多店舗展開

自発的人材を育成するためにはじめに取り組むべきこと

コンサルティングを生業としていると、日頃からさまざまな人とお会いする機会がありますが、お会いする人を仕事の仕方という観点で見てみると、大きく2つのタイプに分けることができます。

自発的に行動しない人(非自発的人材)

決められたことを、決められた通り実行する人

自発的に行動する人(自発的人材)

一見解決策の見えない複雑な問題を捉え、積極的に解決策を考え、実行する人

どちらのタイプの人材も仕事を円滑に進めるためには必要です。しかし、仕事にはさまざまな業務があるとともに、現代の市場環境の変化や顧客要望への対応のためには、いつまでも同じ業務をしていては、会社は成長できません。事業成長を実現している中小企業経営者の方は、自発的に行動する方ばかりです。社内外の変化を見通して行動するため、常に先のことを考えているからでしょう。
一方、社内で働いている従業員には、どちらのタイプもいます。定型業務が多い業界は、非自発的人材の方が多いかもしれません。スーパーのレジや銀行の窓口業務などはそうでしょう。最近では、業務のIT化により、定型業務が増える傾向にありますので、無意識でいると非自発的人材が増えてしまいます。先日もある教育関連の企業の経営者の方とお話ししたところ、「顧客管理システムを導入して、顧客情報の検索や共有化は便利になったが、登録する情報が画一的になり、入力で仕事が終わったと社員が感じているようだ。本当は顧客の個別の課題を解決するために使いたいのだが」と話していました。

社内の人材を自発的人材に変化させる

この経営者のお考えのように、環境変化が急速に進む中では、通り一遍のサービスではすぐに陳腐化してしまいます。その時々に顧客が抱えている本質的なニーズを探り、それを捉えたサービスを提供することが事業の発展に不可欠です。自社ばかりでなく、競合他社も同じように、顧客ニーズにどのように応えるか必死に考えていますので、一朝一夕に名案がでるものではありません。従来は、経営者や経営幹部が方針や施策を指示するトップダウン型でもうまくきました。ところが、これからは、顧客と接したり、サービスを提供したりする現場で働く従業員一人ひとりが問題意識を持って日々考えていることが重要です。そして、この多様な意見に耳を貸します。それには、従業員が決められたことを決められた通りに実行するだけでは、新しい発見がありません。現場の変化に注目し、一見解決策の見えない複雑な問題を捉え、積極的に解決策を考え、実行する自発的人材が求められます。会社の貴重な人材を非自発的人材から自発的人材に一人でも多く変化させることが重要です。

関心は、人を動かす

自発的人材に共通するキーワードは、能動的、積極的、中長期的、率先的、目的、創造性、先見性、改善などでしょう。このようなキーワードに該当するような自発的な人材に育てるのに必要なことは関心を持たせることです。顧客の購買プロセスを表現するときに、しばしばAIDMAという言葉を使います。顧客はまず、その商品・サービスを知り(Attention)、興味を持ち(Interest)、欲しいと思い(Desire)、記憶して(Memory)、購入します(Action)。顧客が商品・サービスを購入するには、その商品・サービスを知って、関心を持つことから始まります。誰に強制・命令されたわけではなく、顧客の自発的な行動です。従業員もまったく同様です。自発的に行動してもらうためには、関心を持たせる必要があります。

2つの関心に着目する

それでは、何に関心を持ってもらうとよいでしょうか?それは、“会社について”と“将来の自分について”の2つです。このどちらが欠けてもうまくいきません。“会社について”は、従業員が会社の理念や方針、目標、計画を理解している必要があります。何をすべきかわかっていなければ、行動につながりませんし、ただやみくもに自分がよいと思っていることをしてみても、会社や組織にとって望ましいとは限りません。会社の理念や方針、目標、計画に関心を持たせ、目的(ゴール)を共有することが大切です。
そして、“将来の自分”に関心を持たせます。人は誰でも自分の将来に強い関心を持っていますが、自分が将来この会社で働く姿に関心を持たせるのです。人が会社で働くのは、自分や家族のためであることがほとんどです。そこで、今の自分にこの会社で働く将来の自分を重ねさせます。これができると、一気に目的意識が醸成されます。

キャリア形成支援が関心を高める

それには、会社が従業員のキャリア形成支援をします。決められた仕事をすることで、応分の給料がもらえることは誰でもわかります。しかし、1年、3年、5年、さらにその先はどうでしょうか?この会社で仕事を続け、自分がどのように成長して、どのような役職につくことができるのか、その時に、目安としてどのくらいの給与をもらうことができるのか、を理解することで、仕事に対する接し方が変わります。これは子どもが欲しいのものために貯金することと同じではないでしょうか?子どもは、100円が手元にあれば、お菓子などを買ってすぐ使いたくなります。しかし、欲しい本やゲームソフトなどがあれば、欲しいものを買う、という目的意識ができますので、自発的に貯金をすることができるようになります。


このように、従業員を自発的な人材にするためには、はじめの一歩として、“会社について”と“将来の自分について”の2つに関心を持たせることです。従業員が、目的意識を持って、行動することは、会社にとっても個人にとってもメリットがあります。自発的人材を一人でも多く増やすため、経営者の方が、「従業員の関心」に関心を持ってみてはいかがでしょうか?

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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