飲食店で使う販促ツールは大きく分けて紙媒体とネット媒体があります。消費者の行動の変化によって、近年ではネット媒体への対応の重要性が増していますが、紙媒体による販促も完全にすたれたわけではなく、目的によって使い分けを考えていく必要があります。
概していえば、紙媒体はその都度1回限りの出費となり、効果もその1回分に限られるのに対し、ネット媒体は無料ないし低コストで実行できる部分もあり、いったん仕組みを構築してしまえば継続的な効果が期待できる代わりに、維持管理も継続的におこなっていく必要がある、という違いがあります。今回は主な販促ツールの特徴を紹介します。
(1)紙媒体
チラシ
店舗のセールスポイントや来店者の特典などを盛り込んだチラシを作成して配布します。デザインや配布方法にもよりますが、標準的な反応率は0.1~0.3%程度と言われています。すなわち、1000枚配布しても来店してくれるのは1人から3人程度が目安となります。店舗のことを知らない人達へも幅広く周知を行う方法であるため、他の手法と比較して費用対効果が低くなりがちですが、新規顧客の獲得という観点では一定の効果を見込むことができます。
ポスティングを行う場合、表通りやマンションの集合ポストより、一戸建てや裏通りなど、配布に手間がかかるような場所のほうが競争率が低く、結果として反応率が上がる傾向があります。店舗自体が目立たない場所にある場合には、一番近い表通りに出てチラシ配りをすることで、表通りの見込み客を「引き込む」ことも可能です。
ダイレクトメール(DM)
アンケートあるいは会員制度等、 何等かの方法で顧客の個人情報を入手し、DM(はがき等)を送付します。チラシのポスティング等、新規顧客の取り込みを対象とする方法とは異なり、一度ご利用いただいた顧客に再利用を促す方法となります。すでに一定の信頼関係が構築できている顧客に対するアプローチであることもあって、新規顧客開拓手法と比較して高い費用対効果が期待できます。反応率は業種業態にもよりますが、当社の関係先では高い場合では30%超、低くても10%程度は確保できています。逆に10%を下回るようなケースは、顧客満足度が十分でないことを疑うべきといえます。
新規顧客獲得を行う際に、DM等、再来店を促進する仕組みが構築されていると、販売促進活動の効果が高まることが期待できます。
なお、小規模飲食店がDMを送る際、大手企業のようにきれいに印刷されたものを送るよりも、手書きで作成されたものなど、手作り感を重視した形式とする方が、他との違いが生まれ、高い効果が期待できます。
雑誌等への広告
雑誌への広告や新聞の折込み広告はかなり費用がかかるのが難点ですが、地域ごとのフリーペーパー等も増えており、低コストで活用できるものがあれば掲載を検討する価値があるでしょう。チラシのポスティング同様、新規顧客の獲得に向いている媒体であり、費用対効果は低くなりがちです。やみくもに行うのではなく、戦略的な目的をもって実施することが求められます。
スタンプカードや割引クーポン
次回使える半額券や、10回来店で定食無料等のサービスを提供するスタンプカードなど、様々な方法があります。DMと同様、一度ご利用いただいた顧客に再来店を促す取り組みではありますが、DMと比較すると受け身(カードやクーポンを財布に入れておいてくれるかはお客様次第)となりますが、再来店促進策の中では最も取り組みやすい方法といえます。
(2)ネット媒体
ネット媒体は大きく分けて「自作できるもの」と「グルメサイトの活用」があります。
自社ページ(HP、SNS等)
Facebookやインスタグラムに代表されるSNSや、オリジナルホームページがあります。これらのツールは、それ自体でお客様に「見つけてもらう」効果は低いのですが、チラシを見たり、あるいは店前を通りがかって店舗の存在を知った方が「どんなレストランなんだろう」と検索する可能性があります。単体だけでは大きな効果は見込めませんが、その他の販促物などと組み合わせることで相乗効果を発揮することができる媒体といえます。
グルメサイトの活用
ネット上では、飲食店向けにさまざまなサービスが展開されていますが、代表的なものが食べログやぐるなび等のグルメサイトへの登録です。現代の消費者が飲食店を探す際には、これらのグルメサイトのいずれかを利用するケースが圧倒的に多くなっていますので、意識的に対応を検討しておくことは必須と言えます。グルメサイトにHPやSNS等のURLを貼っておくことで、口コミサイトを見て店舗に興味を持った顧客が自社HPやSNSに流入してくることも期待駅ます。
また、グルメサイトは競合店調査にも非常に便利です。同業者と同じことをする必要はありませんが、どこにどんな店があり、何をセールスポイントとしているのか、彼らと並べたときに自店がどう見えるのか、参考になる点が必ずあるはずです。
ネット上の口コミ
能動的な販促ではないのですが、顧客同士のネット上の口コミこそ、販促の最重要ポイントになりつつあります。「おいしい」という評価ももちろん大事ですが、「食べる前に撮る」という行為が一般化してきている今、料理の見た目がより直接的に売上げを左右する時代になっています。「インパクトのある盛り付けこそ販促戦略」という考え方が必要になってきました。
(3)販売促進活動の効果を高めるために
以上、様々な販売促進策を紹介しましたが、最も重要なことは、販売促進策を単体で考えるのではなく、顧客がお店に訪れるまでの一連の流れをイメージし、その流れに沿って各種販売促進策を組み合わせて実行していくこととなります。
例えば、チラシを受け取ったお客様は次にどのようなことをするでしょうか。口コミサイトで店舗のクチコミを調べるかもしれませんし、より詳しい情報を求めてHPを見て見るかもしれません。そのような流れをイメージして、必要な媒体を組み合わせて実行しておくことが販売促進活動の効果を高めるポイントといえます。
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