自発的に行動できる社員を育成するために、対話型のコミュニケーションがよく話題に取り上げられるようになりました。
なぜなら、対話型コミュニケーションは、人と人のつながりを生み、人に気づきを与えるとされているからです。
そのため、対話型コミュニケーションを導入した企業が増えたそうですが、うまくいっていないケースがあることもわかってきました。
そこで対話型コミュニケーションを活用するための留意点について、対話者(上司)、対話者(部下)、時間と成果の3つの観点からご説明します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)自発的に行動できる社員が企業を持続的な成長に導く
昨今人材育成に力を入れる企業が増えています。
これは企業規模の大小は関係ないようです。
コロナ禍によりますます不確実性が高まった社会において、企業が活性化し持続的に成長するためには、社員の自発的な行動が必要だからです。
顧客の志向や興味はとても早く変化しています。
1人の経営者が若者から女性、年配者などの様々な顧客層の需要を的確に把握することは不可能です。
また、日々進歩している技術を取り入れ、新しいサービスを提供したり、社内のインフラを整えたりすることは容易ではありません。
経営者は信頼できる社員に一定の範囲で業務を任せ、企業が自立的に活動できるようにすることが必要です。
そのためには、社員が自発的に行動できる環境を整えるとともに、その能力を備えさせます。
自発的に行動できる社員は、企業が何もしなくても育つものではありません。
(2)人材育成に求められている対話型コミュニケーション
自発的に行動できる社員を育成するために、対話型のコミュニケーションがよく話題に取り上げられます。
なぜなら、対話型コミュニケーションは、人と人やグループとグループなどのつながりを生み、それが人に気づきやグループにイノベーションを与えるとされているからです。
そのため、対話型コミュニケーションを導入した企業が増えたそうです。
ところが、うまくいっていないケースがあることもわかってきました。
先日いくつかの企業の方とお話しましたが、以下のような声がありました。
・「部下に話を振ってみたのですが、返事がなくて、しばらく沈黙してしまいました」
・「何度か行ったのですが、単なる雑談のような気がします」
・「対話がうまくいっている部署とそうでない部署があるようです」
何が原因なのでしょうか?
対話型コミュニケーションが人材育成やイノベーションにおいて求められているため、良い点ばかりが強調され、誰でもすぐにできるようなイメージが与えられています。
しかし、決してそんなことはありません。
(3)対話型コミュニケーションを実施する際の3つの留意点とは
そこで、対話型コミュニケーションを実施する際の3つの留意点をお話します。
その3つとは、①対話者(上司)のリード、②対話者(部下)の力量、③成果には時間がかかる、ということです。
①対話者(上司)がリードする
上司と部下が対話型コミュニケーションを行う場合は、上司がうまくリードする必要があります。
上司が思うほど、部下は上司と気軽に話せるものではありません。
気軽に話せるようにするためには、日頃から対話の回数を増やして対話を日常的なものにする(1回の対話時間は短時間で可)、また、仕事ばかりではなくプライベートな話もすることで、部下の心のなかのハードルを下げます。
そして、対話のはじめには、緊張をほぐし雰囲気を和ませてから(アイスブレイクと言われる)、質問を活用して部下に多くを話してもらうようにします。
しかし、質問の内容が「最近どう?」などと漠然とし過ぎていたり、「先月の売上げよくなかったね」など、(その意図はなくても)責められているかのような印象を与えたりする質問はよくありません。
つまり、対話型コミュニケーションは、これを試みる上司の力量に大きく左右されます。
経験やトレーニングが必要です。
②対話者(部下)の力量を考慮する
次に対話がスムーズにいくためには、部下が必要な知識や経験を有している必要があるということです。
例えば、上司が取引先について「この前見積もりを提示した顧客だけど、次はどのようにコンタクトしたらよいだろう?」と部下に質問をして部下の考えを聞き出そうとします。
上司は答えを持っていたとしても、あえてそれを自ら口にはしません。
部下に次の行動を考えさせ、自分で考えたアイデアで主体的に動きやすくさせるためです。
しかしこの対話がスムーズにいくためには、部下に必要な知識や経験があることが前提です。
部下の知識や経験が不足している場合は、対話型は適していません。
部下に知識や経験が不足している場合は、まず部下の知識を補充するための研修や経験を積ませるためのOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング=先輩などと職場で実務を経験させて教育する訓練制度)などのインプット中心のトレーニングを行ってから、答えを引き出す対話型のコミュニケーションを実施します。
③成果には時間がかかることを認識する
3つめは、対話型コミュニケーションでよい結果を出すには、時間がかかることを認識します。
1度や2度コミュニケーションしたからと言って、上司と部下の間柄が急にフレンドリーになったり、部下の気づきが増えたり、部下が積極的に行動するようになったりするものではありません。
上司と部下が何度も繰り返し対話を重ねるうちに次第に信頼感が醸成され、考えや行動が認められてきたことに部下が気づくことで自信が生まれます。
それまで上司は焦らずに、アドバイスをしたり経験を話したりして、部下にインプットすることを努めます。
辛抱強く支援することで、対話がきっかけとなって、部下が考えたことや行動したことが、徐々に成果として現れるのです。
つまり部下は上司への信頼感と自分への自信により、自ら考え自発的に行動できるようになっていくのです。
このように、対話型コミュニケーションは、自発的人材の育成にとても効果的ですが、誰でもすぐにできるものではありません。
今回お話した留意点を意識して取り組むことで、自発的人材育成により活かすことができるでしょう。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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