(1)経営計画を事業の成長につなげる
経営計画と聞くと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?私がお会いした経営者の中でも「当社には必要ない」、「作らなくてもわかる」、「作っても意味がない」とお考えの経営者の方もいらっしゃいました。日頃から経営者自ら現場を走り回り、顧客訪問や接客、人事対応、経理、金融機関との折衝などで多忙な中、経営計画を作成することは容易ではないかもしれません。
しかしながら、環境変化が急速に進む現代において、変化することの重要度が増しており、故にその行動のきっかけとなる経営計画策定の重要度も増しています。 事業を継続させていくためには、計画を策定して自ら変化を起こす行動をすることが大切です。 市場や顧客などの外部環境はめまぐるしく変わり、今までやってきたことが将来も通用するとは限りません。言い換えれば、市場が変化している時こそ、事業を成長させるチャンスがあります。
そこで、経営計画を作成してみましょう。「作らなくてもわかる」とお考えの経営者は、自ら社内外の事情に精通し、すべてを把握しているからだと思います。それでも、経営計画を作成してみると、普段手が回らない新規顧客獲得の重要性に気づいたり、新たな商品・サービスの開発に弾みがついたり、思わぬ発見があるものです。
また、経営計画は作っておしまいではありません。「作っても効果がない」とお考えの場合は、作った後の活用について工夫してみましょう。有効な活用方法の一つは計画と実績の比較です。例えば、今月の売上げは計画通りでしたか?未達成だった場合は、来店客が減ったのでしょうか?近隣に競合店が開店したからでしょうか?品揃えが問題だったのでしょうか?計画にもとづいて振り返りを行うことで、次の対応策が明確になります。分析した結果に対して計画を見直すことで、次の対応策の成功確率を高めましょう。
(2)経営計画を作って不安に対応
大阪でB級グルメとして親しまれている串カツで、今や関東地方を中心に国内で200店舗を展開している専門店「串カツ田中」をご存じと思います。当社は、家賃の安い住宅地の居ぬき物件、丸椅⼦の客席、内装も自ら手掛け、出店費用はたったの350万円で創業しました。2008年に東京・世田谷に1号店をオープンするとすぐに人気になり、2015年には100店舗を超え、それからわずか2年半で店舗は倍増しました。そんな「串カツ田中」の社長である貫 啓二氏は、成功の秘訣として「不安経営」だと話します。10年、20年先も存続できる会社であるためには、今日、何を改革しなければいけないかを考え、業界初のほぼ全店全席禁煙や30回以上のソースのリニューアルを行ったそうです。会社の成長のステージや環境の変化によって、課題は変わりますが、先を見て変化することをやめなければ、成長し続けることができる、と語っています。(出典:日経ビジネス 2018年9月11月号)
つまり、経営計画を策定することが、会社を変化させる行動のきっかけになるということです。環境変化が急速に進む中、変化することの重要度が増しており、その行動のきっかけとなる経営計画策定の重要度も増していることが、この事例からわかります。
(3)経営計画の構成
経営計画の中身についてご説明します。経営計画に決まりはありませんが、一般的に以下の様な項目で構成されます。
表1 経営計画の構成
経営理念 | 経営者の企業経営に対する「思い」、「基本的価値観」、「企業の存在意義」などを明文化したもの |
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経営方針 | 経営理念にもとづく事業展開する上での目指すべき方向。事業ドメイン(商品やサービスを展開する市場)を示したり、定性的なものや定量的なものがある |
外部環境 | 会社を取り巻く政治や経済などのマクロ環境や対象市場の規模や成長性、顧客や競合他社の状況などミクロ環境。機会や脅威を把握し、ニーズをつかむことが重要 |
内部環境 | 自社の現状、強みと弱みの分析。強みと弱みは、競合他社と比べての優劣を意識する。人材や組織体制、営業力、経営者のリーダーシップなど |
戦略と具体的施策 | 経営方針、外部環境と内部環境を踏まえた上で、取り組むべき課題を計画策定期間に達成すべき目標とともに具体的に設定する |
損益計画 | 売上、費用、利益計画や、投資、資金計画を定量的に作成する |
経営計画作成に一定の時間は必要ですが、難しく考えすぎず、まず上記の項目を網羅して手を動かしてみましょう。各項目のポイントについては、次回以降の記事で順番に解説していきます。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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