します。

美容サロンで考えれば、独立者の加齢とともに現場業務がしんどくなっていくことは避けられませんし、仮に独立後に怪我や病気となって現場業務に従事できなくなったとしたら、店舗経営ができなくなり、収入を失うような状況にさえなりかねません。

基本的に、店舗ビジネスにおいて1店舗の経営体制は、極めてハイリスクな状態といえます。
具体的には、前述の経営者の加齢や怪我、病気のリスク以外にも、

  • 余剰人員を抱える余裕がないため、離職等が発生することで業績が急低下する可能性がある
  • 経営する店舗周辺で環境変化が生じた際、会社全体の売上が急低下する可能性がある

など、1つの問題が致命傷になりかねないのです。

このように考えれば、のれん分け制度において1店舗経営をゴールとすることには、明らかに問題があることがわかります。

(2)複数店舗経営することで、独立者が抱えるリスクは低減していく

一方、独立者が複数店舗を経営するようになれば、前述のリスクを圧縮していくことが可能です。
具体的に考えてみましょう。

例えば、3店舗程度展開し、各店舗を黒字化することができれば、収益的にも余剰人員を抱える余裕が生まれ、独立者は現場から離れることが可能になるでしょう。
そうなれば、現場業務が体力的に厳しくなってきたり、怪我や病気で現場業務に従事することができなくなってしまったとしても、店舗経営を続けていくことが可能になります。この状態になれば、自分が働かなくとも収入を得ることが可能です。

また、3店舗あれば店舗間で人材のやりくりをすることも可能ですから、人材の離職等に伴う業績急低下のリスクも低減できます。また、仮に1店舗の業績が悪化したとしても、他の2店舗でその分を補うこともできるようになります。

このように、店舗ビジネスでは、展開する店舗が増えれば増えるほど、企業経営を安定化させていくことができるのです。
経営が安定してくる店舗数の目途は、業種業態やビジネスモデルによっても大きく変わるでしょうが、スタッフ数名で運営できる小規模店舗の場合、少なくとも3店舗程度は必要になるのではないかと思います。

以上から、弊社では、のれん分け制度を構築する際、最終的には「独立者を3店舗以上の経営者にすること」を前提に制度設計をしていくことを推奨しているのです。

(3)独立者が複数店舗経営することは、本部にとってもメリットが大きい

また、独立者が複数店舗経営してくれることは、本部にとっても大きなメリットがあります。

前述の通り、独立者が1店舗だけ経営している状態では、実質的には労働者と変わりありませんから、独立後も、本部はそのサポートに多くの手間がかかるでしょう。場合によっては、初期資金を貸してあげたり、保証人になるなど、資金面でのサポートをしなければならないこともあります。

一方、複数店舗を経営する状態となれば、経営者としても成長していますし、資金的な余力も生まれてきます。そのため、本部が特にサポートをせずとも、独立者が自らの力で店舗拡大を進めてくれることも期待できます。
本部としては、手間もお金もかけずにチェーン内の店舗が増え、かつその店舗を優秀で信頼できる元従業員がマネジメントしてくれるわけですから、こんなにうれしいことはありません。

また、このような経営者がグループ内に複数存在するチェーンとなれば、競合チェーンにも負けない競争力を身につけることが期待できます。

このように、独立者に複数店舗経営を促していくことは、独立者だけではなく、本部にとっても大きなメリットを生むのです。

まとめ

以上、今回は、のれん分け制度において独立者を複数店舗経営者に育てなければならない理由をご紹介しました。

独立者を複数店経営者にすることは、決して簡単なことではありません。
しかし、独立者を複数店経営者にしなければ、本部にとっても、独立者にとっても、理想的な姿にはならないのです。

ですから、たとえ難しい道のりであったとしても、独立者が将来的に「複数店舗の経営者になること」を想定して制度設計をしておくべきでしょう。

なおのれん分け制度構築についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのコラムも合わせてご覧ください。

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