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のれん分け制度で安定的に独立者を輩出するために取り組むべきこと

「数年前にのれん分け制度を導入したのですが、なかなか独立希望者があらわれません…」

これは先日弊社ののれん分け制度構築セミナーにご参加いただいた美容院経営者からいただいたご相談です。
のれん分け制度の導入までは至ったものの、その後の運用がうまく進まずにお悩みになられているとのことでした。

このように「のれん分け制度をせっかく導入したにもかかわらず、その後独立希望者が現れない」ケースは思いのほか多いものです。
そこで、今回はのれん分け制度で安定的に独立者を輩出するために本部が取り組むべきことをご紹介します。

(1)のれん分け制度による独立希望者があらわれない会社に共通すること

これまで多くの企業ののれん分け制度構築や運用に携わる中で、のれん分け制度導入後に独立希望者が多くあらわれる会社がある一方、独立希望者が全くあらわれない会社が少なからず存在することを目のあたりにしてきました。
その中で気が付いたことは、なかなか独立希望者があらわれない会社は、共通して独立者の輩出を“点”で捉えていることです。

独立者の輩出を“点”で捉えるとは、「のれん分け制度を導入すれば、独立希望者が出現する」といった安直な考えを意味します。

そもそも、会社で働く人材にとって独立するということは人生を左右する大きな決断です。
本部企業がのれん分け制度を導入したからといって、独立希望者はすぐにあらわれるものではないと考える方が自然です。

例えば、人生における大きな決断の例として、「家を買う」ことがあります。
「良い物件がありますよ!」と言われたからといって、すぐにその物件を買うでしょうか。
普通の人であれば、その他の物件を調べたり、その不動産会社の口コミを調べたり、周囲の人の意見を聞いたりと必要な情報を収集し、十分な検討を経て、最終的な決断にいたるのではないかと思います。
不動産会社の立場から考えれば、購入者の不安や悩みを解消できるよう、積極的にサポートしていく必要があるでしょう。

のれん分けも同様です。
のれん分け制度を導入したからといって、すぐに独立希望者はあらわれません。
すぐにあらわれたらむしろラッキーと考えるべきです。

安定的に独立者を輩出していくためには、独立希望者が、「のれん分けによる独立」という選択をできるよう、本部がその決断を積極的にサポートをしていく=独立者の輩出を“線”で捉える必要があるのです。

なお、のれん分け対象者に必要な働きかけについて詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

のれん分けに必要な経営者と対象者の「対話」とは

(2)独立者の安定的な輩出に向けたステップ

それでは、安定的に独立者を輩出していくために、本部企業はどのような取り組みを行うべきでしょうか。
弊社では、以下のステップで進めていくことを推奨しています。

①のれん分け制度の具象化

まずはじめにやるべきことは、のれん分け制度を構築して、独立までのステップや条件、必要資金、収支シミュレーションといったのれん分け制度の詳細を明示すことです。

よく「今いる従業員がのれん分けによる独立の意思を固めてから、のれん分け制度を構築しよう」とお考えになる方がいらっしゃいます。
しかしながら、この考えは前提条件が完全に誤っています。

従業員の視点から考えればわかることですが、のれん分けによる独立は自分の人生を左右する重要な決断ですから、明確な形がないものを選べるわけがありません。
ですから、のれん分け制度が明確な形になっていない状態で従業員がのれん分けによる独立の意思を固めることなどありえないのです。

そもそも、のれん分け制度を成功させるためには、本部企業には相応の努力が求められます。
弊社の経験則で申し上げても「●●さんがやるならのれん分け制度をつくろう」といった条件付きでのれん分け制度の導入を考えているのであれば、上手くいかない可能性の方が高いですから、やらない方がよいです。

のれん分け制度で安定的に独立者を輩出したいと考えるのであれば、本部企業が覚悟を決めて、のれん分け制度の具象化に取り掛かる必要があるのです。

②のれん分け制度説明会の開催

のれん分け制度を具象化したら、のれん分け制度の詳細を全従業員に共有するための説明会を開催します。
ここで大切なポイントは、制度の細かい内容理解してもらうことよりも、全体像を伝えてのれん分け制度による独立という選択肢に興味をもってもらうことに力点を置く、ということです。

のれん分け制度を正しく理解するには専門的な知識が必要です。
一度の説明で理解してもらうことなど不可能でしょう。
ですから、説明会の段階では興味を惹くことを目的として、のれん分けに興味をもった人材を次のステップに誘導していきます。

③起業に向けた教育

のれん分け制度説明会でのれん分けによる独立に興味をもった従業員を対象に、キャリアの考え方や起業に必要な知識をテーマとした勉強会を開催します。
6ヵ月から1年間、月1回等の頻度で定期的、継続的に開催していくとよいでしょう。

勉強会を通じて、のれん分けによる独立に必要な知識の習得と動機付けを行い、のれん分けによる独立が、より具体的な選択肢となるよう従業員を教育していきます。
この勉強会を実施することにより、独立者輩出の取り組みが“点”から“線”に変わります。

なお、店舗ビジネスにおけるキャリア研修について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。

のれん分け制度を導入している会社が実施すべき“キャリア教育”とは

④独立者の輩出

教育が完了し、独立に対して一定のモチベーションを有する従業員に個別でアプローチします。
独立へのモチベーション度合いは、勉強会の最終回にアンケートを取って確認するとよいでしょう。

ここまでたどり着いた人材は、のれん分けによる独立予備軍です。
本部から積極的に従業員の背中を押すアプローチをとることで、最終的な決断を後押しします。
例えば、既存店によるのれん分けを行う場合には、具体的な収支シミュレーションを示すことなどが考えられます。

まとめ

以上、のれん分け制度で安定的に独立者を輩出するために取り組むべきことをご紹介しました。

のれん分けによる独立は従業員の人生を左右する大きな決断であり、一朝一夕で独立者を輩出することはできません。
具体的な形を示し、時間をかけて教育していくことが、安定的に独立者を輩出する唯一の方法と心得るべきでしょう。

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