人材育成を目指す経営者にとって、社員にしっかりアドバイスすることはとても大切です。
社員を自分で考え、行動できるような自発的人材に成長させるには、社員の仕事に対するやる気を引き出し、会社に対する帰属意識を高めることです。
しかし、フィードバックのなかには、ネガティブな内容を含んでいるものもあり、経営者の方の中には「落ち込んでしまったらどうしよう」、「会社社を辞めてしまったらどうしよう」と考えてしまい、あまり得意ではない方もいるようです。
さらに、現代の若者は、個性を尊重する風潮やSNSなどの通信技術が発達した環境にいるため、自分にとって心地のよい情報に常に囲まれやすく、意見が合わない人がいる環境を避け、否定されることや批判されることを極端に恐れてしまう場合もあるようです。
そこで、ネガティブな内容を含むフィードバックをする際に工夫する点と留意点について、ご紹介します。
否定や批判されることに慣れていない若者
「前向きに仕事してくれる社員にうまくアドバイスしたいのですが、ネガティブなことは言いづらくて」
これは、先日お話したサービス業の経営者から聞いた言葉です。
この経営者の方は、とても人当たりがよく、事業が安定し堅実に成長を続けているのも、この経営者の方の人柄に起因するところが多いと感じさせる人物です。
そして、この方は「社員の成長こそ、会社の成長である」との考え方のもと、社員の人材育成に力を入れています。
業務の改善を通じて社員の成長を促したいと考えていますが、ご本人はあまり得意ではないようです。
アドバイスする際に「落ち込んでしまったらどうしよう」、「会社を辞めてしまったらどうしよう」と考えてしまうそうです。
現代の若者は以前の世代と異なると言われます。
経済成長し人口が増加していた時代は、同級生や同学年の人数が多くある程度の競争環境に常にさらされていました。
また、インターネットやスマホがなかったため、コミュニケーションといえば、対面や電話で直接話すことがメインでした。
しかし、近年は、個性を尊重する風潮に変わり、SNSなどの通信技術が発達し、自分にとって心地のよい情報に常に囲まれていることが可能になりました。
結果として、現代の若者は、意見が合わない人がいる環境を避け、否定されることや批判されることを極端に恐れ、また、否定や批判をされると落ち込んでしまう場合もあるようです。
ネガティブフィードバックをしっかりすることの大切さ
しかし、人材育成を目指す経営者にとって、しっかりアドバイスすることはとても大切です。
社員を自分で考え、行動できるような自発的人材に成長させるには、社員の仕事に対するやる気を引き出し、会社に対する帰属意識を高めることです。
そのためには、経営者が人材育成を会社の成長戦略のなかの1つとしてとらえ、社員に対して社員の成長を約束し、フィードバックすることが欠かせません。
社員が会社のバックアップを感じる環境で、スキルの高まりを実感できれば、モチベートされ会社に対しての愛着心も高まります。
社員にとって、アドバイスのなかにはネガティブな内容を含んでいるものがあるかもしれませんし、部下である社員に対して、ネガティブな内容をアドバイスすることは簡単なことではないかもしれません。しかし、社員に耳の痛い話をしっかり伝え、成長を促すことを支援することはとても大切です。
フィードバックは成長の源
社員に限らず、人はフィードバックなしには成長することができません。
トライアル・アンド・エラー、試行錯誤を繰り返すことで、いろいろなことが上達します。
思い出してみましょう。
子どもの頃、自転車に一度で乗れた人はいないと思います。自転車の後ろを大人に支えられながら、何度もバランスを崩すことを繰り返すうちに、乗れるようになったのではないでしょうか?
また、勉強にしても、試験の結果を振り返ることで、できなかった問題ができるようになります。
試験結果のように、自分で気づけるフィードバックもありますが、仕事のように、周りの人からの視点を活かす方が適切で効率的なものも多くます。
フィードバックは、成長の源です。
ネガティブフィードバックを伝える方法とは
ネガティブフィードバックをポジティブな効果がでるように伝えるには、少しの工夫が必要です。
誰でもできればいいことだけを伝え、ネガティブな内容に触れたくないと思っています。
ネガティブなことを伝えようとすると、気持ちが動いてしまうからです。
伝えられた相手がよく思わないだろうと想像してしまうため、ためらってしまいます。
そこで、気持ちが動かないように、フィードバックをする前に「このフィードバックは社員の成長につながるものだ」と再度認識します。
そして、事実を客観的に伝えるようにします。
事実とは、社員がした行動や、その状況、状態のことです。
事実の良い悪いといった評価ではなくて、事実そのものです。
無意識に評価をしてしまうと、気持ちが動きます。
意識を事実にフォーカスします。
事実であれば、フィードバックを受ける社員も、冷静に受け止めやすくなります。
感情を入れようとしたり、厳しい言葉を使ったりする必要はありません。
また、改善点を行動ベースで具体的に伝えます。
原因よりも、次にする行動に目がいけば、視点や気持ちが前向きになります。
過去の行動の否定や批判として受け止めづらくなります。
また、質問形式にして、社員に次にとるべき行動を考えさせることも効果的です。
そして最後に、その行動の効果に触れます。
フィードバックにより、トライアル・アンド・エラーを行えば、よい改善効果が現れます。
それを両者で共有し、同じ目標に一緒に向かいます。
社員がこの一体感を感じることができれば、フィードバックは成功と言えます。
事前の信頼関係の構築は不可欠
最後に留意点をお伝えします。
上記のような伝え方の工夫をすることは、ネガティブな内容を前向きな姿勢へと変換させます。
しかし、ネガティブな内容であることには変わりはありません。
このフィードバックのベースとして、経営者と社員の間で、信頼関係を築いておくことが重要です。
信頼関係とは、社員から見た安心感のことです。
若者に関わらず、否定されることを好む人はいません。
自尊心を傷つけられたり、羞恥心を感じたりすることは耐えがたいものです。
そのために、日頃から仕事やプライベートの対話などを通して、親近感を醸成しておきます。
これにより、ネガティブフィードバックがあったとしても、心の安定があるため、落ち着いて自分の行動を振り返り、次の行動へとつなげることができるのです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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