部下に仕事をこなしてもらうには、しっかり理解させて必要な教育訓練を受けさせなくてはならないでしょう。
また、少しの指示で部下に的確に動いてもらうには、部下自身がやる気になっていて、自発的に考えて行動する状態が必要です。
そのためには、まず部下をやる気にさせて、行動のきっかけを与えることにフォーカスします。
そこで、部下との対話を円滑にするために大切な「初めの2フレーズ」についてご紹介します。
これらの対応により、部下は話を聞いてもらった満足感と次の行動のきっかけを得ることができ、自発的かつ積極的に行動できるようになります。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)部下の作業にイライラしてしまう経営者
「部下に仕事を理解させて、テキパキ仕事をやってもらうのはやっぱりあまり簡単ではないですね」
先日サービス業の経営者の方からこのようなお話を伺いました。
優秀な人材が集まりづらいなか、この方は、部下を早く一人前に育て、少しの指示で動けるようになってもらい、人手をあまりかけずに業務を回したいと思っています。
そのため少数精鋭の会社を目指し、業務の効率化や改善とともに、人材育成に力を入れています。
また、この方は頭の回転も速く、手先も器用です。
ときどき、うまく仕事を進めることができない部下に対して、よくないとは思っていてもイライラしてしまうそうです。
(2)部下の行動が消極的になってしまう背景
大学の教員でもスポーツの指導者でも、能力の高い人が教えることが得意とは限りません。
特に何事もなくこなせる人ほど、できない人の気持ちがわかりづらいものです。
何を理解できていないのか、どこがわからないのかを想像して、解決できる手段をうまく伝えることができないのです。
部下に仕事をこなしてもらうには、しっかり理解させて必要な教育訓練を受けさせることです。
また、部下に少しの指示で動いてもらうには、部下がやる気になっていて、自分で自発的に考えて行動する状態になっていることが必要です。
そのためには、まず部下をやる気にさせて、行動のきっかけを与えなくてはならないでしょう。
そこで、この経営者の方に、部下とコミュニケーションする際に「これだけは抑えておいてほしい」というポイントをお話しました。
それは、次のような内容です。
無意識の否定語に気をつける
「でも」や「いや」、「おいおい」が口ぐせになっている人をしばしば見かけます。
口にしている本人は特に否定するつもりもなく、会話のきっかけとして、軽い気持ちで、無意識に言っているのでしょう。
しかし、これらは明らかに「否定を意味する言葉」です。
言われた方は、自分が言ったことに対して、相手はネガティブに受け取ったな、と反射的に感じます。
これが1回くらいであれば問題ありませんが、習慣的にしかも上司から言われると、部下は自然とその上司に話しかけることを避けるようになります。
人は誰でも否定されると気持ちが消極的になり、心を閉ざしてしまうからです。
そして自分が思っていることや考えていることを話したくなくなってしまいます。
結果的に、わからないことやできないことがそのままになり、消極的な待ちの姿勢になります。
要求に対し、どのように行動すればよいか伝える
また部下に対し、どのように行動すればよいか、その内容を具体的に伝えていますか?
要求だけを伝えることがありませんか?
このような状況は、特に育成中の部下に対するコミュニケーションとしては、不十分なのです。
部下は上司の要求自体は理解したかもしれませんが、業務の内容や進め方がわからない場合や、上司が知らない別の課題を持っている場合など、要求に応えようという気持ちにならない可能性があります。
要求を伝えるだけでは、仕事ができるようには決してなりません。
もちろん、部下の成長のためには1から10まですべて伝える必要はありませんが、部下がまずどのように行動したらよいか、具体的に理解させる、もしくは考えさせ、最初の行動がとれる状況にします。
(3)対話を円滑にするには初めの2フレーズ
これらを整理すると、部下との対話において大切なのは、部下に発する初めの言葉とその後に続く伝える内容です。
まずは肯定語で会話を始める
部下からの言葉に対して、一言目のフレーズは必ず「そうだね」や「なるほど」などの、肯定を意味する言葉にします。
たとえ、部下の発言に同意できなかったとしてもです。
内容への同意の可否ではなく、まず部下の発言を受け止める姿勢を示すことが重要です。
これにより会話がスムーズにスタートします。
逆に否定語から入ってしまっては、その後の対話も終始ぎこちないものになります。
否定語から入ると、相手は反論されている、攻撃されている、責められていると感じ、心を閉ざし自分を守る態勢に入るからです。
続けて具体的な行動を伝える
次に続ける言葉として、具体的に行動できる内容を伝えます。
対話の後、すぐに部下が動けるようにすることです。
「なんでできてないの?週末の開店までにこれを仕上げておいて」と疑問や要求を言うだけでは、部下は戸惑います。
週末の開店までに仕上げること、という目的を伝えたうえで、具体的に「○○を準備して○○の方法でやればいいね」という感じで行動内容を示します。
そして、質問があれば答え、課題があれば聞いて、部下が行動できるようにします。
他の業務と重なっていれば、依頼した仕事の一部は、翌日でも構わないかもしれません。
仕事に優先順位をつけたり、時間とコストのどちらを優先するか判断するのは、上司の役目です。
たったこれだけです。
会話のはじめの2フレーズに気を配ることで、コミュニケーションが円滑になり、部下の理解や対応が変わるのです。
(4)少しの対話の工夫で部下をやる気にさせ積極的に行動させる
「こんなことか」とお思いになったかもしれません。
しかし、口癖になっている言葉や習慣となっているしぐさに、人は自分では気づけないものです。
特に無意識の否定語が口癖になっている場合や無意識に相手の主張に対して批判や否定から会話に入る癖のある人は、相手に対して常に「小さな攻撃」を繰り返しているコミュニケーションスタイルが身についてしまっています。
自分がどのような対応をしているか振り返るとともに、対話の際に、これらのポイントを頭の片隅において会話をするだけで、相手との意思疎通は格段によくなります。
望ましい対応方法が習慣化すれば、いつ誰に対してもできるようになります。
繰り返しになりますが、まず相手のことを受け止めることです。
それには、否定語ではなくて、肯定語を使います。
そして、疑問や要求だけで終わらせず、目的や理由を述べたうえで、今後の具体的な行動内容を伝え理解させます。
これらの対応を毎回確実に行うことで、部下は話を聞いてもらった満足感と次の行動のきっかけを得ることができ、やる気が出て、業務の飲み込みがよくなるとともに、積極的に行動できるようになるのです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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