自発的に行動できる人材を育成するためには、部下の内面から動機づけることが必要です。
自発的な行動というのは、上司から与えられたり指示されたりして行動することではなく、自らの内面から湧き上がる動機により促されるからです。
そのために、部下と対話型のコミュニケーションを心がけますが、上司の会話や質問する能力を問われるため簡単ではありません。
そこで今回は部下のタイプを3つに分けて対話を行い、部下の本音を引き出しやすくするポイントと留意点について、ご説明します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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(1)多様な現象や法則を扱うにはさまざまな経験や知識を持った人材が必要
人材育成に力を入れる会社が増えてきました。
少子化による人手不足という問題ばかりではなく、不確実性の時代と言われ何が正解かわからない現代においては、トライアル・アンド・エラーを繰り返して、正解を探していくことが必要だからです。
これは、起こっている事象を分析し、一般的な方法や法則、別の事象などと組み合わせて結果を想定し、結果を評価するといった演繹的な取り組み方です。
従来の学校教育のように、与えられた問題に対して解答を選んだり記述したりする能力を高めるだけでは限界です。
多様な現象や法則を扱うには、さまざまな経験や知識を持った人材が必要です。
このような状況に対応するために、自発的に考え行動することができる人材を育成することが現代の会社には求められています。
(2)部下のタイプを想定して対話を行い本音を引き出す
自発的に行動できる人材を育成するためには、部下の内面から動機づけることが必要です。
自発的な行動というのは、上司から与えられたり指示されたりして行動することではなく、自らの内面から湧き上がる動機により促されます。
そのため、部下とのコミュニケーションを重視し、内面に働きかけ本音を引き出すような対話を心がけます。
しかし、部下に多くを話させる対話型のコミュニケーションは上司の会話や質問する能力を問われるため簡単ではありません。
上司と緊張せずに本音を軽々と話せる部下はほとんどいません。
上司が一方的に話をするのではなく、部下からの対話を期待するためには、部下に合った話し方をする必要があります。
そこで、部下のタイプを想定して対話を行い、部下の本音を引き出しやすくします。
(3)対話の時に想定したい部下の基本的な3つのタイプ
①経験が不十分だったり自信が不足している部下
一見すると、人材育成を行ってもムダではないかと将来性に疑問を持ちかねない部下ですが決してそのようなことはありません。
多少受け身的な面があるかもしれませんが、それは単に性格というだけではなく、業務内容を十分に把握しきれていなかったり、責任のある仕事については慎重に行動しようとしているだけかもしれません。
業務にしっかり取り組んでいる限りは、将来性は十分あると考えられます。
このようなタイプは成長の伸びしろは一番あると考え、対話では部下が慣れるまでは上司から部下の関心のありそうな話題を提供しながら、時折質問を投げかけ、本人の本音を引き出すように工夫します。
対話で意識することは安心感や信頼感です。
②仕事をそつなくこなすバランスの良い部下
このタイプは指示したことや任せたことを無難にこなします。
対話を行ってもスムーズに進みます。
しかし、なかなか本音を聞き出せないことが難点です。
このタイプに対して苦手意識をお持ちの上司の方もいるかもしれません。
今以上に発揮できる力や要素を持っていると思われますので、適度に期待を寄せ仕事を任せます。
仕事を無難にこなすだけのコンフォート・ゾーンから一歩外に出て、目標を達成することの充実感ややりがいを感じることができれば、一皮むけた成長が期待できます。
対話で意識することは達成感や充実感です。
③バリバリ働く部下
とても頼りになる部下で、上司からすると手がかからないと言えるかもしれません。
自ら考え行動していると思われますので、望ましい方向にさらに成長させるために、対話によりうまくナビゲートします。
積極的なことはよいことですが、慢心やおごりがあるかもしれませんし、また、チームワークが苦手かもしれません。
部下と会社の両方をよりよい方向に持っていくために、仕事の成果は認めたうえで、周囲に配慮するなど謙虚な気持ちを同時に持つようにアドバイスします。対話で意識することは方向性です。
(4)相手に敬意を表し評価していることが伝わる言葉
対話では質問を用いることで部下に多くを話してもらいますが、留意点は部下が話をしたら必ず受け止めることです。
前向きな言葉で相づちをうちます。
評価をしたり疑問を呈したくなるときがあるかもしれませんが、その場で判断や批判はしないようにします。
上司から否定的な言葉をもらったら部下は誰でも消極的になり、本音を一切話さなくなってしまうからです。
そこで、インタビューなどでよく使われる5つの相づちの言葉をご紹介します。
「さすがだね」、「知らなかったよ」、「すばらしいね」、「センスいいね」、「そうなんだ」です。
すでにお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、よく見ると言葉の頭文字が「さ・し・す・せ・そ」になっています。
これらは、相手に敬意を表し評価していることが伝わる言葉です。
言葉をかけられた部下は、個人として尊重されていることを感じ前向きになれます。
米国の心理学者マズローが提唱した5段階欲求説においても、4段階目に承認欲求があります。
上司のとの対話を通じて、承認欲求を満たすことができ自尊心を高めることができます。
最後にこのような対応をするうえで最も大切なことは、まず上司の側が誠実であることです。
対話の基本は誠実さです。
年齢や性別などの属性に関係なく言葉遣いに留意し、真摯な態度で接することが、部下から本音を引き出すことにつながります。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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