人材育成

コロナ禍で重要になる社員を動機づける際のポイントとは

新型コロナウィルスの影響が長引き、終わりがなかなか見えないなか、多くの人が「仕事をする上で、働く喜びは必要である」と思っています。
しかし実際に働く喜びを感じている人は少なかったという調査結果がありました。
業界・業種によっては、その影響がさらに深刻化しています。

労働市場環境はコロナ前とコロナ禍で大きく変わってしまいましたが、社員に投資し従業員満足度を高める取り組みが大切であることは、変わりがありません。
危機的な状況において、社員が辞めてしまっては、営業を継続することはできなくなってしまいます。

社員を動機づけ人材育成することは、ますます重要になってきています。
そこで、社員を動機づける際にポイントとなる方法と留意点について、ご紹介します。

(1)社員が辞めてしまわないか心配な経営者

「一緒にやってきた社員がやめてしまわないか心配です」

これは少し前にお話した飲食店の経営者の方の言葉です。
この経営者の方は、新型コロナウィルスの影響が長引き、終わりがなかなか見えないため、先行きについて以前よりも心配を感じるようになったとのことでした。

グループ活動の抑制や営業時間短縮など飲食業を取り巻く環境は厳しくなっています。
このお店も政府や自治体の支援策を活用しながら、何とか営業を続けています。

会社を継続するための施策は、国や自治体などのさまざまな支援策を積極的に活用して行っているのですが、貴重な戦力である社員が辞めてしまっては、営業を継続することが難しくなってしまいます。
特に、この経営者の方は、以前から人材育成に関心を持ち、できるだけ社員に長く働いてもらいたいと思い、離職者を少なくする努力をしてきました。

(2)コロナ禍で難しくなる働く喜びを感じること

先日興味深い調査結果を目にしました。
株式会社リクルートキャリアが毎年実施している「働くことを通して、喜びを感じているのか︖」を把握するためのアンケート調査の結果(2020年12月)よると、「仕事をする上で、働く喜びは必要である」と思っている人は83.9%と高い数字でした。

一方、コロナ禍で、実際に働く喜びを感じている人は42.3%と低い結果だったのですが、「飲食業・宿泊業」では、前年比-18.4ptとさらに大きく落ち込んでいました。
やはり長引く新型コロナウィルスの影響が深刻になっていることを示す結果でした。
前述の経営者の方の心配を裏付けるような結果です。

(3)ますます重要になる社員の動機づけと人材育成

それではこの厳しい状況で社員のために何ができるでしょうか?
コロナ禍前までは、人手不足が深刻化し、人材育成をしながら、いかに自社の社員を動機づけて帰属意識を高め、成長してもらうかが大切でした。

労働市場環境の状況はコロナ禍で大きく変わってしまいましたが、先ほどの調査結果が示すように働く喜びを感じづらくなっているなか、社員に投資し従業員満足度を高める取り組みが大切であることは、変わりがありません。

コロナ禍は大きな危機であり、業種や職種によっては、さらに厳しい状況に直面し、社員を動機づけ人材育成することは、ますます重要になってきています。
そのためには、次のような方法が考えられます。

①社員の声に耳を傾ける

日頃から対話を行っているとは思いますが、厳しい状況が長く続いていますので、対話の機会をさらに多く持つように工夫します。
1回の対話に長い時間をかける必要ありません。

度々声掛けをすることで、社員は気にしてくれている、この会社や職場に居場所があると感じることができます。
所属に関する欲求は、マズローの5段階欲求においても、社会的欲求として3段階目に該当するなど、とても大切な感情です。

会社での働き方や職場環境、人材育成に期待する支援策などを具体的に聞いてみます。
また、売上げ改善策などについて、いいアイデアがないか意見を求めてもよいと思います。

期待されている、信頼されていると感じてもらうことが大切です。
そして、実行可能なものであれば、取り入れていきます。

②感謝を伝える、ほめる

対話の際に、「いつも会社のために一生懸命働いてくれてありがとう」と感謝の言葉を伝えましょう。
日本人は感謝やほめたりする言葉を表現することが少ないと言われます。

心では思っていても、なかなか話す機会がなかったり、照れくさかったりするからではないでしょうか。ポイントはできるだけ、最近の業務などを話題に具体的に伝えることです。

感謝することやほめることが見つかりやすくなりますし、声を掛けやすくなります。
感謝の気持ちが伝わるようになれば、それが業務を続けることの動機づけになり、これからもやっていこうと、社員は前向きにとらえやすくなります。

③キャリアを一緒に考える

社員と信頼感を醸成しながら、社員の将来のキャリアを一緒に考えます。
長期的に社員を貴重な戦力として期待していることを伝えます。

望ましいキャリアを考える期間は、1~3年、5年、10年以上と短期と長期の両方です。
社員が望んでいる職種や専門性を高めたい分野を把握し、時間軸に応じて会社が期待している仕事や役職を説明します。

この会社で継続して働きながらキャリアを積み上げ、活躍する様子を社員に想像してもらいます。
そのために必要なモデルキャリアと想定収入など必要な情報を提供するとともに、スキルを高める人材育成策を支援したり、自発的に取り組める業務を任せたりします。
経営者が社員に寄り添い、長期的な人材育成により成長を約束することで、会社を信頼してもらいます。

なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

事業拡大したい経営者必見!のれん分け制度をつくる7つの手順と、成功の3つのポイント

(4)コロナ禍で重要になる動機づけの際のポイント

足元が厳しい状況ですので、日頃から社員の貢献に対する感謝を伝えることで、社員に短期的な会社からの信頼と安心を感じさせ、「この会社でこれからも働いていこう」と思ってもらいます。
そして、長期的なキャリアを考えることで、社員に長期的な会社に対する信頼と安心を感じさせ、「今だけではなく、長くこの会社で働き会社に貢献していきたい」と考えてもらいます。

コロナ禍で業績の見通しが厳しく、経営者としては不安が募っていることでしょう。
しかし同様に社員も人生の先行きに不安を募らせています。

だからこそ経営者として、社員より高い視座で、長期的な視点から自社の経営を考え、その上で社員に対して、短期的・長期的な信頼と安心を与える「時間軸を意識した取り組み」が、社員を動機づけ人材育成するためには必要ではないでしょうか。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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