「女性社員がいるのですが、なかなか定着してくれなくて・・・」
「内定を出した女性から、入社を辞退されてしまいました。何が原因でしょうか?・・・」
上記は、あるフランチャイズの飲食店を経営する代表者から伺った言葉です。
社会環境の変化にともない、女性を積極的に雇用したいと考える経営者が増えています。人手不足により、これまで子育て等で仕事から離れていた女性に働いてもらう必要があることや、顧客ニーズが多様化し複雑さを増す現代において、女性視点を取り込んでいくことの重要性が増していることなどが、背景にあります。特に、サービス業の顧客は、男性よりも女性の方が多い場合があるため、女性がサービス内容を考えたり、サービスを提供したりすることは、むしろ望ましいことです。
また、政府が進める働き方改革により、働く環境が整備されつつあることや社会保険料などの増加に対する賃金の伸び悩み、ライフスタイルの多様化などにより、働きたいと考える女性も増えています。
このように、女性の社会進出の流れは今後も進む見通しです。人手不足のなか、企業が成長するためには、女性が活躍できる職場づくりが、ますます重要になってきます。
女性の課題を解決する人事制度と人材育成のあり方
女性が活躍できる職場をつくるには、女性の問題意識を理解して、求める働き方の支援や、問題を解決できる人事制度や人材育成方法を整備することが必要です。そこで、具体的に2つの課題について考えます。
1.将来のキャリア形成
一つ目の課題は、出産・育児などのライフイベントにより、キャリアが中断されることです。出産・育児休職制度などが整備されていても、1年以上にわたる職場の離脱により、休職後職場に復帰できるか、不安を抱えています。そこで、早くキャリアを積むことで、休職前に職場に必要とされる人材となることを支援します。
具体的には、頭の中で漠然と考えている将来のキャリアの具体化を助けます。明確に「私は営業職」のように自身の得意分野が決まっている人ばかりとは限りません。部下の特性を見極め、どのような職種が向いているか、アドバイスします。特に若い人は「私は何に向いているだろうか?」と思案している場合があります。上司が、日頃の職場での発言や行動から、向いていることや向いていないことを助言し、営業系や事務系など職種の方向性を一緒に考えます。
キャリアには、スタッフ⇒リーダー⇒マネージャーなど職務が変化する節目があります。出産・育児の時期は想定できませんが、目指すべきキャリアは想定しておくことができます。それぞれの職務で求められるスキルを明確に提示しておくことで、復帰後を想定して、出産・育児などのライフイベントまでにどこまでキャリアを積んでおくべきか、目標設定ができます。その目標を目指すことで、職務に求められるスキル修得が具体的になり、早くキャリアを積むことができます。
また、出産・育児などのライフイベントに応じて家計の必要額が変化します。生活費や保育料など必要な費用が増えます。そこで、職務ごとのモデル給与を明示することで、自身のライフプランニングに役立てることができます。
これらの支援策により、自身のビジョンを描き、早くキャリアを積むことで、復帰後も仕事・プライベートに心配なく職場に復帰できる準備が整います。
2.仕事とプライベートの両立
二つ目の課題に、趣味を充実させたいが、仕事で昇給・昇格もしていきたいと考えることや、結婚後、仕事と家庭を両立できるだろうかと悩むことがあります。特に、結婚や出産といったライフイベントは、男性よりも就業に大きな影響を及ぼします。男性の家事・育児への参加が進んだとはいえ、まだ女性が家事・育児の大部分を担っています。そのため、仕事とプライベートを両立できる人事制度と企業風土の整備が重要です。
勤務時間などの働き方については、正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態や、短時間勤務やフレックス勤務制度など、ニーズにあった制度を整備します。すでにこのような制度を導入している会社はあると思いますが、利用者にとって使いやすい仕組みになっているか確認しましょう。最近は、男性の育児休暇取得を奨励する企業もありますので、制度については、性別に関係なく利用できるようにします。
同時に、業務終了後に学校や習い事に通う場合や、育児中の女性は、子どもの突然の病気などにより、急に仕事を休まざるを得ない場合があります。そのため、勤務制度に加えて、職場でのバックアップ体制を整えることや、残業の回避や急な休みを受け入れる風土を醸成することが重要です。子どもの都合で仕事に影響がでることに不安を抱いている女性は少なくありません。必要以上に気遣いをさせない雰囲気づくりが、制度を活かすために重要です。プライベートと両立することで、仕事に対するモチベーションが大きく向上します。
女性の活躍によりもたらされる多くの効果
女性就業率の増加や消費者としてお金を自由につかえる女性の増加、働き方改革など、社会環境が大きく変わってきています。このような変化のなか、女性が活躍できる職場をつくることで、優秀な人材の確保や組織の活性化、業務の改善、新しい商品やサービス開発などの効果が考えられます。そのためには、女性の働きやすさを考慮し、女性の強みや自発性を活かすことのできる人事制度や人材育成方法がカギを握ります。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
多店舗展開・のれん分け・FC展開コンサルティングの専門企業
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