多店舗展開

人事評価制度の導入方法

(1)効果的な人事評価制度の必要性

厚⽣労働省による7⽉の有効求⼈倍率(パート含む)は、全体で1.63倍と44年ぶりの高水準で、職業別では飲⾷物調理が3.21倍、接客・給仕が3.93倍となっており、外食産業の労働力不足は大変深刻です。このような状況の中、魅力のある会社にするためには、「働きやすさ」や「働きがい」のある職場にして、従業員満足度を向上させることが必要です。それには、従業員の成果に応じた公平な評価をするための、しっかりした人事評価制度を設計し、円滑に導入することが重要です。そこで、従業員への周知など、効果的な導入方法をご紹介します。

(2)人事評価制度導入の流れ

人事評価制度を設計するには、まず経営方針を確認して、構想を固めます。次に、評価項目や評価基準の設定にあたり、社内での経営幹部との摺合せやコンサルタント・中小企業診断士などの専門家のアドバイス活用、競合他社の調査、必要に応じて、従業員へのヒアリングを行い、運用するための評価シートを作成します。そして、人事評価結果の給与や昇進など処遇への反映や人材育成制度に活用するため、他の人事制度と連携を図ります。経営方針の決定・確認からここまでの段階で、3か月~半年・1年位の時間はかかる見込みです。目指すべき人事評価制度と現状の自社の問題点を明確化して、自社に合った制度にしましょう。
そして、導入する前に従業員に対して、説明会を行いましょう。従業員にとっては、直接自身の処遇に関係する内容ですので、非常に関心が高いと言えます。人事評価制度の導入により、従業員のモチベーションが向上し、従業員の行動が変わることにつなげるため、導入方法は、制度設計と同じくらい重要です。従業員に、人事評価制度の内容をしっかり伝えます。

図1 人事評価制度の導入イメージ

説明会で、従業員に伝える内容をご紹介します。説明会を開催することが望ましいため、開催する前提として、説明会の流れをご説明します。表1 人事評価制度の説明会の流れをご覧ください。

表1 人事評価制度の説明会の流れ

項目内容
経営方針経営理念や経営方針を説明します。会社の目指すべき方向をしっかり従業員と共有することが大切です。社長自ら説明することが望まれます。
事業計画経営方針に基づく、事業計画もしくは、将来にわたる中期計画を説明します。市場や競合他社状況などの外的環境と自社の強み・弱みや売上げなどの財務状況、具体的な施策を説明します。具体的な施策の1つとして、人事制度や人事評価制度の導入、もしくは、見直しなどを折り込むようにして、全社の計画との一貫性を持たせます。
人事評価制度人事評価制度の内容を説明します。説明会の本旨です。特に、現在の制度との違いや新制度導入にあたって移行期間の有無・対応などについては確実に説明が必要です。
導入スケジュール導入するタイミングを説明します。段階的に入れる場合は、将来における予定も明示するとわかりやすいでしょう。
質疑応答説明と同時に質疑を行うことで、従業員の疑問を解消し、理解を深めます。ただし、説明会などでは質問がでない場合が多いため、個別に質問を受け付けるなどの工夫が必要です。

 新しい人事評価制度導入により、従業員は給料を減らされるのではないか、ということを一番気にするかもしれません。そのため、現状より良くなる制度であることや移行期間があること、公平で客観性がある制度であることなどをしっかり説明します。従業員によく理解してもらえないと、会社への不信感につながる恐れがありますので、導入は用意周到に進めましょう。従来の制度に比べて、あまり評価されなくなる従業員などは新しい制度に不満を持つかもしれません。全員が満足する制度の導入は難しいですが、そのような従業員には、コミュニケーションをしっかりとります。話を直接聞くことで、不満が和らぐケースもあります。多くの従業員に理解してもらえることが、人事制度の浸透や導入目的である従業員定着率や満足度の向上につながります。

(3)人事評価制度構築による人材確保

人事評価制度導入のイメージができましたでしょうか?頑張った分だけ、公平に評価される制度と理解されれば、従業員の行動が変わります。また、人材募集にあたっても、人事評価制度導入により、「働きやすさ」と「働きがい」のある会社であることを、求職者に対して、しっかりアピールすることができるようになります。人手不足により企業間競争が激しくなる中、人材確保に効果がある人事評価制度の導入を検討してみましょう。導入にあたり、不明な点があれば、店舗展開のコンサルタントや中小企業診断士などの専門家に相談してみてください。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

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