弊社では女性経営者の方から「のれん分け制度構築」のご相談を多くいただきます。
その中でほとんど方がおっしゃるのは「優秀なスタッフを引き留めたい」「どうしても独立するなら、良い関係を保って独立してほしい」といったことです。
しかし、よくよくお話を聞くと、そもそも独立支援制度を作ろうと思ったきっかけは、「自分より若いスタッフに気づきを与えたい」という方が多いのです。
そこで今回は、店舗ビジネスで働く女性スタッフに、自身のキャリアについて気づきを与える重要性と方法について考察してみます。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)女性が自分のキャリアを意識することの重要性
店舗ビジネスに限らず、女性のキャリアの特徴は、結婚、出産・育児、介護といったライフイベントに左右され、男性よりも変化が大きいことでしょう。
最近では、企業が独自に法定以上の育休期間を与えたり、男性の育休取得を推進したりと、これまで女性特有のライフイベントとされてきた「出産・育児」を社会や企業が支援するようになってきました。
とはいえ、2020年の男女共同参画白書によると、仕事をする女性が家事にかける時間は、単身世帯では男性と女性にほぼ差がないにもかかわらず、夫婦世帯では男性の2倍以上になるといった調査結果が出ていることから、従来からの役割分担意識も根強く残っていることがうかがえます。
さらに子育世帯になると、3.6倍まで男女の家事時間の差は広がり、「出産」といった身体的な機能として女性しか担えないことはさておき、「家事・育児」といった夫婦で役割分担可能な範囲においても、女性が担っている役割がまだまだ大きいことがわかります。
男性が家事・育児に参画できない主な原因であり、その裏返しで女性が社会で活躍しづらい要因として、「長時間労働」が問題視され、「働き方改革」につながった訳ですが、その目的の1つでもある「ワークライフバランスの実現」は、調査結果からも緒に就いたところといえます。
なので、現実的にはこれまで通り、性別役割分担意識やアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)と折り合いをつけながら、女性自身が望む働き方をそれぞれが見つけ、活躍の場を広げていくことになるでしょう。
しかし「誰もが自分で望む働き方ができる働きやすい社会の実現」を、社会全体の方向性として目指し始めていることから、仕事と家庭の両立もしやすくなり、さらに活躍の範囲は、これまでよりも広がり、スピードも速まることが予想されます。
このような状況下では、早いうちから「自分がどのようなキャリアを作っていきたいのか」を考えて自分の仕事を選び、さらにはパートナーを選ぶ基準を意識することなど、自分の望むキャリアを実現するために考え、準備をしている人が、優位になることは間違いありません。
そしてその差が、歳を経るごとに開くことがわかっているからこそ、女性経営者が「若いスタッフに気づかせたい」という想いを持つのだと思います。
(2)店舗ビジネスで働く女性のキャリアの特徴
では具体的に店舗ビジネスで働く女性スタッフに、女性経営者が気づいてほしいこととは、どんなことでしょうか。
様々あるとは思いますが、まずは「自分のキャリアは自分で切り開くもの」という意識を持つことではないでしょうか。
スペシャリストとして今の業務を極める道、企業でマネージャーを目指す道、そして独立して経営者になる道…いくつかある選択肢の中から、自分で選ぶことができ、自分しだいで未来は変わっていくのだ、ということに気づくことでしょう。
そのために「自分で考えて働き方を変えてほしい。」と思っているのではないでしょうか。
そして「気づけば」働き方もおのずと変わり、企業人としても成長が望め、独立して経営者になる道も勧めることができるでしょう。
経営者は、自分しだいで結果が変わっていく世界ですが、「誰のせいにもできない厳しい世界」であり、やはり適性のある人は限られます。
さらに、ただ独立すればいいだけではなく、「自分の将来」をある程度冷静に見据えて独立することも大切です。
例えば「自分についているお客様は、自分だけの力で付いていると思って独立し、その後新しいお客様を開拓できずにいつの間にか閉店していた人がいる」と、これはたいていの女性経営者からお聞きする話です。
(3)気づきを与える方法
では働き方を変えるような気づきを具体的にはどのように与えていけばよいのでしょうか。
実際にこの点で悩まれている経営者も多い印象です。
まずは当たり前のことですが、普段の情報提供やコミュニケーションが有効です。
経営者の言葉として、女性にとって自分のキャリアを自分で考え続けることの重要性を発信し続けることです。
社内会議や社内報、ブログといった定期的なメッセージを発信できる場を意識して持ち続けます。
地道な取り組みですが、弊社の経験則では、半年間続けると効果が見え始めます。
そして残念ながら、変化対応が得意でフットワークの軽い経営者ほど、この時間をかけて取り組むことが、実は苦手な方が多く、途中で挫折されるようです。
だからこそ、継続することができれば成果も大きく、他社との差別化につながります。
次に教育です。
店舗ビジネスのスタッフの中には、接客が好き、この仕事が好き、という想いだけで、日々の仕事に従事しているスタッフもいます。
また独立を考えていても、ともすれば、ビジネスモデル全体に考えを巡らせずに、目の前のお客様との関係性だけで、独立の判断をしてしまうスタッフもいるようです。
なので、まずはキャリアを考える教育、そして経営者の道があるという教育、さらに経営するための教育、といったスタッフの階層や目的にあった教育を短い時間でもいいので、情報提供と組み合わせて機会を作ることが必要です。
これまでご支援した企業の中には、コミュニケーションと教育を兼ねて、経営者塾を隔月で開催している企業や、経営者が社外で学んだことをアレンジして、社内研修として取り入れている企業など、それぞれ自社のスタッフにあった工夫をされ、有効な方法を作り出されていました。
人間の集まりである組織には、1つとして同じ組織はありません。
なので、他社事例を参考にしつつ、自社のスタッフに有効なコミュニケーションや教育の方法を検討いただければと思います。
「のれん分け制度構築」コンサルティングの現場では、そういった運用につながるスタッフの意識の醸成や教育といったご相談にものっています。
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