先日お会いした飲食店の経営者の方は、新型コロナウィルスの影響がいつまで続くのか、大変心配していました。
春先から売上げが大きく減り、夏を過ぎて少し持ち直してはきたものの、昨年のような繁盛する状態には戻っていません。
近い将来ワクチンが開発されれば、お客が元に戻り、売上げも以前の水準になることも予想されますが、一方、長引くコロナ禍において、人々のさまざまな意識や行動が変わったのも事実です。
元に戻ることもあれば、新しい考え方や生活様式として、志向が変わってしまったものもあるでしょう。
例えば、大人数の宴会などは、コロナ禍においては抑制されていますが、感染リスクがなくなれば、復活すると思われます。
一方、大皿での食事の提供などは、引き続き敬遠されるかもしれません。
また、働き方については、職場でする仕事と自宅でできる仕事が明確化されました。
コロナ禍における対策としてテレワークや時差出勤が活用されましたが、今後もある程度、継続されるでしょう。
このように、コロナ前から、衛生的でないとか、効率的でないと思われていたことなどが、コロナウィルスの影響により、あぶり出されました。
今回は、このような時代に求められるリーダーシップスタイルについて考察します。
なお、ポストコロナを店舗ビジネスが乗り越えるための「のれん分け制度」構築について、詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)社会の変化とともに変化する社員と会社
コロナウィルスの影響があぶり出したものは、働く人の意識にもあります。
コロナ前は、社会の成熟や少子高齢化、さらに好景気による人手不足もあり、働きがいを重視する傾向がありました。
これにコロナウィルスの影響が加わり、仕事に対する価値観や人材活用の流れが大きく方向づけられたように見受けられます。
例えば、社員の視点では、働く目的について、仕事の義務感やみんながそうしているからといった同調感から、個人の働きがいや会社に頼りきらない働き方へのシフト、また、価値観について、会社の決まりに素直に従ってきたものから、個人の権利や個の尊重を重視するようになってきているようです。
これらの社員の変化を受けて、会社も経営方針を共有したり、多様な意見がでる組織を目指したり、社員を支援したりして、徐々に変わってきています。
また、自社の利益だけではなく、社会への貢献を求める動きも出てきました。
(2)これから求められるリーダーシップスタイル
これらの変化に対して、求められるリーダーシップというのは、どういうスタイルでしょうか?
リーダーシップとは、さまざまな言葉の定義がありますが、筆者は「組織の目標を達成するために、チームメンバーがその能力を最大限発揮できるように促すこと」と考えます。
かつて経済が右肩上がりで成長し、自社の強みに特化した商品やサービスを提供していればよい時代がありました。
このような時代では、経営者が経営の方向性を明確に打ち出し、社員を指示通りに行動させ、組織としてアウトプットを最大化する支配型のマネジメントが適していました。
従って、このマネジメントを長く経験した一部の人たちの間では、経営者がバイタリティのある姿を示し、グイグイ引っ張っていくことが、リーダーシップのスタイルと思われていました。
しかし、それはリーダーシップの1つのスタイルであって、絶対的なリーダーシップの形ではありません。
一方、現代、そして、コロナ禍、もしくはポストコロナ(コロナ後)に想定される市場はそうではありません。
社会の成熟や少子高齢化の流れのなかで、コロナウィルスが与えた大きな影響により、人々の考える価値観が、特に、社会の安全、安心、環境、自然、人権(個)などSDG’s(国連が採択した持続可能な開発目標)の目標により近いものになってきているようです。
このような社会では、顧客の意識も個と社会を意識したものになりますし、働き手としての意識も働きがいや自立・自律、社会への貢献を求めるようになります。
何が正解か簡単に解を見つけることはできない時代です。
このような環境下では、従来の支配型リーダーシップスタイルではなく、支援型リーダーシップが求められるようになります。
支援型リーダーシップとは、リーダーが「社員一人ひとりを支える役割を果たす」ことで、組織目標を達成しようとすることです。
支配型リーダーシップでの自分を先頭として組織の成果を出すリーダー像と大きく異なります。
これからの会社は、多様な意見や可能性のなかから正解を導き出すために、経営者や幹部を中心とするのではなく、社員に主役を演じてもらわなければなりません。
社員が自分で考え、自発的に行動することで、この不確実性の高い世の中で、会社が成長していけるのです。
(3)コロナ禍の変化を活かして、会社を変化させる
そして自発的に行動する「自律型人材を育成する」には、支援型リーダーシップが適しています。
具体的には、リーダーは「社員一人ひとりの仕事や職場に対する考え方やキャリア観、人生観を尊重し、受け入れること」から始めます。
これにより、社員が受け入れられている、認められていると感じるようになり、リーダーに自分の考えを率直に話せるようになることで、社員が働きがいや生きがいをもって、働くことができるようになるでしょう。
前向きな気持ちが醸成されることで、顧客の声に耳を傾けたり、試行錯誤や創意工夫したりすることにつながるからです。
そしてこのような社員の積極的、自発的な思考や行動は、上司からの命令や指示では決して生まれるものではなく、会社や上司が社員を支援することで、次第に生じるものです。
コロナウィルスが引き起こした社会への影響は非常に大きいですが、コロナ禍で社会に起こっている変化をチャンスとして、会社の成長と人材育成のために、支援型リーダーシップに取り組んでみてはいかがでしょうか。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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