政治や経済、人々の思想や意識、技術などの大きな変化や発展があり、社会は大きく変わりました。
将来起こることが現在の延長線上にあるのではなく、次に何が起こるのか予想するのが難しい時代になりました。
そのなかで、社会や会社が将来社会人にどのような能力を求めるかわかりづらくなりました。
会社や組織から求められた仕事を期待通りに達成するだけではなく、積極的に将来の自分に役に立つであろう能力を高め、キャリアを意識して構築することが必要になってきました。
一方、キャリア構築には長い時間が必要です。
しかし、取り組みを継続させることは簡単ではありません。
また、長い時間をかけてキャリアを構築するのですから、構築されるキャリアを奥行きのあるものにする必要があります。
そこで、キャリア構築の取り組みを、「実践的か教養的か」の能力軸と「短期的か長期的か」の時間軸の2つの軸にわけて考えることをご紹介します。
なお、店舗ビジネスのキャリアの限界を突破する「のれん分け制度」づくりや成功のポイントを知りたい方はこちらのコラムをご覧ください。
(1)キャリア構築が必要な時代に突入している
働く社会人にとってキャリア構築が本当に大切な時代になりました。
10年や20年前にキャリアという言葉を耳にしても、転職するときに必要になるものかな?くらいに想像する方ほとんどだったでしょう。
筆者も自分の年齢や会社のおかれた状況から、今が自分の社会人としての節目かなと思ったときにキャリアについて考えたことはありましたが、それを具体的に計画に落とし、それに従って行動したことはありませんでした。
90年代のバブル経済崩壊後、多くの日本人は日本経済がデフレの時代を迎えたことは実感していましたが、社会がバブル以前とまったく異なる状況になると誰が想像することができたでしょうか?
政治や経済、人々の思想や意識、技術などの大きな変化や発展があり、社会は大きく変わりました。
将来起こることが現在の延長線上にあるのではなく、次に何が起こるのか予想するのが難しい時代になりました。
そのなかで、社会や会社が将来社会人にどのような能力を求めるかわかりづらくなりました。
会社のあり方、働き方も少しずつ変化し、会社や組織から求められた仕事を期待通りに達成するだけではなく、積極的に将来の自分に役に立つであろう能力を高め、キャリアを意識して構築することが必要になりました。
以前は会社間での人材の動きはあまりありませんでしたが、近年は人材の流動化も進んできました。
加えて、人生100年時代と言われるようになり、継続してキャリアを開発し、複数のキャリアを構築することも求められ始めてきました。
(2)キャリア構築の取り組みを継続させることは簡単ではない
一方、キャリア構築には長い時間が必要です。
すぐに役に立つ実践的な知識や能力は、短期間の研修等で身につけることができますが、それらは時代の変化とともに、すぐに陳腐化し使えなくなってしまいます。
変化がますます激しくなる社会、経済環境のなかで、成果を出し続けていくためには、つねに自分が出した成果を振り返り、次の局面ではどのように行動するか自主的に考え、その場面に遭遇したら仮説を試してその結果を評価し、次のアクションにつなげます。
つまり、さまざまな局面で役に立つ能力を高めるためには、長い時間を要するとともに、そうして身につけた能力は長期にわたり役立ち成果を出すことにつながります。
このように取り組みを継続させることがキャリア構築には欠かせませんが、多くの方が取り組みを継続させることできるか、というとそんなことはありません。
例えば、毎週、毎月といってよいほど、頻繁に運動やダイエットに関する特集や記事を目にします。
つまり、それらはとても関心が高く大切なものであると認識されているにも関わらず、それらを継続することが難しいから度々記事になるのです。
好きなことをしたり、好きなものを食べたりすることは、容易に長続きしますが、やらなければいけないことやしたほうがよいことなど、頭で考えてからするようなことを継続させることは簡単ではありません。
(3)キャリア構築を考えるときに大切な2つの軸
それでは、キャリア構築の取り組みをどのように考えればよいでしょうか?
