昨今のコロナ禍が拍車をかけましたが、現代は、不確実性の世の中であるとしばしば言われます。
不確実性とは、文字通り、将来を見通しづらいことを意味しています。
株価や為替の乱高下や世界中での気候変動による大きな影響もその1つでしょう。
特に経済的には、政治的に資本主義の国が増え、ヒトやモノが国境を越えて自由に動くようになり、経済や市場環境において、グローバル化が加速したことがその背景にあるようです。
結果として、各国や各地域における情勢不安や保護主義台頭による政治の不安定さが直接各国に影響するようになりました。
同時に昨今の情報技術の発展がこれを一層後押ししています。
今回のコロナウィルスの広がりも、グローバル化と無縁とは言えません。
不確実性とは、将来が予測不可能であることを端的に表しています。
今回は不確実性の高まりに伴い、経営者としてのキャリア構築について考察します。
なお、これから多店舗化をお考えの方は、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
(1)経営者として歩んでいく人もキャリア構築が必要な時代
このような不安定な時代を反映してか、多くの人がキャリアについて高い関心を示すようになりました。
不確実性の時代を肌で感じ取っているのでしょう。
ある成人男性・女性のキャリアに関する調査によると、1つの会社で長く働くことは希望しているが、必ずしも1社にこだわっているわけではなく、会社よりも職業(キャリア)により重きを置くようになっています。
また、自主的にキャリアを築こうとする姿勢も伺え、研修やセミナーに参加するとともに、資格や語学能力の取得にも積極的に取り組むようになっています。
また、組織やグループで成果を出せるようにコミュニケーション能力を重視する傾向もあります。
そして、これらの行動の裏側には、やはり自分の将来のキャリアについて、強い不安がありました。
このような気持ちは、経営者の皆さんもお持ちではないでしょうか?
雇用されても独立しても、この不確実性の時代でビジネスをすることに、変わりはありません。
さらに、独立して会社を経営するほうが、会社や組織に属することよりもチャンスとリスクの責任が自分に大きくのしかかります。
先日お会いした会社を企業したばかりの30代の女性経営者の方は、今後経営者としてどうやって自分のスキルを高めるかを、真剣に考えていらっしゃいました。
従来の経営者であれば、キャリアを計画的に築こうとするより、会社を経営しながら多くの経験を積んでいこうと考えていました。
昔商店街によくあった定食屋のおやじさんは、どこかで調理や接客の専門能力を高める訓練や受けたわけではありません。
経験でお店を切り盛りしてきました。
なぜこれが可能だったかと言えば、市場が成長していて、常に需要が供給を上回っていたからです。
実のところ、経営者の経営能力不足を市場の成長が隠していたのです。
このような経営者は、現代では定食屋を成功させることができないのは明らかです。
不確実性の時代では、情報伝達のスピードは速く、顧客ニーズは刻々と変化します。
現代では、惰性や思いつきで経験を積んだだけでは、会社を経営することは難しくなりました。
計画的にキャリアを積まずに事業を成功させることができるほど、容易な市場環境ではありません。
従って、経営者として歩む方であっても、厳しい競争市場で通用するキャリアを積極的に築くことが必要なのです。
(2)キャリア構築のためにはじめに考えたいこと
それでは、具体的にキャリアをどのように構築すればよいのでしょうか?そのための大切なポイントをはじめに1つご紹介します。
それは、“自らの強みを徹底的に強化すること”です。
この場合の強みとは、ライバルとする人やお店と比べての優位性のことです。
経営者として歩んでいくにあたって、これだけは絶対人に負けない、というモノを手に入れましょう。
それは、秘伝の熟成肉の作り方や海外で学んだスパイス料理の極意などの調理法かもしれません。
または、貴重な材料の独自の仕入れルートかもしれませんし、お店の雰囲気づくりやお客様を満足させるコミュニケーションといったホスピタリティかもしれません。
激しい競争市場で生き残っていくために、これだけは1番であるという強みを磨きましょう。
これがとがっていれば、とがっているほど、より顧客ニーズに刺さります。
とがることで、ターゲット顧客が明確になったり、少ない経営資源を集中できるようになるからです。
しかし、これによりターゲット顧客層が絞られてしまうのではなかと不安になるかもしれません。
筆者は心配はいらないと考えます。
“何でも屋”になってしまうほうが、他店と差別化できず、多くの飲食店の中に埋もれてしまいます。
そして、大切な自信をなくしてしまいます。
はじめの頃は、多くの顧客は貴店のことを知りません。
一般大衆を相手にしてもなかなか気づいてもらえません。
貴店の強みに強い関心を持っている人や新しもの好きな人に興味をもってもらい、これを突破口にして、次の段階で店舗と経営者自身を図るのです。
(3)自分の強みとしっかり向き合う
このように、不確実性の中でも生きていける体幹をはじめに鍛えます。
例えば飲食店であれば、調理と接客の経験や資金繰りなどを中心に、キャリア構築を考えがちです。
もちろん、これらは、経営に必要な知識や経験であり、後に習得が必要となるものです。
しかし、はじめから職種の“オールラウンダー”になる必要はありません。
厳しい市場環境でも生き残っていくために、強みを磨くことで経営者として歩んでいくための「自信」と「覚悟」を手に入れるのです。
揺るぎない「自信」と「覚悟」があるからこそ、将来困難な状況に直面しても、負けずにやっていけるのです。
計画的にキャリアを構築することは、経営者として歩んでいく方にとっても必要なことです。
そこで、キャリア構築の前段階として、何が自分の強みで、何を武器にして市場で生き残っていくのか、じっくりと考えてみてはいかがでしょうか?
これが、強みを磨く次への一歩につながり、その後のキャリア構築、将来の店舗経営に役立つことになるに違いありません。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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