多店舗展開を開始すると、業態の磨きこみに加えて出店候補地の探索、出店可否判断、資金繰りのシミュレーション、必要な資金調達など、経営者(もしくは事業責任者)が行うべき重要業務が加速度的に増えていくこととなります。これをこなしてこそ、安定的に店舗展開を進めることが可能となります。
一方、経営者が行うべきでない雑務も同様に増加していきます。ここで問題となるが、最低限の業務フローが整備されているかどうか、という点です。最低限の業務フローが未整備であるがために、経営者が本来行うべきでない業務に多くの工数をとられ、結果的に店舗展開の足かせになってしまうケースが、特に2~5店舗程度の企業によく見られるのです。以下はその一例です。
- 雇用契約書や就業規則、36協定など、必要な労務管理を行っておらず、悪意のある従業員から脅しを受け、その対応に多くの工数を割くことになる。最悪の場合、多額の金銭を支払う羽目になる
- 税理士の先生に経理を丸投げしているが、各種伝票の整理や手続きのルールが不明確であるために、税理士の先生から伝票の確認などで問い合わせが頻繁に入り、経営者に大きな負担が生じる
- 釣り銭準備金や小口現金の取り扱いルールが不明瞭である結果、従業員が金銭横領などの不正を働いているにもかかわらずその事実に気が付かず、気づいた時には取り返しのつかない金額にまで膨らんでしまっている
- 従業員を採用する際の手続き(雇用契約書締結、必要書類回収、社会保険への加入手続きなど)を把握しているのが経営者だけであり、採用・退職の都度、経営者が申請をしなければならない
このような業務フローの問題を抱えている場合、少なからず経営者は負担を感じているはずです。このような問題ははじめこそ小さな問題ですが、時間がたつにつれ大きな問題に育っていきます。万が一、本来やるべきでない業務負担が重たいと感じるようであれば、本格的な店舗展開の前に一度立ち止まり、最低限の業務フローを整備することが不可欠です。