人材育成に取り組むがうまく進まないと考える経営者の方が多いようです。
とはいえ、人は一朝一夕に成長するものではないのですが、それをなかなか理解できない方が多いようです。
一方、部下自身も同様に、早く成長したいと考えています。
そこで、経営者や部下の方が成長を実感しやすくなる目標設定の仕方のポイントをご紹介します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
社員を自発的人材に育成し会社を成長させようとしている企業
「継続して物事に取り組もうと部下に言っているのですが、なかなか続かないのです」
これは都内で食品店を営む経営者の方から伺った言葉です。
少し離れた場所で多店舗経営をしているため、すべての店舗のオペレーションを常時見ているわけにはいきません。
そこで、社員数は多くありませんが、この方は将来性のある若い社員をリーダークラスに育て、彼らが会社の経営方針に従い自発的に行動できるようになってほしいと考えています。
そのために社員の人材育成に数年前から取り組んできました。
このような経営者の方でも、以前はせっかく育てた人材が流出してしまっては育成費用を回収できないことを気にして、人材育成にはあまり積極的ではありませんでした。
しかし、最近はコロナ禍において人材の重要性が高まることを実感して、すっかり考え方が変わりました。
社員が自発的に行動できるように有能になれば、店舗の業務を任せられるようになったり、経営者と一緒に経営方針や施策について議論したりするなど、会社に対して大きな貢献が期待できます。
また、もしその社員が辞めてしまっても、会社が教育した内容を経営者と共通認識を持ちながら活躍してもらえれば、会社に対して連帯意識も高まり、将来的な協業等も考えられるかもしれません。
今ではこの経営者は、「社員が成長することを目にすることは、経営の大きな喜びの1つである」とまでおっしゃっていました。
人材を成長させるための目標設定のポイントとは
しかし、人材育成は口で言うほど簡単ではありません。
人材育成に取り組むがうまく進まないと考える多くの方は、“部下が思うように成長してくれない”と感じています。
このとき、“思うように”とはどういうことでしょうか?
これは成長のスピードを「待ちきれない」といった時間的な感覚や、成長を「実感できない」といった意識のギャップと筆者は考えます。
つまり、人は一朝一夕に成長するものではありません。
これはどの経営者の方もわかっていることですが、結果的にはやはり社員の成長を待ちきれないのです。
しかし、人材の成長には時間が必要です。
適切な教育をすれば人は成長します。
成長を期待するのは、経営者だけではありません。
実は成長を期待されている部下自身も同様に、早く成長したいと考えています。
経営者や部下の方が成長を実感しやすくなる目標設定の仕方のポイントは以下の通りです。
成功体験を積み重ねる
人が成長するためには、2つのモノが備わる必要があります。
1つは、課題を達成するための知識や経験、能力です。
例えば、店舗フロアでの接客などは、基本的な対応手順に従い、その通りに行動できるようになることです。
これに加えて、もう1つ備えるべきモノは自信です。
何となくやってみてできたとしてもそれでは成長につながりません。
偶然できただけかもしれませんし、できたことが満足感や充実感に結びついていません。
大切なのは、“できた”という経験を通じて得られる自信です。
自信が自己肯定感を向上させ、仕事への満足感を高めます。
自信は1回の成功で得られるものではなく、小さくても“できた”という達成感を積み重ねることで徐々に醸成されます。
そのためには、成功体験を数多く経験できるように目標設定をすることです。
目標にストーリー性を持たせる
次に、目標は点としてではなく、線として設定します。
例えば、ある店舗の今月の来店客数の目標を述べ1,000人と設定したとします。
なぜ1,000人としたのでしょうか?
ありがちな回答は、先月までの月平均が950人だったため、約+5%の成長を計画したから、といったものです。
現状からある成長率を見込んで設定することは達成可能性等から考えられますが、これだけでは不十分です。
目標にストーリーを持たせるのです。
つまり、組織や個人の目標というのは、全社や店舗などの目標としっかりリンクしているべきです。
全社で年間1億円の売上げ目標を立てているとします。
そのためには、店舗別、月別に売上額にブレイクダウンし目標管理をします。
これにより、週毎の売上げに細分化したり、客層別や商品別の売上げに区分化が可能になります。
逆の見方では、各店舗や個人の目標売上額を積み重ねれば、全社の売上額になると言うことです。
つまり、全員が目標を達成すれば、会社として目標達成できることを意味します。
社員個人の頑張りが会社に直接つながっていることを実感できます。
社員が会社の大切な一員であるという誇らしい気持ちを持ちながら、自分や店舗のために全力を尽くすことが会社の目標達成につながるというストーリーを理解できます。
孤立した点の目標にせず、全体のビジネスプランを描きながら、各目標に意味を持たせます。
意味のある目標に向かって働くことは、日々の大変な仕事のなかにも、一種の興奮感、楽しみ、ゲーム性などの別の動機を生じさせます。
目標設定の4つのチェックポイント
さらに目標設定する際にはいくつかのチェックポイントがあります。
設定した目標がこれらの指標を満たしているか確認してみます。
1つ目は具体性です。
例えば、清掃するという目標だけでは十分ではありません。ど
こを、いつ、どのように、どのレベルまできれいにするのか、などを明確にします。
2つ目は定量性です。
目標をできるだけ数値化します。
コストダウンするという目標設定の場合、特定品目や仕入れ額に対するコストダウン額やコストダウン率で表現するようにします。
進捗管理がしやすくなります。
3つ目は達成可能性です。
頑張れば達成できるレベルの目標にします。
達成までの難易度が高すぎる場合は、目標を細分化し達成可能なように工夫します。
一方、容易すぎては目標になりませんので、目標の難易度を過去の実績などから測り適切に設定します。
4つ目は適時性です。
今達成すべきものを目標にして意味を持たせます。
形骸化している目標や意気込みだけの目標を掲げることはよくありません。
目標が陳腐化して目標としての機能を果たさなくなってしまいます。
これらをチェックすることで、設定した目標が機能するか確認することができます。
適切な目標設定が社員を成長に導く
このように、ポイントを把握して適切に目標設定することが社員を成長に導きます。
社員は成功体験の積み重ねで自信を深め、目標の意味を理解して自発的に行動するようになります。
目標はチャレンジするために立てるもので、失敗させるためのものではありません。
目標が難しすぎたり長期的すぎる場合は、目標にマイルストーンを多く設けたり、達成できるように研修を実施するなどして社員をバックアップします。
目標を適切にするために、目標側と社員側の両方からアプローチします。
そして、目標設定したら必ず月毎や3カ月毎などに上司とレビューを行います。
達成と成長の度合いに応じて、上司と部下の話し合いにより随時目標を適切に設定しておくことが欠かせません。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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