最近の不確実性が高いといわれる社会では、成長したい、成長しなければと考える若い社員が増えています。
しかし、同時に「なかなか成長できない」といった悩みも増えてきました。
20代~30代で3年や5年の勤務経験のある社員に多いようです。
そこで今回は経営者の方に「成長とは何か」をご理解いただくことで、社員が普段の仕事の中で成長を実感でき、さらに成長によって社員の心が満たされ、結果的にモチベーションが高まる方法について考察してみます。
成長を求められる社会環境
「最近、成長している感じがしなくて。と相談を受けたのですが、どうしていいか自分も悩んでまして」
これは先日相談を受けた都内でサービス業を営む経営者の方の言葉です。
この経営者の方は、自発的人材を育成することに早期に取り組み始めました。
徐々に成果も出つつあるのですが、社員の中には「なかなか成長できない」と悩んでいる方がいるようです。
そして、経営者の方もどう対応してよいか思案していました。
特に、最近の不確実性が高いといわれる社会では、成長したい、成長しなければと考える若い社員が増えていますが、同時に、上記のような悩みも増えてきました。
20代~30代で3年~5年以上の勤務経験のある社員に多いようです。
成長とはある時点とある時点のプラスの変化
個々人の実力が評価され、自分なりのキャリアを描いて進むことがより重要になっている社会において、「成長」は1つのキーワードになっています。
おそらく誰もが、成長の方向性や程度の違いはあっても、成長を望んでいるでしょう。
筆者もコンサルタントとして、社会人として、成長したいと思い、日々業務に取り組んでいます。
それでは、そもそも「成長」とは何でしょうか?
何人かの経営者の方々に伺ってみました。
「今よりできることが増えるようになること」
「周りから認められるようになること」
「仕事を任せられるようなること」
このようないくつかの回答を頂きました。
筆者はどれも正解だと思います。
成長とは、業務の理解が深まったり、仕事ができるようになることであり、その結果、仕事で成果がでたり、難しい仕事を任せられるようになったり、そして、評価されることに違いありません。
そこで、これらの回答にさらに注目すると、1つの共通点があることに気がつきます。
それは、ある時点とある時点のプラスの変化である、ということです。
1年前と比べたときの今、または、今と比べたときの1年後などです。
つまり、成長とは異なる2つの時点を比べて、どのくらい、どのようにプラスに変化したか、ということです。
これは経営者の方が日頃取り組まれている経営問題の対処と同じといえます。
よく「問題が発生した!」と言いますが、問題とは、あるべき姿と現状とのギャップのことです。
あるべき姿に対して、現状が望ましくなくなったので、問題が発生します。
「売上げがいかなくて問題だ」という時は、現在の売上げが先月より下がった、または、目標に達していないなど、必ず比較対象があるはずです。
そして、その対処が、キャリアでいう「成長」そのものです。
成長を感じることができない背景とは
その成長を社員が感じられないときというのは、次のような背景があると考えられます。
・目標が設定されていない
目指すべき目標が設定されているか振り返ります。
成長は望んでいても、目標を設定していなければ、実感することは難しいでしょう。
・目標が不適切
目標は設定されていても、不適切な場合があります。
目標が曖昧の場合は、雲をつかむような感じになり、高すぎる場合は、現状との変化を実感しづらくなります。
つまり目標設定は「時間軸を決めて、できるだけ具体的にすること」がポイントなのです。
1年~3年後の目標設定をした場合は、成長がわかりやすいように、さらに細かく1カ月~数カ月で成果を確認できるようなマイルストーンを設けるようにします。
そうすることで、成長を感じやすく、業務に前向きに取り組めるようになります。
目標を具体的に設定するのは、会社の経営目標として、売上げを商品別や顧客別に設定することと同じですし、成果を見える化することで、取り組みを継続するモチベーションになります。
会社経営ではありませんが、しばしばダイエットが続かないのは、理想のような目標や現実的でない短期間での達成など、現実的にできないことを目指したり、日々の変化を実感できないことが要因といわれます。
・成長していない
実際に変化がなく成長が停滞している場合もあります。
本人が前向きに取り組んでいる限り、この場合は、アプローチの仕方が適切でない可能性があります。
例えば、従来の考え方から変化がない場合は、こうしなければいけないなど現状の考え方に固執しすぎているかもしれません。
考え方などアウトプットを変化させるためには、「インプットによる刺激」が必要です。
外部の研修に参加してみる、他の店舗や別の会社の人とコミュニケーションしてみる、先輩社員など経験者に相談するなど、インプットを受ける機会を設けます。
新たな情報を得ることで、気づきにつながりやすくなります。
成長を実感しやすくするための留意点
このように、目標を適切に設定することなどで、変化に気づきやすくなり、社員の業務に対するモチベーションも高まります。
一方、留意点もあります。
成長とはある時点とある時点のプラスの変化であることはお話しましたが、あくまでも取り組んでいるのは、人としての社員です。
成長が本人の充実感や満足感とつながっていないと、社員が心から成長を実感することは難しいでしょう。
そこで、社員とコミュニケーションを行い、心が満たされるような働きかけをします。
その際のポイントは、主に以下の4つです。
給与や役職、資格の取得など目に見える成果
・自発的に考えて行動できた結果
・人間的に精神的に成熟した実感
・上司や同僚など第3者からの評価や感謝
給与や役職の提供など対応が難しい項目もありますが、自発的に行動できるように仕事を任せる領域を広げたり、少しチャレンジングな仕事に取り組ませたり可能な範囲で対応します。
また、次の目標まで近づいていることや感謝の気持ちを伝えることで、満足度を向上させることができます。
このように、経営者が「成長とは何か」を理解することで、日々の業務の中で、「社員が成長を感じやすくする工夫」を行うことができ、さらに留意点に挙げた「成長を意識させるポイントに触れるコミュニケーション」を意識的に行うことで、社員がモチベーションを高め、より自発的に業務に取り組めるようになるのです。
(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)
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