「のれん分け制度を導入したいのですが、トラブルが起きないか心配です。どのような点に注意すべきでしょうか」
これは、先日弊社にのれん分け制度構築のご相談に訪れた整骨院チェーンを営む経営者から頂いた質問です。
昨今、大手フランチャイズ本部において加盟店とのトラブルが頻発したこともあり、フランチャイズシステムについてのイメージが悪化しています。
フランチャイズシステムの一種であるのれん分け制度においても、同様の懸念を抱く経営者が増えているように感じます。
実際、弊社にてのれん分け制度(従業員独立支援制度)の構築をサポートさせていただく際、制度運用後にトラブルが生じることを懸念する本部企業経営者から、「トラブルが発生しないよう万全の契約書をつくりたい」といったご要望を頂くことが多くあります。
しかしながら、万全な契約書をつくったとしても、多少のトラブル予防にはなるものの、それですべてが解決できるかというと、そういうわけではありません。
そこで、今回はのれん分け制度においてトラブル発生を防止するためのポイントについて考えてみたいと思います。
のれん分け契約書の限界
のれん分け制度でトラブルを予防しようと考えたときに、
「何か問題が発生しても、本部が裁判で負けない契約書をつくろう!」
と考えられるかもしれません。
たしかに、のれん分け契約書で本部が有利な立場となるよう独立者に厳しい制約を課す方法も考えられますが、この方法では、トラブルを防止するどころか、不要なトラブルを引き起こす可能性がある点に注意が必要です。
その最たる例が、最近発生したコンビニFC本部の24時間営業問題です。
FC契約書を根拠として、加盟店に対して24時間営業を求めるFC本部の姿勢は、FCを専門とする弊社からみても至極まっとうな対応です。
にもかかわらず、24時間営業問題はあれだけの大騒動となり、コンビニ本部は世論からも批判を受けることとなりました。
コンビニ本部が窮地に立たされた理由にはいくつかのポイントがありますが、その大きな要因の一つに、FC契約書をたてに強制的に加盟店を従わせようとしたFC本部の姿勢があるのではないかと感じます。
FC本部の姿勢に対して不信感を抱いた加盟店が、マスメディアやSNSを活用して「FC本部=悪」という風潮を作り出したのです。
このように、情報化が進み、加盟店が情報発信力を有する現代は、契約上では本部の主張が正しかったとしても、契約をたてにして本部の主張を押し通すことは、以前よりも難しくなっています。
もちろん、問題の取り扱いを裁判所に委ねることもできますが、トラブル発生を懸念している経営者から見れば、そもそも問題が裁判にまで発展すること自体を望んでいないことでしょう。
このように、いくら契約書上で独立者を厳しく制約しようとも、その効果には限界があることを認識しておく必要があります。
なお、のれん分け契約書の作成方法や留意点について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
トラブルを防止する最大のポイント
そもそものれん分け制度とは、一定程度の信頼関係が構築されている従業員に対して、長年、会社や店舗のために尽くしてきてくれたことへの恩返しの思いも込めて、その独立をサポートするものです。
この信頼関係の有無が、加盟者が信頼関係の無い第三者であるフランチャイズとは明確に異なります(「制度構築前に絶対知っておきたい“のれん分けとFCの違い”」を参照)。
加盟者がまったくの第三者であれば、契約前に相手がどのような人物であるかを正確に把握することには限界がありますから、トラブルが生じることを懸念するのは当然のことといえます。
一方、のれん分け制度の場合には、従業員との長い付き合いの中で、相手がどのような人物であるかを独立前に見極めやすくなります。
もちろん、人の見極めにも限界があることは間違いありませんが、経営者の資質に欠けている、または本部の理念や方針を共有できない人材は、一定程度見極めることができるはずです。
独立者としてふさわしくない人材を独立させてしまったとしたならば、独立後にトラブルが発生する確率は格段に高まります。
裏を返せば、適切な人材だけに絞って独立を認めるのであれば、トラブル発生リスクを低減することができるのです。
のれん分け制度においてトラブルを防止する最大のポイントは、この“独立者の見極め”にあります。
実際、のれん分けに限らず、成功しているフランチャイズ本部であればあるほど、加盟者選定が厳しい傾向にあります。
それだけ、加盟店や独立者を増やすことよりも、誰を加盟者とするか、独立者とするかを重視しているのです。
なお、のれん分けする独立候補者の見極め方について詳しく知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
まとめ
以上、のれん分け制度におけるトラブル防止のポイントをご紹介しました。
ご紹介した通り、のれん分け制度で成功を目指すうえで、「独立者をいかに見極めるか」という点は極めて重要な要素となりますが、意外と盲点となっているようです。
独立させる人材を間違えれば、どのような素晴らしいシステムを築いたとしても、トラブルが発生する確率は無くなりません。
一方、適正な人材を選定すれば、多少システムに不備があったとしても、本部と独立者の信頼関係をベースに問題を乗り越えていくことができるのです。
これからのれん分け制度を導入するのであれば、独立候補者を見極めるための仕組みをしっかりと整備しておくべきでしょう。
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