フランチャイズシステムとは、本部が長年かけて構築してきた「成功するシステム」を加盟者に対して提供する一方、その対価として加盟金やロイヤルティ等を得るものです。
「成功するシステム」の中には、本部が展開する業態のブランド、経営ノウハウ、継続的な経営指導、物流システムなど、様々な要素が含まれます。
この中でしばしば問題となるのが「本部経営ノウハウの流出をいかに防止するか」という点です。
具体的な問題として、本部が提供した経営ノウハウを加盟者が自己の別事業に流用する、もしくは契約終了後に本部から得たノウハウを活用して同種の事業を展開する、というものです。
当社ではフランチャイザー(フランチャイズ本部)だけではなく、フランチャイジー(フランチャイズ加盟店)からの相談も多く受けていますが、実際、本部から経営ノウハウを得て、将来的には自己の事業に活かしていきたいという考えをもってフランチャイズ加盟される方は多くいます。
フランチャイジーとしてはそれなりの金銭を支払って経営ノウハウの提供を受けるわけですから、その経営ノウハウを最大限活用したいと考えることは、経営者として自然なことでしょう。
しかしながら、本部の立場からすれば、長年かけて培ってきたノウハウがどんどん流出してしまってはたまったものではありませんから、そういったことが行われないよう十分な対策を講じておくことが求められます。
そこで、フランチャイズやのれん分け制度における経営ノウハウ流出防止の考え方をご紹介します。
なお、フランチャイズ本部立ち上げの方法や成功のポイントについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
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(1)秘密保持義務の限界
経営ノウハウの流出防止対策と聞いてはじめに思い浮かぶのがフランチャイジーに対して秘密保持義務を課すことです。
フランチャイズやのれん分けシステムでは、本部から提供した資料等すべてを秘密情報と規定し、外部への流出やフランチャイジー自身の事業に流用することを禁止するとともに、秘密保持義務に違反した場合には高額な違約金(ロイヤルティの30か月分等)を課すことが一般的です。
ただ秘密保持義務を課すだけでなく、違反に対して明確な罰則を定めることにより、フランチャイジーの秘密保持に対する意識が高まることが期待できます。
また、フランチャイズ契約書やのれん分け契約書に秘密保持義務を加えることはもちろんのこと、加盟検討に必要な資料を開示する前には別途秘密保持契約書(NDA)を結んでおくべきでしょう。
では秘密保持義務を課せば経営ノウハウの流出防止対策が十分かといえば、残念ながらそういうわけではありません。
確かに秘密保持義務によって一定の効果を見込むことはできますが、悪意を持ったフランチャイジーへの対抗という意味では不十分といえます。
具体的にいうと、フランチャイジーの秘密保持義務違反を追求する場合、フランチャイザー側がフランチャイジーの秘密保持義務に違反している事実を示す必要がありますが、形の無い経営ノウハウの流出を明確に示す証拠を外部からつかむことは困難を極めます。
証拠をつかむことが出来なければフランチャイジーの秘密保持義務違反を問うことはできませんから、その意味で秘密保持義務による経営ノウハウの流出防止には限界があることも事実です。
(2)競業避止義務による同種または類似事業の制限
そこで、フランチャイズやのれん分けシステムでは、秘密保持義務に加えて、フランチャイジーに対して競業避止義務を課すことにより、経営ノウハウの流出防止を目指します。
競業避止義務とは、フランチャイジーが自己または第三者のためにフランチャイザーの事業と同種又は類似の事業を実施することを禁止するものです。
競業避止義務にも、秘密保持義務と同様、違反に対しては高額の違約金を課します。
競業避止義務の場合、フランチャイジーが本部と同種または類似の事業を行うことで違反行為が成立しますから、秘密保持義務とは違ってフランチャイジーの義務違反を外部からでも明確に捉えることが可能となります。
フランチャイジーの立場からすると、経営ノウハウを自分の事業に活用しようとしても、そもそも同種または類似の事業自体を行うことが制限されていますから、実質的に経営ノウハウを流用することが困難となります。
このように、フランチャイズやのれん分けシステムでは、秘密保持義務と競業避止義務をセットで経営ノウハウ等の流出防止を行うこととなります。
なお、競業避止義務を課す際には、以下の点に留意する必要があります。
禁止する事業の範囲を特定すること
競業避止義務を課したとしても、禁止する事業の範囲が不明瞭な場合、その部分で疑義が生じる恐れがありますから、禁止する事業範囲を特定することが必要です。
例えば、鍼灸院チェーンの場合では、鍼灸院だけを禁止するのか、整体やリラクゼーションマッサージなど、関連する事業まで禁止するのかで効果が大きく異なります。
自社のビジネスモデルを踏まえ、ノウハウ流用が可能な事業を禁止する事業として契約書に明記しておく必要があります。
契約中に加えて、契約終了後にも一定の義務を課すこと
契約期間中に競業避止義務を課すことはもちろんですが、契約終了後にも一定の競業避止義務を課すことができます。
もちろん、フランチャイジーにも職業選択の自由がありますから無制限に競業を禁止することはできませんが、基本的には制限する事業内容や期間、場所を特定すれば当該義務は有効になるものと考えられます。
なお、禁止する期間は、過去判例を踏まえると2~3年程度が望ましいようです。
なお、フランチャイズ契約作成のポイントや留意点について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
(3)管理システムによる流出防止
以上、契約による経営ノウハウ流出防止の方法について記載しましたが、それに加えて本部の管理システムを強化することも必要です。
例えば、マニュアルは経営ノウハウの塊ですから、フランチャイズやのれん分けでは、加盟時にマニュアルを“貸与”し、契約終了時にはマニュアルを“返却”してもらうのがあるべき姿といえます。
また、渡すマニュアルはしっかりと製本してデータ化しにくいようにする、シリアルナンバーを振っておいて仮に流出した際にどのフランチャイジーのマニュアルか特定できるようにする、など流出を難しくするための工夫が必要です。
フランチャイジーに対してデータでマニュアルを提供するような本部もありますが、データではそのマニュアルがどのように流出していくかわかりませんから、経営ノウハウの流出防止という観点では絶対に避けるべきことです。
フランチャイズ契約書による対策も重要ですが、それだけでは経営ノウハウの流出を完全に防ぐことはできません。そもそも経営ノウハウを流出させることが難しい管理システムを構築しておくことが最も重要なことといえます。
まとめ
以上、フランチャイズやのれん分けにおけるノウハウ流出防止の考え方をご紹介しました。経営陣はもちろんのこと、全従業員が経営ノウハウ流出防止策の重要性と具体的な防止方法を理解することが大切です。
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