終身雇用、年功序列の慣習が時代に合っていないと言われながらも、企業のピラミッド型の組織構造はなかなか変わりません。
40代・50代で先が見え始め、転職や独立を考え始めるマインドは、大手企業の社員も中堅企業の社員も同じです。
しかしひるがえって企業側の視点に立てば、ベテラン社員は給与水準に比べ、生産性は落ちてきているといえます。
しかしそういった理由だけで、自社での経験値を社外へ流出させるのはもったいなく、せっかく時間とお金をかけて教育してきたスキルを、次の若い世代に継承してもらいたいと考える企業もあるのではないでしょうか。
今回はこの問題解決のために「のれん分け」を活用する考え方を紹介したいと思います。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
店舗ビジネスにおけるピラミッド型組織構造の限界
店舗ビジネスは、従業員が顧客に対して直接的にサービスを提供している時間だけが価値を生みます。
美容院や整体院であれば、カウンセリングや施術をしている時間です。
飲食店であれば接客や料理を提供している時間です。
それ以外の時間で顧客にベネフィットを提供できる仕組みがあれば生産性や収益性も上がりますが、現時点では見出せていません。
この時間軸で店舗ビジネスが生産性を上げられる方法は2つです。
①直接的なサービス提供時間(労働時間)を拡大する
②同じサービス提供時間での付加価値額(単価)を上げる
①を突き詰めれば過重労働でブラック企業が出来上がります。
②は一定の機械化で生産性を高められますが、人の手を介してサービスを提供するビジネスでは早くに限界を迎えるでしょう。
店舗ビジネスで従業員が生み出す価値(粗利)は、1ヶ月80万円〜100万円あれば大繁盛店レベルです。
そこから従業員に払える給与は、せいぜい半分以下の40万円が上限です。
つまり大繁盛のお店でフルコミットできても、年収480万円です。
となると残念ながら、店舗ビジネスの現場で働くということは、この水準から浮上することは難しいとみていいでしょう。
これは日本国内の平均年収に近い水準ですから、比較的安定した生活はできます。
しかしもっと上を目指したい従業員も多くいるでしょう。
老後のことを考えると決して安心できないのは、店舗ビジネス以外の会社員と同様です。
若手社員の活躍の機会が失われる
では店舗ビジネス企業において、優秀なベテラン社員が、現場からの叩き上げで経営企画などの会社の中枢業務を担当する管理職に出世した後はどうなるでしょうか。
会社の規模によりポストは限られ、管理職になった瞬間から、その社員の既得権益になります。
若手従業員が、管理職の椅子取りゲームに参加することすらできなくなります。
この時点で後続の若手従業員のキャリアパスは限界を迎えます。
これでは若手従業員のモチベーションは上がらず、数年で退職する可能性が高まります。
もしくは早くから独立を意識し始めます。
結果的に企業から、従業員を教育してきたコストやスキルが流出することになります。
そして新しい従業員を募集してもこの繰り返しが続けば、いつまで経っても会社の生産性は振り出しに戻ってしまうことでしょう。
しかも現在は人手不足によって、採用自体に費用も手間もかかります。
この状況は、「店舗ビジネスの組織構造によって生産性が上がらない仕組み」を作り出していると言えるでしょう。
報酬獲得の構造も変える仕組み作り
繰り返しになりますが、店舗ビジネスにおいて価値を生んでいるのは、「顧客に直接的にサービスを提供している時間」です。
直接的に会社に価値をもたらしているのは、現場で働いている従業員なのです。
プロ野球の世界を見てみると分かり易いです。
1軍で活躍する名プレーヤーの年俸は1億円を裕に超えます。
一方、三顧の礼で招聘した有名監督は除けば、選手を指導するコーチの年俸は1000万円から数千万円です。
つまり顧客が見たいのは「選手の一流プレー」なのです。
ここが最も報酬が高いのは当たり前です。
管理職であるコーチはあくまで選手のサポートです。
特に1軍の選手には教えることはほとんどないとも言えます。
しかし一般的な国内企業の構造は異なります。
現場で働く従業員よりも管理職の方が報酬は圧倒的に高くなっています。
しかもポストも少なく椅子取りゲームです。
この体質に長年慣れ親しんだ日本人には違和感はないかもしれませんが、このマインドに一石を投じるのもありではないでしょうか。
店舗ビジネスにできる従業員のキャリアパスの変革
上記で上げた課題解決の手法の1つとして、「のれん分け」の仕組みがあります。
一定のスキルを得た従業員には、組織構造から独立しつつも「のれん分け」という形でグループ内に残り、スキルを存分に活かしてもらう仕組みです。
店舗数の拡大も独立した従業員のやる気次第です。
当然に獲得できる報酬も比例してきます。
社内の小さな枠組みの中で管理職ポストの椅子取りゲームをやるのではなく、マーケットの中で顧客獲得ゲームをダイナミックに繰り広げるのです。
45歳定年制を提唱する経営者や学者も出てきました。
AKB48や乃木坂46も一定のキャリアで卒業し、新しい活躍場所を求めていきます。
キャリアパスのどこかでピボットするタイミングを、制度として組織構造の中に埋め込んでおく必要があるのではないでしょうか。
まとめ
従業員のキャリアパスの視点で組織構造を考えることが、企業の活性化や生産性向上を生むのように思えます。
社会情勢や人々の考え方は大きく変わってきましたが、組織構造はほとんど昭和の時代と変わっていません。
会社にフルコミットした従順な社員から、一定量は会社にコミットするが、フルコミットするのは「個人」の生き方であるといったマインドが醸成されつつあります。
企業の組織構造もこのように変わっていく必要があるのではないでしょうか。
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