コロナウィルスのワクチン接種も浸透しつつありますが、感染力のより強い変異株の出現など、ワクチンを接種すればすべてがコロナ以前に戻るかというと、そう簡単にはいかないようです。
これからの社会では企業においても会社の最も重要な経営資源の1つである人材の育成に注力し、経営環境の変化に対応することがいっそう求められます。
その際に、社員も会社も目指す人材育成の姿は、「自発的に行動できる人材」です。
そこで、今回は、社員が継続して自発的に行動するために「内発的な要因に働きかけるポイント」を説明します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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(1)働き方の価値観が大きく変化している
「うちはコロナの影響をまともに受けなくて本当によかったと思っています」
これは先日ある物流関連の会社の幹部の方が発した言葉です。
今回のコロナ禍が深刻になる状況でも物流業界はE-Commerce(インターネットを利用した買い物)の大きな伸びにより好調さを維持しています。
この言葉を聞いたとき、これはふと出た本音であると私は思いました。
確かに、短期的には売上げなどの業績は大きな影響を受けずに済んだと思われます。
しかし、だからと言って喜んでばかりはいられません。
売上げのように目に見える影響とは別に、目に見えづらい影響がこのコロナ禍で着々と進行しているからです。
コロナウィルスによる影響が人々のライフスタイルや働き方を変化させつつあります。
コロナ以前は、例えば在宅勤務などのリモートワークを試験的に行ってはいても正式に導入する企業は多くなく、働き方のうちの1つと言えるほどではありませんでした。
ところが、業界や職種によってはリモートワークが当たり前になってきています。
このような大きな変化を、冒頭の幹部の方のように、自分の業界はリモートワークと関係ないからと言って、他人事のように眺めていてはいけないでしょう。
なぜなら若い人を中心に、リモートワークなどのフレキシブルな働き方ができない仕事や業界は敬遠される可能性が大きくなってきたからです。
コロナ禍で一時は有効求人倍率も下がりましたが、日本が少子化に直面し長期的に人材不足であることに変わりはありません。
しかも、コロナの影響で明らかになりましたが、不確実性の高い社会では、会社に頼らず自律できるスキルを身につけ、自らをより成長させたいと考える社員が増えてきました。
(2)多くの会社が自発的人材育成に力を入れ始めている
先日ある専門誌を読んでいたところ、社内の人材育成に力を入れている会社が増えている調査結果を目にしました。
日本国内においてもコロナウィルスのワクチン接種は浸透しつつありますが、一方で感染力のより強い変異株の出現など、ワクチンを接種すればすべてがコロナ以前に戻るかというと、そう簡単にはいかないようです。
これからの社会では企業においても会社の最も重要な経営資源の1つである人材の育成に注力し経営環境の変化に対応することがいっそう求められます。
そのことを経営者の方が強く感じ、社員の人材育成に力を入れるようになったのでしょう。
その際に、社員も会社も目指す人材育成の姿は、自発的に行動できる人材です。
社員が自ら考え行動できるようになれば社員と会社両方にとってメリットがあります。
自発的に考え行動するということは、上司や先輩が一つひとつ指示をしなくても部下が行動できるということです。
しかし、これは簡単なことではありません。
自発的とは外部からの指図ではなく、感情の内面から出てくる行動だからです。
自発的に行動しよう、と声をかけても自発的には行動できません。
(3)自発的人材育成に大切な内発的な要因への働きかけ
そこで、社員が継続して自発的に行動するために内発的な要因に働きかけることが必要です。
内発的な要因とは、大きく分けて好奇心と期待です。
好奇心へ働きかける
好奇心の持ち方は、人によって大きく異なりますので、いくつかのポイントをご紹介します。
まず知識欲には、拡散型か追求型か、という特徴による分類があります。
拡散型とは、幅広くさまざまな知識を得たいと考えるタイプです。
一方の追求型は、ものごとを本質まで深く見極めようとします。
どちらのタイプとも、まずは本人がとりたい行動を決めさせます。
自然と好奇心のあることを選択します。
うまく思いつかない場合は、部下と一緒に書き出すのを手伝いましょう。
書き出すことで発見があるはずです。
そして、課題の設定をします。
目標や制約を与えられることで、どのように達成したらよいかなど、それに対する関心が高まります。
問題解決の考え方のフレームワークを伝えることも効果があります。
経験則から法則を見つけ出す帰納法や事象に法則をあてはめ、結果を推論する演繹法などです。
その際に、前述の部下のタイプによって、課題の幅や与えるタイミング、追求する問題解決の深さを調整して、好奇心を刺激します。
期待を示す
次に、期待です。
人は人の期待に応えたいと自然に思っています。
期待に応えるということは、仕事に対する充実感や周りからの信頼感を得ることにつながり、自尊心を高めることができます。
若い社員は少子化のなかでより個人が注目されて育ちました。
そのため、自尊心にアプローチすることは、内部の感情を大いに刺激し、仕事にやりがいや誇りを感じさせ、その気持ちを持続させる助けになります。
上司としては、到達してほしい姿や達成してほしい目標を伝え、それにムリがないようにチャレンジさせます。
日頃から行動に気を留め、意識して声掛けを増やし、注目している姿勢を態度で示すことで、期待されていること、注目されていることが伝わり、自ら動こうとする内発的な気持ちが高まることでしょう。
(4)自発的とは気持ちの内面から起こってくる興味、関心、意欲による行動
このように内面の感情に働きかけて動機づけを高めることが自発的な行動には必要です。
自発的に行動しようと言うだけでは決して自発的に行動できるようにはなりません。
また、金銭などの直接的に効果がある外発的な動機づけでは長続きしません。
よって、指示や外発的動機づけに頼るのではなく、部下の気持ちから湧き上がる内発的動機づけに働きかけます。
自発的とは気持ちの内面から起こってくる興味、関心、意欲による行動です。
社員が自らのこれらの感情に気づいたときに、自発的に行動できるようになります。
そのために会社はしっかり社員を支援しましょう。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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