多店舗展開

自発的人材育成を加速させるコーチングとは

「部下と自発的な行動について話はしているのですが、あまり伝わっていないようで・・・」
「部下に指導しても、なかなか自分で動いてくれなくて・・・」

上記は、飲食店を複数店舗展開する経営者からのご相談ごとです。
人手不足が深刻化するなか、自社の人材を育てるとともに、社外から意欲の高い人材を採用することが、企業存続に不可欠です。そのために、多くの企業では、働きやすい勤務形態の整備や人事評価制度の導入などを進めています。これらの新しい仕組みを活用して社員が働きがいを感じる職場にすることが現代の企業に必要なことといえますが、人事については、仕組みを導入するだけでは十分ではありません。人事評価や人材育成などの人事制度は「機能させること」が必要で、その基本となるのは対話です。上司と部下が円滑にコミュニケーションすることが、これらの仕組みを活かすことにつながります。

対話を通じて、気づきを与えるコーチング

社員が活躍できる職場をつくるには、対話が必要です。上司は社員個別の事情を把握した勤務計画の作成、人事評価やそのフィードバック面談、自発的人材におけるキャリア形成支援やスキルアップ支援などの際に、常に部下と対話を実施します。人事評価や人材育成においては、対話を通じて、将来のキャリアや課題、取り組むべきことなどの気づきを与えることが必要です。
定型的な作業指導であれば、作業経験者にとって、対話はそれほど難しいものではないでしょう。しかし、会社の成長に必要な自発的人材を育てるためには、同様の対話の仕方では、効果がでるとは限りません。なぜなら、作業指導は、作業マニュアルに従って、作業内容や手順、注意点などを伝え、作業を修得させることが目的であり、基本的にコミュニケーションが経験者から未経験者へ一方向だからです。そこで、対話を通じて、部下の自発性を高めるコーチングという手法をご紹介します。

コーチングの特徴

コーチングはアメリカで開発され、2000年くらいから、日本の会社でも部下やリーダーなどの人材育成に活用されてきたようです。「答えは部下の中にある」との考え方のもと、自発的に考えて、行動し、目標達成を促す人材開発手法です。
リーダーは、担当者と異なり、すべての業務がマニュアル化されているわけではなく、顧客対応や業務改善、問題解決など臨機応変に行動することが求められます。このような自発的に行動できる人材を育成するためには、作業指導のような一方的なコミュニケーションではなく、部下の考えや能力、可能性を引き出すような双方向のコミュニケーションが必要となります。そのため、コーチングが自発的人材育成に有効と考えられます。
コーチングの特徴は、主に以下のような点です。

上司と部下は対応な関係にある。

コーチングの主体は、部下にあります。対話を行う上司は気づきを与えることが目的で、職場の上下関係と区別して、対等な関係でコーチングを行います。

上司は対話を通じて、部下が多面的視点で考え、気づきを得られるように支援する。

「答えは部下が持っている」前提のもと、上司が取り組み方を指示するわけではありません。部下の考え方や行動から、上司が「なぜそう思ったの?」、「なぜそうしたの?」、「ほかの方法は考えられるかな?」、「やってみてどうだった?」などと自発的に気づきを促す会話をします。

部下の性格や個性を理解し、一人ひとり個別に指導する。

考え方や行動は人それぞれです。上司が複数の部下に同じ言葉をかけても部下から返ってくる回答は異なります。上司にとっての正解を求めるのではなく、部下の話を傾聴し、受け入れる姿勢を心掛けます。

ティーチングとコーチングの違い

次に、部下を指導する際によく用いられるティーチングとの違いを説明します。簡単に表すと、以下の表1のようになります。

表1 ティーチングとコーチングの違い

項目 ティーチング コーチング
関係 上下 対等
主体 上司 部下
方法 指導 支援
手法 指示 対話

ティーチングとコーチングは、指導法としてどちらが優れているかではなく、手法の特徴を理解して、状況に応じて使い分けることが重要です。例えば、知識や能力が不足している場合は、ティーチングにより、先輩社員のOJTで業務を身につけさせることや、集合研修に参加させて、専門知識を習得させることが有効です。一方、コーチングが効果的な場合は、意欲がある程度あり、リーダーなど現場を任せられるようにしたい場合や、問題発見や問題解決を自発的に取り組ませたい場合などです。コーチングとティーチングを使い分けることで、部下のスキルアップ支援が充実し、人材育成の幅が広がります。

コーチングを自発的人材育成に活かす

決められた業務を修得させるには、具体的な指示をし、現場で経験を積ませることで、スキルの上達が図れます。一方、自発性を高める際には、上司が言葉で、「自発的に考え、行動しよう」と声をかけても、部下はどのようにしたらよいか、戸惑ってしまう場合が少なくありません。また、その様子を上司が見ると、もの足りなさから、つい指示が多くなりがちです。次第に上司と部下の気持ちにギャップが生じ、熱心な指導が逆効果になってしまいます。
ティーチングもコーチングも、人材を育成して組織の目標を達成するという目的は同じです。目的を達成するために、この2つの方法を活用して、効果的な人材育成をしましょう。自発的人材育成には、コーチングの考え方はとても有効です。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)


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