「加盟者に対する教育研修プログラムはどの程度備えておけばよいでしょうか」
これは過去に弊社にフランチャイズ本部構築のご相談に訪れたラーメンチェーンを営む経営者からのご質問です。
フランチャイズシステムの加盟者は、基本、本部が展開する事業の素人です。
もちろん、経験者だけを対象としているフランチャイズ本部もありますが、その場合、加盟対象者が自ずと限られてしまうこととなります。
フランチャイズ展開をスムーズに進めていくことを考えるのであれば、未経験者でも、早期に、一定水準の運営や管理が出来るよう、教育研修システムを整備しておく必要があります。
フランチャイズ展開が上手くいかない際のよくある原因の1つに“加盟店の運営品質が低い”ということがあります。
加盟店とはいえ、顧客から見れば同じチェーンです。
加盟店の運営品質の悪さは、チェーン全体のイメージ悪化につながってしまうのです。
そして、その加盟店の運営品質を大きく左右するのが教育研修システムです。
すなわち、教育研修システムは、フランチャイズチェーンの競争力を決定づけるものといえます。
妥協せずに、あるべきシステムを構築していくことをおすすめします。
なお、教育研修システムも含めて、フランチャイズ展開に必要な仕組みを詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
教育研修システムを大きく分類すると、開業前に実施するものと、開業後に実施するものの2種類に分けることができます。
それぞれに分けて考え方をご説明します。
コンテンツ
FC展開について詳しく知りたい方は、弊社YouTubeチャンネルも併せてをご覧ください。
開業前の教育研修
どのようなフランチャイズシステムであれ、大なり小なり、何らかの開業前教育研修を行うことでしょう。
そこで、フランチャイズ本部構築の際には、開業前研修の概要を決定し、必要なシステムを整備していきます。
概ね、以下のような内容を検討しておくとよいでしょう。
①研修の内容
本部の運営する業種業態の素人であったとしても、研修受講後には最低限のオペレーションができるよう、内容を作り込みます。
また、本部の理念や方針、ルール等についても、研修で触れておくべきでしょう。
一般的には、以下のような内容が開業前教育研修の対象となります。
- 展開するブランドの理念・コンセプト・創業の想い等の基礎知識
- オペレーションに関する基礎知識(実地指導含む)
- 店舗の販売促進活動についての基礎知識
- 店舗管理についての基礎知識
- 従業員の教育や雇用についての基礎知識
②研修日数・スケジュール
前項の研修内容を標準的なスケジュールに落とし込み、研修日数を設定します。
尚、加盟者から見れば、研修の期間は収入がなく、人件費だけが発生する赤字の期間となります。
研修期間はできる限り短くしてほしいものです。
とはいえ、研修期間を短くしすぎて必要な知識や能力を習得することが出来なければ、研修の意味がありません。
以上の本部と加盟者双方の立場を踏まえ、加盟者の負担と習得しなければならない能力・知識のバランスをとり、自社にとって最適な期間を設定しましょう。
尚、弊社がコンサルティングをさせていただく際に設定する研修日数は、営業日で10~30日間程度が目安となります。
できる限り20日以内にしたいところです。
実際には、そこに休日日数が加わる分、研修期間は長期化します。
③対象者と参加人数
加盟店の開業前に必ず受講しなければならない対象者及び参加人数を設定します。
オーナー又は店長に加えて、予備人員1~2名に参加してもらうことが一般的です。
エステやマッサージのようなサービス業の場合には、施術者全員を対象とするようなケースもあります。
自社が展開する業種業態の運営品質を担保するうえで参加すべき対象者は誰か、何名程度受けておくべきか、という観点で設定するとよいでしょう。
④料金
開業前研修に対して加盟者が負担する研修費を設定します。
金額は本部によってまちまちですが、おおむね1日単価を1~3万円程度で設定している本部が多いようです。
また、開業前研修を重ねていくと、研修期間内に必要な能力や知識を習得できない受講者が現れ、追加の研修が必要になることもあります。
その場合の費用も設定しておくとよいでしょう。
なお、追加研修費用は、前述した1日単価の2倍程度となることが多いようです。
これは、加盟者にとっては厳しいようにも感じますが、研修受講者の意識を高めることを狙ってのものともいえます。
参加者の本気度を高めるためのテクニックの一つといえるでしょう。
⑤検定
弊社では、開業前研修受講後に、研修内容の習得度を測るための検定を実施することを推奨しています。
検定に合格することを開業前研修卒業の条件とすることで、受講者の意識が高まり、最終的には店舗運営品質の安定化につながります。
また、検定をつくるということは、研修受講者の知識やスキルを適切に評価するための判断基準が必要となります。
このような基準を策定することが、本部の人材育成ノウハウの蓄積につながっていくものといえるでしょう。
開業後の教育研修
フランチャイズチェーン全体の運営品質を担保していくためには、開業後にも継続的に教育研修を実施していく必要があります。
開業前研修の受講をもって教育研修を終わらせている本部もありますが、そのような本部では、例えば、開業前教育研修の受講者が退職してしまった場合に、運営水準が大きく落ち込む等の問題が生じがちです。
このようなことが無いよう、本部から加盟者に対して、継続的な教育研修サービスを提供していくことが大切です。
特に、以下の点は事前に定めておくとよいでしょう。
①加盟店が新しい社員を採用したケース
- 当該社員を開業前研修受講の対象とするかどうか。
- FCチェーンの店舗運営品質を安定化させるためには、加盟店で働く社員全員を開業前研修の対象とすることが望ましい。
②店長が交代になったケース
- 新任店長に対して、店長研修等を実施するかどうか。または、開業前研修受講の対象とするかどうか。
- 店長は加盟店舗の運営品質を決定づける重要な役割を果たすため、店長に就任するためには何らかの教育研修受講を義務付けることが望ましい。
③定期的・継続的な教育研修の必要性
- 例えば、トレンドの変化が早い美容業などにおいて、半期に1回最新トレンドについての勉強会を開催する等、展開するビジネスモデル上、定期的・継続的に必要な教育研修があるかどうか。
- 店舗責任者に対しては、少なくとも月1回程度の情報共有や学びの場を設けることが望ましい。
まとめ
以上、フランチャイズ本部が備えるべき教育研修プログラムの内容をご紹介しました。
本部が運営する事業の素人をビジネスパートナーとするフランチャイズシステムにおいて、教育研修プログラムの品質は、マニュアルと双璧をなす重要要素といえます。
特に、“素人”でも“短期間”で、“定水準の実務スキル”を身に着けられるようにしておくことが大切です。
このようなシステムを整備することは容易なことではありませんが、だからこそ、教育研修プログラムの質が、フランチャイズ本部の競争力に直結するのです。
フランチャイズ展開で成功を目指すのであれば、“素人”でも“短期間”で、“定水準の実務スキル”身に着けられる教育研修プログラムの策定に情熱を注ぐべきでしょう。
なお、教育研修プログラムの作成には質の高いマニュアルが不可欠です。
マニュアル整備が完了していない場合は、まずはマニュアル整備から進めていくとよいでしょう。
フランチャイズ展開に必要なマニュアルの内容と作り方について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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