人は単調なことを続けることは苦手であり、さらに苦痛を感じます。
また、長い時間をかけてキャリアを構築するのですから、構築されるキャリアを奥行きのあるものにする必要があります。
そこで、キャリア構築の取り組みを、「実践的か教養的か」の能力軸と「短期的か長期的か」の時間軸の2つの軸にわけて考えてみます。
1.能力軸:実践的 × 時間軸:短期的
キャリアを構築する際に、誰もが考え取り組みやすいことが、この組み合わせです。
また、身につけた能力の成果もわかりやすい特徴があります。
具体的な業務で言えば、作業手順の理解や接客方法の習得、新しい調理方法やツールの使用などです。
業務の遂行には、基本的な内容の理解、習得が必要ですので、変化に応じて、継続的にブラッシュアップをします。
2.能力軸:実践的 × 時間軸:長期的
実践的な内容でも習得に長い時間を要するものがあります。
例えば、肉や魚などの食材の目利き、ヘアカットや整体などの専門性の高いサービスの提供などです。
これらの取り組みは実践的と言えますが、どれも習得に非常に長い時間が必要です。
一朝一夕で身につくものではありません。
また、短期間で身につくものは、誰でも簡単に習得することができます。
つまり、長い時間をかけるからこそ意味があるスキルがあり、それらを身につけることができれば、その職業人として一人前になることができます。
そして、さらに専門性を高めることで、第三者と差別化が図られ、一目置かれる存在として個人の名前をアピールできるようになります。
毎日技能習得の取り組みを行ってもその成果がわかりづらいものは、実践的×短期的な取り組みと合わせて、取り組みを継続させるとよいでしょう。
3.能力軸:教養的 × 時間軸:短期的
仕事の実務から少し離れ考え方や思考など概念的なものであり、短期的に習得が可能なものです。
例えば、社会人としての時間の使い方や仕事の仕方、問題解決方法、リーダーシップやコーチング、コミュニケーション能力などです。
これらの多くは、自分の組織や取り組み方、働き方とうまくマッチするように解釈して活用するものです。
つまり、実務を円滑に実行するために、どのように考え行動するとよいのか、後方から自身を支援するものです。
4.能力軸:教養的 × 時間軸:長期的
この取り組みにより習得できるものは、人間味や人間力といったものでしょうか。
日々の業務をこなしながら成功や失敗を重ね、さまざまな人と出会うことで人は絶えず成長を続けていきます。
単に仕事ができる(=スキルが高い)というだけでは、人から信頼、尊敬はされません。
多くの信頼を集める人には、大切にしている考え方や思考、生き方があり、それらは決して短期間で楽をして習得したものではないでしょう。
尊敬する人や目標とする人から話を聞いたり、本を読んだり、さまざまな角度から教養を高めることが必要です。
自分が将来どのような人間になりたいか、あるべき姿をつねにイメージして、少しずつ近づいていくような取り組み方です。
哲学や美術に触れてみたり、歴史や旅、コミュニティについて理解を深めてみたり、非常に幅広い取り組みがあるはずです。
このように、能力軸と時間軸の2つの軸を考えてキャリア構築を計画すると、取り組みに新鮮さと幅、深さがでます。
これが継続につながります。
個人ごとに関心のある領域が異なりますので、部下の興味のある分野を意識しながら取り組みに変化を持たせます。
とはいえ、経営者、上司の立場で、部下の「2軸マトリックスのキャリア構築の取り組み」にいきなり踏み込むのは難しいかと思います。
なぜなら、将来どんな人間になりたいか、あるべき姿といったことは、部下それぞれのこれまで生きてきた経験や持っている信条によって、大きく異なる可能性が高いからです。
ですから、まずは、ご自身の今までのキャリアを振り返り、これからまだまだ取り組めるキャリア構築の取り組みがないかどうか、考えてみられてはいかがでしょう。
その際の視点として、今回の2つの軸を意識してキャリアを振り返ることで、さらに長期的な奥行きあるご自身のキャリア構築に取り組めるとともに、部下のキャリア構築の取り組みに対するアドバイスも、この視点からできるようになるのではないでしょうか。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
無料メルマガ登録
専門コラムの他、各種ご案内をお届け中です。ぜひ、ご登録ください。
セミナーのご案内
店舗ビジネスの多店舗展開やのれん分け・FCシステム構築を進めていくため、具体的にどう取り組んでいけばいいのか、どのような点に留意すべきか等を分かりやすく解説する実務セミナーを開催しています。
セミナー一覧ぺージへ