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自発的人材育成に大切な「教える」取り組み

「自発的な社員を育成しようとしているのですが、なかなか部下が自発的に行動してくれなくて。教育はしているつもりなのですが、どのくらい待てばよいのでしょうか?」

先日ある飲食業の経営者の方から、上記のようなご質問をいただきました。

人材育成に取り組む経営者として率直な気持ちと思います。
その回答として、一概に、1か月、3か月のように具体的にするお答えすることは、残念ながらできません。
それは、その職場の状況や部下の働き方次第だからです。

自発的人材とは、自ら問題を発見し、解決策を考え、実際に行動し、解決できる人材ですが、そのような自発的人材を育成するためには、キャリア形成支援やスキルアップ支援を行うことが効果的です。

キャリア形成支援とは、勤務経験に応じて、店舗スタッフや店長、エリアマネージャーなどの道筋があることを示し、社員が役割を果たせるように支援することです。
社員は、数年後の将来像をイメージできるようになると同時に、将来求められる役割と現在の能力や経験のギャップを認識できます。

スキルアップ支援とは、キャリア別・レベル別の能力評価をもとにスキルアップ支援を図り、ギャップを埋める取り組みのことです。

そして、仕事に目的意識を持たせます。
このためには、部下との対話により気づきを与えて、部下が自ら行動できるようにします。

しかし、部下に気づかせるのは、上司が想像するよりも、思いのほか難しく時間がかかるものです。
報酬などの外発的な動機づけではなく、本人のやる気や目的意識に働きかける内発的動機づけの1つだからです。

そこで、部下をステップアップさせるために、見直してみたい教育のプロセスがあります。
それは、「教える」ということです。

人が行動するためには、課題や問題を認識する必要があります。
次に、課題や問題を解決するための行動を考え、行動します。
そして、その結果を分析・評価して、次の機会に活かします。

つまり、問題認識できなかったり、解決方法がわからなかったり、結果の分析・評価することを知らなければ、これらの行動のサイクルを回すことができません。
そのため、知らないことを知らせる「教える」ということが大切なのです。

 

図 行動のサイクル

 

「教える」取り組みが、行動に変化をもたらす

それでは、行動のサイクルの3つのパートについて、各内容を説明します。

問題認識

問題とは、端的に言えば、現状と目標とのギャップのことです。
ですから、問題として認識するためには、現状と目標の比較をします。
その際、目標やあるべき姿、正常な状態を理解していないと、現状をみても問題が何かわかりません。
つまり、比較するものを用意することが必要です。

経験者や慣れている人であれば、比較対象には困らないでしょう。
しかし、未経験者や慣れていない人にとって、外部からインプットがないと知らないことを知ることができません。

比較対象の例として、飲食業で開店準備をさせるとします。
フロアの実務担当者に対しては、セットするものや個数、テーブルやイスの状況などが比較対象です。
一方、リーダークラスであれば、今月の売り上げ目標や、日付や曜日、近隣でのイベントなどを考慮し、予想される客数・客層を受入れる体制を考えさせます。
このように、問題を認識させるための比較対象が適切に設定されているか見直してみましょう。

行動

問題を認識した後は、行動することが求められます。
この場合も、どのような行動をしたらよいか、思いつく必要があります。
過去と同じ問題が起こった場合であれば、すぐに行動できるでしょう。

しかし、慣れていないことや経験がないことであれば、どのような行動をとったらよいか、わからないかもしれません。
また、行動が問題発見と異なることは、問題は1つであっても、それを解決するための行動方法は、複数ある場合がほとんどだということです。

経験則などから、効果的な方法は知っているかもしれませんが、常に効果的な方法とは限りませんし、解決するためのリソース(人や時間、お金など)が異なることも考えられます。

このため、行動するための解決策は、知識や経験として、できるだけ多く知っていることが望ましいとともに、上司や先輩社員から、いくつもの事例を事前に教えることが必要です。

分析・評価

こうして、問題認識から行動まで一連の取り組みができるようになれば、最後に分析・評価をさせます。
業務に忙しいと目先の問題解決が優先になりがちですが、この最後のステップを実施させることが、次回部下に自発的な行動をさせるための素地を作らせることになります。

行動結果の分析・評価により、“問題解決に時間がかかった”と感じたならば、“どうやって早く問題を発見・解決すればよいか”とか、“今回はこれまでの方法でその場はしのげたが、非効率だったので恒久的な対策をしておいた方がよいだろう”など、自発的に考えることのきっかけにつながります。

前向きに取り組みたいが、どのように問題を認識して、行動したらよいか、わからずに困っている部下がいるかもしれません。
このように、「教える」をキーワードに現在の育成方法を見直してみましょう。

 

社会環境の変化を意識した「教える」取り組み

上司の中には、部下を自発的人材にするために、ここまで手を出す必要があるのか、また、自発的人材育成には逆効果では、とお感じの方がいらっしゃるかもしれません。
特に、先輩と一緒に働きながら、先輩の行動を見よう見まねで、修得してきた方には、その思いが強いかもしれません。

一方、現在の市場、労働環境をみると、人材採用の難しさ、非正規社員の増加、業務の効率化・IT化、若い世代の育った環境の変化など、上司が経験した環境とは、社会の状況が大きく変わっています。
そのような激動の社会環境の中で、成長したい、と考えている人材は少なくありません。
そのような部下に対して、「教える」という行動が、自発的な行動を促すものとなるに違いないでしょう。

(コンサルタント・中小企業診断士 木下岳之)

 

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