(1)フィードバック面談の目的
人事評価面談の目的として、以下の3つが挙げられます。
- 評価結果が理解されること
- フィードバック面談を通じて、気づきを与えること
- 部下のモチベーションを高めること
フィードバック面談は、人事評価制度運用の仕上げです。たとえ効果的な人事評価制度を構築したとしても、評価結果を部下に伝えるだけでは、一方的な通知であり、双方向のコミュニケーションとならず、業務の改善につながりません。人事評価の目的は、従業員の評価を公正、公平に行い、評価結果を伝えて行動を変化させ、モチベーションを高めることですので、フィードバック面談をしっかり実施することが必要不可欠な要素となります。
(2)フィードバック面談の留意点
フィードバック面談を効果的にするためにも、目的をしっかり意識するとともに、留意点を事前に把握して進めることが大切です。そこで、5つの留意点をご紹介します。
1.アイスブレイク
面談の初めに評価を伝えることはせず、簡単なアイスブレイクで場をほぐします。一般的には、天気、ニュースなどですが、社内の身近な部下ですので、共通の話題として、簡単な業務上の話をするとよいでしょう。具体的で身近な案件について、「あの顧客取れてよかったね」とか、「この前わかりやすい資料を作ってくれてありがとう」といった前向きな話から入ると、部下から「うまくいってよかったです。交渉に手間がかかったんですけどね」などと会話になり、面談が進めやすくなります。「最近どう?」とただ言っても、漠然としすぎていて、部下はどう反応してよいかわかりません。
2.誠実な対応
フィードバック面談は、上司と部下の「関係の質」(「人事評価制度と効果的なフィードバック面談(前編)」を参照。)が維持されていることが前提ですので、誠実に対応します。評価結果は、良い場合もあれば、悪い場合もあります。大切なことは結果と同時に、背景を伝えることですので、誠実さが必要です。それには、日常から部下の業務をしっかり見ておくことと、面談の際に、評価結果を伝えるだけではなく、部下の話を聞きながら、相槌を打ったり、話を否定せずに「こうしたらどうかな」と一緒に考えたりすることです。部下に上司の誠実さが伝わります。上から目線は絶対にNGです。また、結果だけで背景を伝えなかったり、高圧的や断定的と映る姿勢や言動、上司の一方的な話や過去の自慢話などは避けなければいけません。部下のモチベーションを上げるどころか、下げてしまいます。
3.行動を指摘し、考え方を指摘しない
良い点や改善点を指摘する際は、部下の行動を指摘します。部下に気づきを与え、自発的な行動を促すためです。「考え方が甘い」や「責任感はないのか」など、部下の考え方や気持ちを直接否定するような言動は厳禁です。行動の背景に考え方はありますが、周りから見た推測であり、本人の行動に結びついているとは限りません。考え方や気持ちに触れると、お互い感情的になりやすく、好き・嫌いの話になり、公正、公平な評価から遠ざかってしまいます。
4.経営方針等との一貫性の確保
会社の経営方針等との一貫性を確保することも大切です。例えば、日常、部下とコミュニケーションをする際に、売上のことしか言っていないにもかかわらず、面談の時に突然顧客満足度、といっても、部下には伝わりません。日頃から会社の経営理念や事業計画を理解した上で、組織の取り組みにもとづく言動を心掛ける必要があります。人事評価制度は、経営方針と一体となったものでなければなりません。
5.部下の話を聞く
当たり前のことですが、部下の話をしっかり聞きましょう。評価やその背景を説明する時は上司が話しますが、上司から一方的に話さず、部下の思いを聞くなどして、部下の声に耳を傾けます。話を始めることで、問題点に気づいたり、解決策を見つけるなど、気づきを得られやすくなります。上司の話よりも、部下に半分以上話をさせるようにしましょう。面談の最後には、部下もすっきりとした気持ちになるのではないでしょうか。
(3)人事評価制度活用による効果
東京都は、最低賃金を2018年10月から前年比27円引き上げ、時間額985円にしました。10年前の2009年の791円と比較すると、24.5%も上昇しています。経営資源の小さい中小企業は、賃金の上昇に対応することで精一杯であり、高い給与で人材を確保することは難しいのが現状です。このような労働環境の中、他の企業と差別化するためには、従業員や求職者が、「この会社で働きたい」と思うことです。そのためには、会社の事業の磨き上げとともに、将来のキャリアプランを描ける人事制度を構築し、提供することが必要ではないでしょうか。人事評価制度構築にあたり、もし社内での対応が難しい場合は、専門企業に相談してみてください。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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