企業を取り巻く環境変化において、今はコロナ禍だから特別な状況である、とみなすのは危険です。
コロナウィルスというわかりやすい原因がありますが、その背景には、人々のニーズの多様化や通信業界での技術の進歩など、この変化を後押しする要因がもともとたくさんあったと考えるべきでしょう。
このような社会で会社を持続的に成長させるためには、自発的に考え行動できる自発的人材の育成が必要です。
社員が自発的に行動できれば、多様な発想や考え方、経験が集まり、新しい問題や難しい課題に直面しても効果的な対応策を見出す可能性が高まります。
今回は、自発的人材育成のベースとなる信頼感醸成の大切なポイントと留意点をご紹介します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
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(1)コロナウィルスの影響によりニーズの変化がさらに加速
コロナウィルスの影響が長引いています。
当初は数か月~1年くらいで収まることを多くの方が想定していらっしゃったのではないかと思いますが、実際はなかなか収束の兆しが見えず、人々のライフスタイルを大きく変えようとしています。
例えば、働き方としても、2020年に東京オリンピックを迎えるにあたり、開催時の混雑を減らすためリモートワークなどが数年前より試みられましたが、あまり普及しませんでした。
しかし、コロナウィルスの流行により、業種や職種によっては一般的な働き方になってきたようです。
業種のなかでは飲食や宿泊、旅行、輸送などで非常に大きい影響を受けていますが、個別にみると、ライフスタイルの変化にともない需要が増加している業種もあります。
飲食でも、外食は苦戦していますが、差別化されたデリバリーや持ち帰りのサービスにより成長している店舗もあります。
人々のニーズは変化しやすいものであり、特にこの1~2年はコロナウィルスによる外的環境変化の影響がとても大きく、需要がどのように変化するのか、まったくわからなくなりました。
直接影響を受けていない業種でも、知らないうちに需要がなくなるといったケースがあるかもしれません。
(2)これからの会社の成長には新しいサービスの展開と社員の満足度を高めることが必要
このような環境を今だけ特別とみなすのは危険です。
コロナウィルスというわかりやすい原因がありますが、その背景には、人々のニーズの多様化や通信業界での技術の進歩など、この変化を後押しする要因がもともとたくさんあったと考えるべきでしょう。
つまり、社会は大きく変化しており、その変化を想定するのがとても難しくなってきたと言うことです。これまでは、経営者の卓越した先見性や判断力、リーダーシップで業態を拡大してきた中小企業でも、この先これまでのような成長を続けられるかはわかりません。
また、昨今はコロナウィルスの影響により一時ほど人手不足という状況ではありませんが、人口動態的に日本から若者が減っていることは事実です。
コロナウィルスの影響が軽微になってきたときには、また同じ課題に直面します。
これからの社会で会社を持続的に成長させるためには、多様な意見を取り入れ新しいサービスを展開するとともに、社員の満足度を高め帰属意識、定着率を向上させることが非常に大切になります。
(3)多様な意見を受け入れ尊重する組織風土が自発的人材を育成する
このような会社の課題を解決するためには、自発的に考え行動できる自発的人材の育成が必要です。
社員が自発的に行動できるようになれば、経営者が1から10まで指示したり、つねに事業運営に目を光らせておく必要はなくなります。
業務の一定範囲を任せ、社員の力量のなかでオペレーションを行うことで、課題の早期発見や解決、また未然防止などができるようになります。
社員1人では思いつかないことでも、多様な発想や考え方、経験が集まれば、新しい問題や難しい課題に直面しても効果的な対応策を見出す可能性が高まります。
また、社員同士の意見のやりとりや交流が活発になり、より発展的なアイデアが生まれるかもしれません。
お互いを刺激し合うことで、業務がより生産的、創造的になります。
そのためには、社員のスキル向上と合わせて、多様な意見を受け入れ尊重する組織風土が必要です。
このような組織では社員は自由に意見を発しやすく、活きいきと働くことができ仕事のやりがいをとても感じることができるようになります。
社員が会社に自分の居場所を見つけ、充実して仕事ができるようになることは、社員の満足感を高め、組織に対する一体感や帰属意識を向上させます。
(4)自発的人材育成のベースとなる信頼感醸成の大切なポイント
自発的人材を育成するために、はじめに経営者が心がけたいことは、経営者と社員の間の信頼感の醸成です。
社員が自発的に考え行動するためには、気持ちのベースに安心感や信頼感が必要です。
仕事をする上で、強制感や強すぎる義務感、不安や恐怖があるようでは決して自発的な行動は生まれません。
決められた作業だけをさせるのであれば、ノルマで目標を与えれば十分ですが、自発的な行動とは180度異なるものです。
そこで、ベースとなる信頼感醸成の大切なポイントについてお話しします。
信頼感醸成のためには、まず(立場が上の)経営者から自己表現や自己開示することが必要です。
自己表現、自己開示とは、経営者がどのような人間であるかを部下に知らせることです。
例えば、新しい友人やはじめての取引先とコミュニケーションを積極的に図りたいと考えるときは、こちらから自己開示をするはずです。
自分の経験や現在の立場、思考などを話します。
それと同じで、自分のことを積極的に開示すれば、部下は話がしやすくなり、気持ちに安心感を与えます。
話を聞いた部下は、この人には話をしても大丈夫だと思い、好感を持つでしょう。
上司と話をすることのハードルが下がったと言えます。
その部下とのコミュニケーションの際に意識したいことは、しっかり自分の気持ちを表現することです。過去の経験談などを話すときでも、楽しかったことやうれしかったこと、困ったことなど気持ちを素直に表します。
それにより話を聞いている部下は共感を得ることができます。
事実だけを淡々と述べたのでは、部下の心のハードルは下がっていません。
上司の本心、人となりを感じることができていないからです。
会話には、仕事のことばかりではなくプライベートのことも含めましょう。
仕事は生活のなかの1つでしかありません。
家族や友人といるとき、趣味などに取り組んでいるときは、人は違う面を持っています。
仕事以外の多様な様子も話すことが自己開示です。
また、部下との対話の際には、自分の失敗、不得意、自信のないところなどの弱みも開示します。
人間には誰にでも弱みがあります。
それを開示することで相手により安心感を与えることができます。
営業成績の良い営業の方のなかには、新製品や新サービスのセールスポイントを説明する際に、従来の製品やサービスの問題点をあえて伝えて、それらを改善したポイントを示し、新製品や新サービスのセールスポイントを際立ったものに見せる方がいます。
(5)信頼感醸成のために留意したいこと
これまでお話しした点を意識して部下とコミュニケーションを行うことで安心感、信頼感を醸成できるようになります。
ただし、いくつかの留意点があります。
仕事熱心で優秀な経営者の方ほど、プライベートの話を交えることが得意ではなかったり、弱みを見せることが苦手な方がいらっしゃいます。
そのような方は、自分が思っているよりもあと一歩自己開示する気持ちを心がけるようにしましょう。
また、意識して失敗談を話したつもりが、経営者の(一般的に学力が高いと思われる)学歴を開示する話になってしまったり、失敗談が実績を自慢する話に変わらないように注意しましょう。
話を盛り上げようとして、そちらの方向に話がいってしまう場合があるようです。
このような点に留意しながら、部下と積極的にコミュニケーションを行い、信頼感を醸成させます。
信頼感が醸成されてくると、部下との関係だけではなく会社の雰囲気がとてもよくなり、上司も部下もすべての社員が働きやすさを感じ、活きいきと自発的に行動できるようになります。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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